第68話 海ダンジョン⑦

渦に飲まれた俺達は、そのままその流れに乗り滑り落ちていた。

その言い方だと分かり辛いかもしれないが、渦の中心に飲まれた後、渦のトンネルを通り流されている訳だ。


そして、そのトンネルもようやく終わりを見せる。

流れに乗ったままトンネルの出口を出ると、そこは空中だった。


「ひゃぁぁぁぁぁ!」


俺は情けない声を出してしまう。

だって、下が全く見えないんですもん!

それに、落ちて行くのが分かる無重力感。

二度目のフリーフォールだ。


そして、落下する事どれくらいかは分からないが、俺の体感では数分?実際は多分数秒程だ。


ザッパーン!


と言う水飛沫と共に、船は無事着水する。


「もう、このダンジョン、ヤダ・・・。」


クジラの口に入ったり、フリーフォールさせられたりと、踏んだり蹴ったりのダンジョンだ。

ただ、ドロップ品が美味しいんだよな・・・。


と、そんな事を考えつつ、俺は恐る恐る外を見る。


「うわ~!」


そこは楽園だった。

それこそ、青い海、白い砂浜、ヤシの木が生え、奥には建物らしきものが建っている。

その建物を見て、俺は嫌な奴の事を思い出したが。


「とりあえず、近くに行ってみよう。」


今キャビンに行くと、また張り手を喰らわされる。どうせ春香はパンツ丸見え状態なんだろうからな。

ならば、放って置いて先に浜に近付けた方がいいだろうと俺は判断し、船を浜に向けて進ませる。


浜までは一分少々で到着する。

と言うより、そこから先は浅すぎて進めなかっただけだが。

そろそろ春香も大丈夫だろうと、俺はキャビンへと入る。


「エッチ!」


そして叩かれる左頬。


何故こうなったか。

実はキャビンに入った時、春香は頭と尻が反対を向いたままで、下着類が全見えだったのだ。

それを助けた後に、何故か叩かれたと言う訳だ。


「つか、俺が何したってんだよ!」


「ノックくらいしてから入ってよ!」


「いや、これでも気い使って時間空けて来たんだぞ?そもそも、その間に体勢を戻して無い春香が悪いだろ!」


「だって、ベッドに挟まって動けなかったんだもん!」


そう、春香はベッドと壁の間に頭から落ちていたのだ。

しかも、見事な嵌り方だった。


「それにしても、助けてやったのに叩かれる筋合いはねえぞ!」


「それは拓哉君がまじまじと見てて、さっさと助けてくれなかったからでしょ!もう私、お嫁に行けない。」


春香はそう言うと、その場に崩れ落ち泣き始める。

パンツ見たくらいで、んな大袈裟な・・・。


「んな事言ってもな・・・。」


「もう、私お嫁に行けないんだから、拓哉君責任取ってよね!」


いや、何故そうなる。


「んな事はないだろ。春香って、学校一の美少女で、彼女にしたい女子No1なんだから、そんな事で結婚出来ないとか絶対に無いし。」


俺がそう言うと、春香は「えへへ?そ、そうかな・・・。」と照れる始める。

こいつウソ泣きだったのか!


「拓哉君も、そう思ってるの?」


「あ~、まあ可愛いとは思うがな。」


その瞬間、春香がガッツポーズをする。意味分からん。


「とりあえず、次の場所着いたぞ。さっさと身支度して上がってこいよ。」


俺はそう言うと春香に叩かれた頬を擦りながらブリッジへと上がって行く。


ブリッジには、既にリズ達三人が居た。

春香がブリッジに上がって来たので、俺はゾディアックボートを出し全員乗り込み上陸をする。


気配察知と索敵には、動物や魔物の反応は全くない。

とは言え、このダンジョンの性質上何が起こるか分からない為、船はストレージに仕舞っているし、武器も抜き警戒もしている。

そして、ヤシの木の間を歩く事数分。

目の前に、建物が見えて来る。


「いや~、マジ楽園だな。」


「だね~!タヒチとかフィジーって感じ?」


「春香行った事あるのか?」


「ん?無いよ?写真でなら見た事あるけど。」


なんじゃそりゃ。

しかし、春香の言いたい事もわかる気がする。


その建物は、真っ白な壁に藁葺でどこぞのリゾートホテルの様な感じの建物だ。

そして建物の表側に回ると、海の上に浮かぶコテージ群が。

正に、南の島のリゾートだ。

俺達は目の前の建物を調べるが、誰かが居る訳でも無く、どちらかと言うと勝手に使え的な感じに思えた。

その後周りを調べてみると、転移魔法陣を発見。

その魔法陣の横には、下の階に行く為の物なのか船が浮かべれるくらいの池?湖?があり、その先が真っ黒な空間へと繋がっている。


「またウォータースラーダーからのフリーフォールか。」


その先がどうなっているのか分からないので、俺はそう思ってしまった。


その後リゾートホテルへと戻り、今晩はここで休む事を決定。

少し海外旅行に行った気分になった。

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