第19話 昔馴染み

翌日

朝から全員で井戸端会議をした。

議題は「このままここで魔物を狩るか?」会議だ。

昨日のトラ。名前はサーベルタイガー。

大恐竜展とかで、骨は見た事あったが実物を見たのは初めてだ。

ま、当たり前だが。

そして、朝一でリズが解体してくれた魔石の値段がビックリする程高かった。

一つ250Gだぞ?

あれ一匹が250Gだぞ?

換金率二倍で500Gだぞ?

俺的には美味しい魔物なんだが、龍平と清水的には少し厳しいと思い二人に選択権を渡した。

しかし


「いや、俺はここでいいぞ。早くスキルも得たいし、河野と水谷にもスキル渡してやりたいしな。」


「ぼ、僕も、頑張ってみる。早く家に帰りたいし。」


「無理しなくてもいいとは思うが?」


最終確認をするが、二人共ここでいいと言う。


「わかった。んじゃ、とにかく命を大切にだ。無理だと思ったら、即逃げる。な。」


「りょーかい!」

「うん。」


と言う事で、このまま奥に進む事に決まった。

ちなみに、リズは三匹共捌いてくれたみたいで、魔石と毛皮、牙を三人に渡してくれた。

リズ、ナイス!


テントを仕舞い、森の奥へと進んで行く。

そして歩き始めて丁度、俺の腕時計で12時27分。

綺麗な湖に出た。

森の中だからなのか、森の中なのになのかよく分からないが、めちゃくちゃ大きくて綺麗な湖だ。

そして、湖畔も広く屋敷を出しても全く問題が無い。


「ここを拠点にしようか。」


「賛成〜!」

「うん、いいねここ!」

「私もここがいいわ。」

「僕もさんせー!」

「魚漁れそうだな。」

「綺麗な所だね。」


ま、全員賛成のようだ。

俺は良さげな場所にホ○ポイカプセル(既に隠す気すら無くなってきてる)を出し、屋敷を建てる。


「結界の範囲は半径10mだ。女子は特に気を付けて行動しろよ!」


一応、念を押しておく。

今日は既に中途半端な時間なので、魔石狩りは止めておく。

ただ、肉がそろそろ尽きそうなので、俺とリズは森に肉を狩に出掛ける。

そして・・・


「嫌、離して!」


「助けて!誰か助けて!」


「あんた達、何なのよ!やめて、離してよ!」


はぁ・・・マジか。

もう、これはクラスメイトしか無いだろ。

つか、聞き覚えがアリアリな声だし。

そして、確実に魔物では無いに捕まっている感じだ。

また増えるのか・・・。


俺は溜息を吐きながらも、声のする方へと向かう。

そして案の定、見た事ある顔三人を発見する。その三人は、髭もじゃな男達に縛られ、引き摺られる様に連れられていた。


「リズ、あの三人を助けるぞ。一人残して後全滅でいいから。」


「畏まりました。」


リズはそう言うと、右手にアサルトライフルを握る。

俺はコルト・パイソンを握ると、一斉に飛び出す。


タタタタタタタタ


と軽快な発砲音に


パーンッ、パーンッ


と言う発砲音。

瞬く間に髭もじゃ達は倒れる。

囚われた三人も、何が起きたのかわからず、「キャーキャー」と騒ぎながらその場に座り込む。

ほぼリズのアサルトライフルでの殲滅が終わった後、俺とリズは三人の元へと急ぐ。


「おい、東條だ。わかるか?」


俺はそう言うと、三人の内の一人。成川美奈子に声を掛ける。


「は?えっ!?拓哉!」


「ああ、俺だ。怪我はないか?」


「え、ええ。」


こいつは、成川美奈子。龍平と同じく俺の昔馴染みの剣道女だ。


「新谷と三宅は大丈夫か?」


後の二人は、新谷加奈子と三宅裕子だ。

この三人はいつも一緒で仲がいい。


「う、うん。東條君ありがとう。」


「大丈夫。ありがとう。」


「リズ、生き残りは?」


「一人足を撃ち動けなくしてます。」


「わかった。ありがと。」


俺はリズに礼を言うと、その生き残りの所へと向かう。


「お前ら、何者だ?何故、あの三人を連れてた!」


俺はそいつの胸ぐらを掴み上げ、額にコルトの銃口を押し付けそう聞いた。


「お、俺達は、バックスの頭が率いる、と、盗賊団だ。俺達に手を出したら、頭が黙っちゃいねぇぞ!」


盗賊か。


「お前らは盗賊なんだな?と言う事は、悪人か。他に囚えた奴は居るのか?」


「んな事言うわ「パーンッ」け・・・居ます。同じ服を着たのが二人。」


コルトからの発砲音に、素直に話し始める盗賊。


「アジトは何処だ。」


「ア、アジトは、この先にある少し崖になった場所のほ、洞穴です。」


「洞穴には、何人居る。」


「か、頭含め、10人ほど。」


「ありがとよ。」


俺はそいつの胸ぐらから手を離し、リズに目配せをする。

リズは、アサルトライフルをその男に向けると、「ターンッ」と一発頭に撃ち込んだ。


「とりあえず、この場に居るのも危険だ。成川達は付いて来てくれ。まだ他にクラスメイトが捕まってるかもしれないからな。」


俺は、男達から短剣と剣を取り上げると、成川達三人の縄を切り共に盗賊のアジトへと向かった。



男が言った方向へと進むと、確かに少し盛り上がった丘の様な場所が抉れて崖になっている場所が現れる。

そしてその崖の袂に大人一人が通れる程の穴が開いており、その穴の入り口に、二人見張りだろう男が立っていた。


「成川達は、ここに居ろ。リズ、右のヤツ頼む。俺は背後から行く。」


「畏まりました。では、拓哉様が左を倒した瞬間に右を制圧します。」


「よろしくな。」


俺はそう言うと、スケープマントのフードを被る。

俺の姿が突然消え、狼狽える成川達。

ただ、ここで声を上げてはいけないと、口を両手で押さえ必死に耐えている。


俺は音を立てない様に慎重に見張りの男に近付く。そして、背後に回るとストレージから先程盗賊から回収した短剣を取り出し一気に首を掻き切る。

その瞬間、右側に居た男も倒れる。

リズ、ナイスだ!


リズが狙撃した男は、ドサッと音を立てて崩れ落ちる。

そして俺はコルト・パイソンを。リズはアサルトライフルを構えて洞穴へと突撃した。

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