第18話 ちょい強すぎでしょ
翌日
俺達はテントを仕舞うと、更に森の奥へと入って行く。
ジャイアントパイソンクラスが出るんだ。もう少し奥に行けばガッポガッポ儲かる筈!
と、思ったが、それは少し間違いだったかもしれない。
牙が異様に長いトラが3頭、突然襲い掛かって来た。俺と龍平の前に一頭ずつ。後ろに一頭だ。
「俺が一頭やる!リズ、一頭任せた!龍平、一頭任せたぞ!」
俺はコルト・パイソンを抜きトラに照準を合わせるが、早い!
トラは右へ左へと飛び跳ねながら、俺に向かって飛び掛かる。
俺は狙いが定まらず、トリガーが引けない。ダメだ!と思い、コルト・パイソンをストレージに仕舞うと同時に鉄の槍を出す。
右手に加わる槍の重み。
トラは突然俺が槍を手にした事に驚くが、既に遅い!俺はトラに向けて槍を突き出した。
グジュッ
俺が突き出した槍は、大きく開けたトラの口へと吸い込まれる。そして、槍の先が喉を貫通し嫌な音と共に俺の腕までをも飲み込んで行く。
俺の腕はトラの口の中だ。そして、息絶えたトラの勢いは止まらない。トラの顔に押し潰される様に俺はトラの下敷きとなった。
リズはと言うと、太腿からバイブレーションナイフを取り出すとトラに向かって走り込む。
トラはトラでリズを危険だと判断したのか、リズを避けイーリスへと襲い掛かろうとする。
しかし、イーリスは主である伊川や女子を守る為、左手の盾を前へと突き出しトラを弾き返す。
清水は清水で突然の事にオロオロと慌てふためくが、トラがイーリスに飛び掛かったのを見て目を瞑りながらも闇雲に槍を突き出した。
手に伝わる肉を貫く感触。
突然槍に伸し掛かる重量。
そして、槍を伝って流れてくる生温かい液体。
恐る恐る目を開けた清水の前に、首に自分が突き出した槍が突き刺さり、地面に倒れながらも必死に藻搔いているトラの姿が。
その瞬間、清水は槍から手を離し嗚咽を漏らした。
龍平はと言うと、俺の方へと飛び掛かったトラに続き、龍平の前のトラも龍平目掛けて飛び掛かって来る。
鋭い牙を剥き出しに、トラは龍平に噛み付いた。
しかし、龍平は左腕を噛ませる。
獣王爪の小手を必死で食い千切ろうとするトラ。しかし、獣王爪の小手はビクともしない。
龍平は、右手でトラの鼻先を掴み必死で引き剥がそうとする。しかし、トラも意地で獣王爪の小手へと喰らい付く。
埒があかないと思った龍平は、決死の覚悟でトラの鼻頭へと噛み付いた。
ギャン!
犬の様な叫び声を上げたトラが、龍平の小手から離れた。
そしてその隙を逃す龍平ではない。
素早く立ち上がると、龍平から退くトラへ向かい一歩踏み込む。そして右腕を振り被り渾身の一撃をトラへと放つ。
龍平の拳がトラへと接触する瞬間、獣王爪の小手の拳部分からそれこそ目の前のトラ並みの四本の爪が現れトラの顔面に突き刺さった。
トラは、両目と眉間を打ち抜かれ、血飛沫を上げながら後ろへと吹き飛ぶ。
そして地面へと落ちるとピクピクと痙攣をしていたが、暫くすると動かなくなった。
何とかトラを倒す事の出来た俺達は、トラの死体を一旦ストレージに仕舞いその場にテントを出して休む事に。
理由は、龍平と清水が震えて動けないからだ。
後、俺もトラに伸し掛かられた際に、後頭部を強打し気を失っていたらしい。
あの後、リズに助けられた俺は目の焦点が合って無かったそうだ。ただ、その時点で意識はあった為辛うじてテントは出したらしい。
俺はあんまり覚えてないが。
龍平と清水は、河野がテントを出して何とか結界内に入り無事に凌げたそうだ。
その後、俺の頭の打撲の事がある為、今日はここで野営にしようと言う事に。
テントを円形に建て直し、俺はテントの中で横になった。
夕食時
みんなが心配してくれていた。
流石に、戦闘経験者の俺が倒れた事に、恐怖を覚えたらしい。
夕食を食べた後、俺は龍平と清水に話し掛ける。
「すまんな、心配掛けた。もう大丈夫だから。」
俺はそう言うしかなかった。
これからもっとこんな戦闘があると思う。
一々これくらいの事で怯えていたら、死ぬまでこの世界で生活しないといけなくなるからな。
「龍平も清水も無事で良かった。怪我は大丈夫か?」
「お、おう。ただ、初めて生き物を殺したっう感触がな。」
「ぼ、僕も・・・。」
「俺も最初にゴブリン殺した時、同じだったからな。手が震えて、体が震えてその後暫く動けなかったし。」
「拓哉も最初はそうだったんか。」
「東條君も、僕と一緒だったんだ。」
「そりゃそうだろ。魚くらいは捌いた事はあるが、相手は二足歩行の、俺達と同じ生き物だぜ?初めは震えたさ。だが、これからもっとこんな戦闘が増えるから慣れないとな。慣れないと、魔石も手に入らないし飯も食えない。ま、俺はもう慣れたけどな。今まで、リズと一緒に何十匹と魔物を倒して来たから。」
俺と龍平と清水が話しているのを、女子は黙って聞いている。
「ま、今日はゆっくり休もう。何かここの魔物はあっちの魔物とは違うから、このままここで狩をするか別の場所にするかは朝話し合おう。」
俺はそう言うとテントへと入り体を休めた。
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