第98話 贅沢な悩み

愉快犯から送られたプレゼントの中身に、思わず叫んでしまう俺。幸いな事に誰も気が付いてないらしく、部屋に突撃される事は無かった。

ただ、問題なのは


「これ、絶対にヤバく無いか?」


そう、子宝精力剤だ。

プラチナリングもエンペラーサイズベッドも何となく問題は無さそうなのだが、この精力剤だけは危険な気がする。

だって、子宝精力剤だぞ?子宝だぞ?確実に子供が出来るって事だろ?それて、かなりヤバく無いか?


「い、一応、鑑定して見るか・・・。」


俺は恐る恐るストレージから子宝精力剤を鑑定してみる。


・子宝精力剤

半分は自分で。残りの半分を相手に飲ませる事で、確実に子供を授かる精力剤。

成分は、オークキングの睾丸の粉末100%。

人畜無害な上に、確実に子供が欲しい方には至極の一品。

夜、燃え上がる事間違いなし!


「いるかそんな説明!」


最後の一行は不必要な気がする。


「つか、やっぱり危険なモノだっだか。ただ、イシュカやエヴァには、確実に使わないといけないんだよな。」


俺は悩む。

何を悩んでいるかと言えば、これを使う事では無い。オークの睾丸と言う言葉への抵抗感に悩んでいるのだ。


「オークキングの睾丸の粉末って・・・。マジ、飲まないとダメなのか?つか、この世界の人達は、オークの睾丸を粉末にして飲んでんのか?」


かなり後に知った事なのだが、この世界の人。特に、確実に世継ぎを産まなければならない貴族などの金持ちには、オークの睾丸を粉末にした物が大人気なのだそうだ。

ゴブリンやオークと言えば、定番として手あたり次第に女性を犯し、その女性を苗床にして子供を産ませる事で有名である。

ただ、この世界のゴブリンやオークにはそれは無い。

その代り男だろうと女だろうと、襲われた上で死ぬと食われてしまうだけだが。

とは言え、立派なモノをお持ちのオークの睾丸は、ちゃんと処理をして使用する事でその効果が出るらしい。その為、オークの睾丸でさえギルドに売ればいい金になる。


「確かに、ダンジョンでのドロップに睾丸があったが、こう言う理由だったんだ。」


基本、町の外で倒した魔物は、魔石の回収しかしていない。

しかし、ダンジョンで倒した魔物からは、ドロップ品が手に入る。

その中に、確かに「睾丸」があった。触りたくも無かったので回収すらしなかったのだが、売れば睾丸二つ――右左セット――で銀貨10枚はするらしい。

オークでそれなのだから、キングとなれば金貨が飛ぶ。そしてそれを薬にすると、白金貨が飛ぶのだそうだ。

そんな精力剤が10本。

もう、御殿が建つ金額な訳だ。


「春香達、クラスメイトには使えないな。流石に戻りました、子供が出来てましたじゃマズいもんな。それに、子供を一緒に連れて帰れるか分からないし。」


朧げな記憶の中に、「あと数年で解放される」と言う言葉が残っている。

となると、確実に元の世界に戻れるとは思うのだが、その時に子供も連れて帰れるとは聞いていない。


「ただ、残ると言う選択肢もあると言ってたな。」


愉快犯は、残る事も出来ると言っていた。

ただその場合、俺と一蓮托生の春香達はどうなるのかまでは聞いていない。


「とりあえずそれは置いておいて、あの9人をどうするかだ。」


男としては9人に言い寄られている事は、気持ち的には嬉しい。

イシュカは物怖じが優しく、清楚で可憐な美少女だ。ただ、年が15歳だからな。

エヴァは猫獣人らしく、野性味溢れる感じでサバサバとした美少女だ。

春香はどちらかと言えば家庭的な感じの美少女で、涼子は姉さんタイプの美少女。

美奈子もどちらかと言えば綺麗な方だし、加奈子や裕美だって可愛いとは思う。

ロラさんは、何で俺なんだろ?同じ獣人のダリルさんとは引っ付かないのかな?、俺から見ても顔は綺麗だし、あのバインバインな胸に挟まれ・・・ゲフンゲフン。ん゛ん゛ん。大きな胸は、魅力的だとは思うが。

シーラちゃんがお嫁さんになりたいって気持ちは、何となく分からなくも無い。

だが、シーラちゃんってまだ14歳だろ。流石に14歳に手を出す勇気は俺には無い。ただ、成人するまで待つとなると、後一年か?

シーラちゃんと結婚した場合、即子供を作りますなんて俺には無理だ。となると、シーラちゃんがそれなりに大きくなって、産まれて来る子供が大きくなるまで、戻るのを待ってないとダメなのか?その場合、裕美は康太と共に戻っちゃうのか?春香達は、それでもいいのか?


「うわぁぁぁぁ!もう、どうすればいんだよ!」


俺は、考える事を辞めた。

つか、いくら考えても答えが出る訳が無い。

ベッドに身体を預け、天井を見上げる。

暫くボーっとしていたが、徐に身体を起こす。


「とりあえず、後二、三年あるんだ。子作り云々は置いておいて、9人と良い関係を保つ様にしよう。先ずは文通・・・いや、お付き合いからだな。」


古臭い人でごめんなさい。

こう言う形しか取れない俺は、そう決心を固める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る