第69話 え?そんな事になってたの!?

リゾート気分を味わった翌日。

俺達は一度外に出る事にした。

既に一週間以上もこのダンジョンに潜っている。

流石に、屋敷の奴らも心配していると思うので、一旦帰る事にしたのだ。


「んじゃ、行くぞ?」


その言葉で、是認が頷く。

そして、俺達5人は転移魔法陣へと足を踏み入れる。

エレベーターが、指定した階層に到着した時のような感覚の後、俺達は無事にダンジョン入口横の魔法陣へと帰還した。

そして、その状況を見たギルド職員が驚きのあまり椅子から飛び跳ねて尻餅を突く。


「えぇぇぇぇえ!、い、生きてらっしゃったんですね!」


ん?生きてらっしゃった?

あ、このダンジョン一階層以外誰も行って無かったからか。

一週間以上出て来なかったら、そりゃ死んだと思うわな。


「ええ、7日?8日?振りに戻りましたよ。」


俺は漸く戻って来れた事に、安堵の溜息を吐きながらそう職員に伝える。

しかし、職員は「は?こいつ何言ってんの?」って顔して俺を見ている。


「え?は?7日、8日振り?何を言ってらっしゃるのですか?」


ん?9日か10日くらいなのか?


「えっと・・・そんなに長くダンジョンに入ってました?」


「何を言ってるんですか!貴方方がダンジョンに入られて、24日も経ってるんですよ!?しかも、既に死亡届も出されており受理待ちですし、冒険者資格は一旦凍結されています!」


「はぁぁぁぁあ!?ちょ、ちょっと待ってくれ!俺達の感覚じゃ、ダンジョンに入って8日くらいしか経ってないぞ!?」


お互い頭が混乱している状態で、あーでもない、こーでもないと話をするが、話しが一向に進まない。


「ちょ、ちょっとここに居て下さい!ギルドに報告して来ます!」


「春香、イーリス。急いで屋敷に戻り、みんなに無事を知らせて来てくれ。」


まさか、ダンジョンに入って24日も経っているとは思わなかった。

そして、既に俺達は死亡しているものとされているらしい。


「このダンジョン内は時間が3倍速いのかもしれないな。」


「その様なダンジョンも、たまにあるのじゃ。」


「そうなのか?」


俺はシャファにそう聞き返す。


「うむ。我が街の者達の噂でその様な事を聞いた事があるのう。今思い出したのじゃ。」


あ・・・そう言えばこいつ魔王だったわ。


「そう言えば、シャファは魔王だったな。つか今更だけど、国に戻らなくていいのか?」


「ん?別に構わぬのじゃ。タクヤと共に居った方が良いしの。」


「何がいいんだ?」


「酒とツマミかの?」


そっちかい!

と、そんな事を話していると、こちらに向かって来る人影が見えて来る。


「おーい!拓哉~!」

「拓哉く~ん!」


クラスのみんなが迎えに来てくれたみたいだ。


「おーい!今帰ったぞ~!」


俺は、感動の再開にその場を走り出す。

そして、俺と龍平達クラスメイトが近付いた時だ。

突然、俺の左頬に痛みを感じる。


「ブゲラッ!」


俺は錐揉みしながら後ろへと吹き飛ばされる。


「おめえ、何日屋敷を空けりゃ気が済むんだよ!」


「そうよ!どんだけ心配したと思ってんの!」


クラスメイト全員に、あーだ、こーだと文句を言われる。


「つか、おめえら!こっちがどれだけ大変な思いをして戻って来たと思ってんだ!それを、「お帰り」の一言の代わりにストレート一発ブチかますたぁ、ヒデくないか!!」


「うっせえ!心配したのに変わりはねえだろうが!」


ダンジョン前で俺達がヤイノヤイノとやっていると、今度はギルドマスターが数人の職員を連れてやって来た。

あ、多分初登場なんで説明しておくと、オルトラーク支部ギルドマスターなんだが、筋肉ガチムチで、身長は2m。顔は四角く顎が二つに割れている。

そして、金髪縦ロールで、目元には紫のアイシャドー。ピンクのチーク塗りたくりで、口紅は真っ赤っか。何故かお姫様ドレスを着た38歳独身の元ランクA冒険者のキャサリンさん(本名:リック)だ。そう、キャサリンさんは、オネエだ。

何故、今まで紹介しなかったのか。

それは、ある時ギルドに立ち寄った時の事だ。

ダンジョン素材を売る為に、買い取りカウンターに向かったんだが・・・そこにこの化け物が居やがった。そして、俺がUターンをして帰ろうと思った所を羽交い絞め。ま、その後解放はされたが、それ以降二度と会いたくなくて敬遠していたからだ。

しかし、こいつが来たか・・・。


「あらん~!本当にタクヤきゅんが戻って来てるのね~ん。」


キモイ・・・。


「あ・・・リック「あ゛あ゛ん!?」・・・キャ、キャサリンさん、只今戻りました。」


そう、この人は自分の事を「キャサリンさん」と呼ばせているのだ。

ギルマスとか、本名の「リック」とでも呼ぼうもんなら、急に男に戻り凄みのある声で今の様に言って来る。

そして、キャサリンさんはうちの女子の店のお得意様だ。

女子とはメチャクチャ仲が良く、着ている服も女子の店の特注品だ。


「あんら~、お帰りなさぁ~い!戻って来たって事はぁ、海ダンジョンを攻略してきたって事ヨねん?」


キャサリンさんはそう言いながら、バチコーン!とウインクをしてくる。

キモイ。


「は・・・はぁ、まあ。」


「あらま~!そうななのねん!んじゃ、早速行きましょうかねん?」


ん?行く?


「何処にですか?」


「ギルドに決まってるじゃな~ぃ。報告を聞かないとね~。それに、君達死亡届が出てるし、冒険者資格も凍結されてるから、解除しないといけないのよ~?」


あ・・・この人の顔が衝撃過ぎて、忘れてた。


「あ、明日じゃダメですか?」


「あ゛あ゛ん?今何つった!?」


「い、いえ・・・行きます。」


「あら、いい子ね~。サービスしちゃうわよん(ハート)。」


オエェェェェ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る