第70話 キャサリンの悪巧み

その後ギルドに連行された俺は、洗いざらいキャサリンさんに報告をする。

そして、倉庫にて証拠となる飛び秋刀魚、フィッシュマン、ウニ、カニ、エビ、ココイヤの実、シーサーペントの諸々を出す。


「あんら~、話しは本当だったみたいね~。」


だから、さっきからそう言ってんじゃねえかよ!


「ところで、魔法陣から出て来たのよね?」


「ええ、まあそうですね。」


「あの場に魔法陣は無かったから、君達が使った事で現れたって事よね?」


「いや、それは俺では分かりませんけど。」


キャサリンさんは暫くその太い腕を組み、何やら考えている。


「ねえ、タクヤきゅん?」


キモイ・・・。


「は、はい。」


「魔法陣から出たって事は、魔法陣にまた入れるって事よねん?」


「多分、そうなんじゃないですか?」


すご~く嫌な予感しかしないんですけど・・・。


「ふむ。やっぱり、この目で直に見て見ないと何とも言えないわよね?」


やっぱりそう来たか・・・。


「でも、俺達は行けたとしても、他の人は攻略してないから魔法陣が使えないのでは?」


頼む、諦めてくれ!


「あら、そんな事は無いわよ?その階層に到達している人と一緒に魔法陣に入れば行けるのよん。」


ダメだった・・・。


「は、はあ。」


その後、トントン拍子に話が進み、7日後にキャサリンさんを連れ海ダンジョンの魔法陣から楽園に向かう事となった。


次の日、キャサリンさんが店に来て、何やら女子達とキャイのキャイのとやっていたが何やってたんだ?



そして海ダンジョンに行く前の日

涼子が俺の元へとやって来た。


「ねえ、拓哉。食糧の買い出しに行くからお金頂戴?」


ん?買い出し?


「つい数日前に行かなかったか?」


「あれはあれ、これはこれよ。金貨2枚でいいわ。」


俺は涼子に金貨2枚渡したが、多く無いか?


「ありがと~!」


涼子はそう言って、俺の部屋を出て行く。


そして翌日。


「さて、嫌だけど行くか。」


俺はソファーから重い腰を上げ、海ダンジョンへと行く為一階へと下りる。

そしてそこで見たのは、バカンスにでも行くような恰好で立つ全屋敷の住人だった。

セバスチャンさんなんか、短パンにアロハの様なシャツだぞ?

鎧を着てるのが俺だけってのもメッチャ浮いてんだけど。


「つか、全員揃って、何つう格好してんだ?」


「え?だって、海でしょ?タヒチでしょ?フィジーでしょ?」


あぁ・・・なるほど。百合(花房)の言葉で何となく分かった気がする。


「言っておくが、タヒチでもフィジーでも無いからな?ダンジョンの中継地点だぞ?。」


「でも、魔物も出ないし、コテージもあるんでしょ?」


「まあ、あるけどよ。」


智世(原田)の言葉に、素直に答える俺。


「拓哉よう、たまには息抜きも必要だぞ?」

「そうだよ!毎日ダンジョン、ダンジョンだと、僕達も精神的にまいっちゃうし。」

「だな。紗代の水着姿・・・グフフフ」


リア充死ね!


「はあ。で、店は今日は休みなのか?」


「そうだよ。今日から数日、臨時休業にしたよ。」

「そうです。貴重品などは全てストレージに入れてますし、アイテム類は三階の倉庫に入れて鍵を掛けてますから問題はありません。」


葉子(水谷)と公子(河野)までもが乗り気とは。


「ああ、分かりましたよ。連れて行けばいんだろ。ただし、向こうの一日は、こっちの三日だからな?そんな長居は出来ねえぞ?」


「「「「「大丈夫!」」」」」


うわ~、全員でハモりやがった。

そんな女子達を見て、アルバロさん達も笑ってる。


「んで、リックさ「あ゛あ゛ん!?」・・・キャ、キャサリンさん、い、居たんですね・・・。」


何故か俺の真後ろに居たキャサリンさん。

怖すぎる。


「さて、みんな揃ったし行くわよん。」


キャサリンさんはそう言うと、屋敷の扉を開けて外へと出て行く。


「んじゃ、俺らも行くぞ。」


俺達もそれに続き外に出る。

屋敷の鍵をセバスチャンさんが掛け、全員が門を出たら海ダンジョンに向かって歩き出す。


もう、異様な一行だな。

言っとくが、今の季節は冬の終わりだ。後数日で、春になる。

と言う事は、まだ外は多少なりとも肌寒い。そんな中を、半袖・半パンで歩く集団ってどうよ?その中の一人(俺だけど)が鎧姿だぞ?イーリスでさえ、鎧を脱いで半袖・半パンだ。

もう、頭のおかしい集団だろこれ。

周りの住人から「あら、あの方達は洋服屋の・・・」「あら、ギルドマスターもいらっしゃるわ?」「どうしたのかしら、忙しくて精神的に参ってしまったのかしらねえ?」などと、ヒソヒソ話が聞こえて来る。

聞こえてくる時点で、ヒソヒソ話では無いと思うが。

そんな街中の注目を集めながらも、俺達は海ダンジョンへと到着する。

そして、ここでも俺は頭を抱える。


「なんで、ギルド職員がいんだよ!仕事しろよ、仕事を!」


そう、ギルド職員が数名ダンジョン前で待っていたのだ。


「あらん?彼ら、彼女らは今日休みの子達よん?と言うより、交代でバカンスに行く事になったの。だから、彼ら、彼女らは問題ないわん。」


そっちに無くても、こっちにあんだよ!

どうすんだよこの人数・・・。

食糧だって・・・あ、そう言う事か。


俺は涼子にジト目を向ける。

顔を逸らす涼子。


チッ。


「何往復かするようなんで、待ってってくださいよ。」


それから俺は八人ずつピストン輸送をしていった。

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