第16話 伊川の騎士

スマホを取り出した俺は、ガチャ画面を開く。

そして、10連ガチャを引こうとボタンを押し掛けて止める。


「・・・伊川、引いてくんね?」


「え?何で私?」


「いや、何となく伊川が引いた方がいい気がして・・・。」


「いいのが出なくても文句言わない?」


「言うか。」


「わかったよ。食器とか、調理器具出ないかな~。あ、後お米欲しいな。」


ヤメレ。

俺は溜息を吐きながら、スマホを伊川に渡す。

そして、伊川が10連ボタンを押す。

ガチャマシーンが踊り出し、中のカプセルが飛び跳ね、排出口からカプセルが10個飛び出しメッセージが出る。


「R調理器具をゲット!」

「R鉄のハーフプレートをゲット!」

「Nパン10個をゲット!」

「R鉄の斧をゲット!」

「N冒険者の服上下(女)をゲット!」

「Nパン10個をゲット!」

「N冒険者の靴をゲット!」

「HN食器セット(10人分)をゲット!」

「UR獣王爪の小手(両腕)をゲット!」

「HR米俵(10俵)をゲット!」



「いつもながら、演出凝り過ぎだろ。つか、ピンポイントで、伊川の欲しい物出すぎ。何だよ、米俵10俵って。」


俺はガチャの結果に笑ってしまう。

マジ、伊川の欲しい物出すぎ。


「え!だって、お米だよ?お米!この前の調味料セットにお味噌もあったから、これで和食が食べれるんだよ!?味噌汁は具無しだけど。」


その言葉に、全員が恍惚の表情になる。


「いや、まあそうなんだけどさ。何か損した気分じゃん。一回100Gだぞ?日本円で1万円だぞ?」


「拓哉、米は必要だぞ?それに、米も10Kgで3000円くらいするんだ。1万で10俵ならお得だ!」


「そこかよ!ま、まあいい。今までが切り詰めた食事だったし、明日から少しは腹いっぱい飯食えるだろう。でだ、米とパン、食器に調理道具は伊川に預けるからな。服と靴、革鎧は澤田だな。獣王爪の小手ってなんだ?」


俺はストレージから今出た物を出して伊川と澤田に渡した後に、獣王爪の小手を出し鑑定してみる。


・獣王爪の小手

攻撃する際に、拳の部分から獣王ライガーの爪が出る。鋭く尖ったその爪は、岩をも砕く。


獣王ライガー・・・獣神ライガーか?


「なんか、攻撃する時に獣王ライガーの爪が出て相手を切り裂くんだとよ。岩も砕けるって書いてあるから、結構堅いのかもな。超近接格闘武器だ。ハーフプレートは、ストレージの肥やしだな。重くて着けられんだろ。」


俺はストレージに獣王爪の小手を仕舞おうと手を伸ばす。


「拓哉、俺武器無いんだが何かくれないか?」


「ん?龍平武器無いんだっけ?何がいい?」


俺は獣王爪の小手から手を離し、ストレージから武器を取り出す。


「N銅の斧、HN鉄の短剣、R鉄の剣、R鉄の斧、R鉄の槍×2、HR鋼の剣、HR鉄のガントレット、SRコルト・パイソン357マグナム、UR無限鎖球、UR獣王爪の小手(両腕)だな。ただ、コルト・パイソンは俺が使ってる。無限鎖球は威力が高すぎて、魔物がスプラッターになる。使い勝手が悪い武器だな。後、鋼の剣も俺が使ってたりするわ。すまん。」


「んじゃよ、申し訳ないが今出た小手と鉄の槍貰えね?」


「いいぞ?」


「サンキュー。」


「清水は大丈夫なのか?」


「えっと・・・出来れば、槍が欲しいかな。僕の持ってるのって、剣なんだよね。鉄と鋼。」


「おお、じゃあ鉄槍やるから、龍平に鋼の剣やってくんね?鋼の槍でたら清水にやるからよ。」


「うん、いいよ。」


その後も各自が革鎧だの短剣だのを女子に渡したりて、無事物々交換が完了した。


「よし、んじゃ明日屋敷畳んで移動開始だな。数日歩くかもしれないから、今日はしっかり休もう。」


全員頷き、今日は就寝となる。


翌日

朝食を済ませた俺達は、さて行くかと腰を上げる。

そして、俺は思い出す。


「あ・・・。そうそう、一個使ってない召喚の指輪があったんだわ。どうしよ。男3人+リズで女子4人守れるか?」


「ん~。まぁ、俺は何とか出来るんじゃないかとは思うが、初戦闘だからな。」


「ぼ、僕は、自信ない。逆に守って貰いたいかも。」


「・・・マジか。んじゃ、召喚しとく?」


「拓哉が良ければ、お願いしたいな。」


「うむ。んじゃ、伊川。お前召喚しろよ。」


「は?また私?」


「またと言うか、たまたま近くに居たのが伊川だっただけだ。次に召喚の指輪出たら澤田に渡すぞ?一応、俺との運命共同体だからな。」


「そ、そう言う事なら・・・。」


俺はストレージから召喚の指輪を出すと、伊川に手渡す。


「指輪を嵌めて、どんなのに出てきて欲しいか念じるんだ。大体思った通りに出て来ると思われる。」


「と言う事は、東條君は女の子を召喚したかったって事?リズちゃんみたいな。」


グッ!当たってるだけに、何も言えねえ・・・。


「ま、まあ・・・強い仲間が欲しいとは思ったがな・・・。ほ、ホントだぞ!」


めっちゃジト目で見られてる。


「分かったよ。そう言う事にしておきましょ。とりあえず、召喚するね?強くて逞しい騎士の様な人が現れますように。」


伊川が目を閉じてそんなメルヘンチックな事を呟きながら祈ると、指輪が光始め伊川を包む。


そして、光が収まると俺達の目の前には本当に騎士が立っていた。

その騎士は、髪は金髪ポニーテール。スラリとした美形で、胸までの銀色の鎧を身に纏い、腰当ての下はミニスカート。腕と脛も銀色の小手と脛当てを付け、その小手の左手には大きな盾を持っている。そして、腰には素材が何かは分からないが長剣をぶら下げている。

そして、伊川を見るなり膝を折り傅くと口を開く。


「この身の名は、イーリスと申す。主様の召喚に馳せ参じました。何なりとお申し付け下さい。」


「えぇぇぇっ!」


俺は思わずそう叫んだ。

何で俺の時にこの騎士が現れなかったのか・・・俺の邪な気持ちがダメだったのか・・・悔しいです!


「イーリスさん?私は伊川春香。よろしくね?」


「春香様ですね。この身の事はイーリスとお呼び下さい。これから、御身の騎士として誠心誠意お守り致します。」


「よ、良かったな・・・騎士で。」


「え?あ、うん。頼もしい騎士で良かったよ?イーリスもこれからよろしくね?」


「はっ!」


俺は思った。

次は、ピュアな気持ちで召喚しようと。

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