第14話 続々と

俺は、座ったままの清水に声を掛ける。


「さて、清水。お前いつ頃こっちに来たんだ?」


「ぼ、僕は・・・あ、その前に助けてくれてありがとう。僕は、3日前に飛ばされたよ。」


3日前か。


「家は何時に出た?」


「家?僕は、自転車に乗って駅に行く途中で突然ここに飛ばされたんだ。だから、持ち物に自転車がある。」


マジか!


「それは、大体何時頃だ?」


「えっと・・・確か、駅に着くちょっと前だったから・・・7時頃かな?」


「なるほど。澤田や伊川より少し前だから3日前か。」


「澤田さんと伊川さんも一緒なの!?」


「ん?まあ、二人を助けたからな。それよりも、あの5人以外に誰かと出会わなかったか?」


クラス全員が飛ばされたとすると、後男12人、女12人がこっちに飛ばされてる筈だ。


「えっと・・・2日前に、猿渡君見かけたよ?後、河野さんと水谷さんも見かけた。」


「おぉ!龍平居たのか!河野と水谷とは会話したのか?」


してたら、清水は3000億だ。


「いや、僕が女子に声なんて掛けれる訳ないでしょ。木の陰に隠れてただけだよ。だから、向こうも気付いてないと思う。」


「龍平は?」


「猿渡君は、何か地面をゴソゴソしてたのを見ただけで、話しはしてないかな。」


なるほど。

とりあえず、三人とコンタクトを取らないと、またあの5人が絡みに行くな。

とくに龍平。


ちなみに、猿渡龍平は俺のダチだ。同じ剣道場に通ってって、メチャクチャ仲がいい・・・はず。河野ってのは河野公子。うちのクラス委員だな。頭脳明晰、スポーツ万能。ロン毛に眼鏡を掛けたどこぞのお嬢様って感じの女子だ。水谷ってのは水谷葉子。副委員長だ。河野と比べると可哀そうだが、どっちかと言うと河野に引っ付く寄生虫って感じ?いつも河野の後ろをヒョコヒョコ付いて回ってる。そして、僕っ娘だ。

仲がいいのかどうかは知らないけどな。


「そうか、ところで清水は金成に何盗られたんだ?」


「ガチャで出たマジックテントってやつ。あれのお陰で、何とか3日生き延びれたんだ。だけど、金成君に取られたから、もうお終いだ。」


清水はその場に崩れ落ち、マジ泣きしやがった。

男の涙って、誰得よ?


「あ~、それなんだがな。清水が俺達の言う事を聞くってなら、俺達の拠点に入れてやってもいいぞ。」


「ほ、ほんとに!?」


清水は俺の言葉を聞き、ガバッと顔を上げる。


「ああ。ただし、何か揉め事やら起こしたら即出てって貰うがな。ま、条件は何も決めて無いし追々考えとくが、そんな悪い条件は作るつもりはねえから安心しろ。それより、龍平と河野、水谷を見た場所へ連れてってくれ。一応、コンタクトは取っておきたい。」


「うん!僕、案内するよ!その代り、拠点の件はよろしくお願いね!」


「ああ。」


元気を取り戻した清水の案内で、俺とリズは龍平と河野、水谷を探しに向かった。



清水達と遭遇した場所から、歩いて3時間程した所で清水が口を開く


「ここで河野さんと水谷さんを見かけたんだ。」


なるほど・・・森のど真ん中か。


「あの二人は何してたんだ?」


「ん~何してたかまでは分からないけど、手を繋いで歩いてたかな。」


「どっち方向だ?」


「あっち。」


清水が指差した方向は、多分金成達が先程逃げてった方向に向かうルートだ。


「チッ。ちなみに龍平は。」


「猿渡君も同じ方向だよ。」


「んじゃ、行くぞ。」


俺は走った。

清水は少し遅れて付いて来る。

が、俺は身体強化LV1がある。

どんどん清水が離されていく。


「おい、早く来い!」


「ちょ、ちょっと待ってよ・・・何でそんなに早いの?」


「あ?スキルガチャってのがあって、それで身体強化ってスキル手に入れたからだよ。」


「何そのチート!」


いや・・・全くチートでも何でもないんだが。


「チートじゃねえし!つか、急ぐぞ!」


と、清水の方から前に向き直った時だ。


「あら、東條君じゃない?」


「清水君も居る!」


マズッたと思った。

また増えるのか!と思った。

しかし、それは杞憂に終わる。


「お?拓哉じゃねえか。お前らも飛ばされたんか。」


冒険者の服上下を着た龍平が居た。

ちなみに、河野も水谷も冒険者の服上下(女)を着ている。

違いは、ズボンかスカートかだ。


「龍平!って事は、お前もしかして・・・。」


龍平は全く分かって無いようで、首を傾げる。


「ん?もしかしてって、何かあったのか?」


「いや、説明は後だ。とりあえず、お前ら三人は何処が拠点だ?」


「拠点?ああ、テントなら、すぐそこだ。見えねえか?」


あ~、隠蔽効果だな。


「多分それ、隠蔽と結界が掛かってるから、俺と清水には見えねえよ。」


「私も見えないわよ?」


「僕も。」


「ん?って事は、お前らさっき出会ったのか?」


「ああ、ついさっきだな。拓哉が来るほんの10分前くらいか?」


「そうね?私たち二人は、拠点になる場所を探してウロウロしてたから。」


「マジか~。まあいい。龍平、俺の拠点に行かないか?お前なら、全く問題無く入れられる。と言うより、二人で力を合わせないと多分無理だな。」


俺も龍平も既に3000億の負担が掛かってる。

ここは龍平と力を合わせないと、この無理ゲーは無理ゲーで終わってしまう。


「いいけどよ。河野と水谷はどうすんだ?」


「あ~、多分お前と一蓮托生になってるから、連れてかないと先ず死ぬな。」


「え?それってどう言う事!?」


「一蓮托生!?」


やっぱ知らないわな。


「とりあえず、移動しながら話そう。ここに居ると、金成達と遭遇する確率が高い。」


龍平も河野も水谷も頷き、龍平が荷物を纏めると俺達は屋敷に向けて歩き出した。

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