第11話 ちょっと都合が良くありませんか?

朝食(アプルル)を食べた後、二人にどっちのガチャを引くべきか聞いてみた。


「装備・アイテムの方がいんじゃない?」


「私もそう思うな。」


二人共アイテムガチャか。


「その心は?」


「ベッドが欲しい。」


「清潔な家が欲しい。」


やっぱり。


「はいはい。ま、そもそも、そんなアイテムがあるのかすら分からんけどな。んじゃ、装備・アイテムの方引くぞ。」


俺はそう言うと、スマホを取り出してガチャアプリを開く。

おっと、また忘れる所だったぜ。


「その前に、1日1回無料ガチャ引くからな。」


そう言って俺がボタンを押そうとすると、伊川が待ったを掛ける。


「ちょっと待って!私やってみたい!ガチャアプリ使う前に、消えちゃったから。」


あ〜確かに。


「そうか。一回もやってないんだよな。んじゃ、伊川が装備・アイテムガチャやれよ。澤田もやってみたいか?」


「ん〜、一回くらいやってみたいかな。」


「じゃ、澤田はスキルの方な。伊川ほれ、このボタン押せ。」


俺は伊川にスマホを渡し、押すボタンを指差す。


「これね?それじゃあ、押すわよ?」


俺と澤田が頷く。

そして伊川がボタンを押す。

ガチャマシーンが揺れ始め、中のカプセルが踊る。そして、排出口からカプセルが飛び出てカプセルが開き、メッセージが表示される。


「SSR携帯マジックハウスをゲット!」


「はぁ?何なんだよ、このご都合ガチャはよ!?」


そう、伊川が欲しがっていた清潔な環境が手に入った瞬間だった。


「何かわかんないけど、これって凄いの?」


俺はストレージを見る。

あるわ・・・。


「多分、凄い。だが、とりあえずアイテムは後だ。先に澤田、スキルガチャやってみ。」


俺は伊川からスマホを受け取ると、スキルの方へ画面を移し澤田に渡す。


「ここな。」


「わかった。」


澤田は、1日1回無料ボタンを押す。

ま、いつもの如く演出があり、カプセルが開く。


「EX魔石換金率二倍をゲット!」


「いや、もう何もツッコミたくないわ。」


何なんだよこのご都合ガチャ。


「とりあえず、10連引く前に一度外に出るぞ。」


伊川と澤田を外に出し、毛皮をストレージに仕舞う。そして、テントから出ると、テントも仕舞う。

それから、少し下がり場所を広く取ると、先程のSSR携帯マジックハウスをストレージから出して放る。

このSSR携帯マジックハウスだが、某アニメに出て来る○イポ○カプセルみたいな感じだ。カチッと押し、ポイっと投げる。

もう、マジふざけてると思うわ。


そして、河原ギリギリのサイズでそこに現れたのは


「家だな。」

「家だね。」

「ちょっと豪華な家だね。」


そう、家だった。

ただ、普通の家じゃないぞ?

なんつうか、ちょっとお洒落な洋風の二階建ての屋敷だ。


「これ、ハウスじゃねえよな?どっちかってえと、マンションやレジデンスっう感じじゃね?」


「「確かに。」」


ハモリやがった。


「こんなん出た日にゃ、俺は嫌な予感しかしねんだが?」


「どんな予感?」


俺がこめかみを押さえながらそう言うと、伊川が聞いて来る。


「人が増える。タイムラグで飛ばされて来るかもしれないクラスメイトが増える。そして、場合に寄っては俺に負担が伸し掛かる。」


「「あ〜!」」


「ハモんじゃねぇ!もう、勘弁してくれ・・・。」


二人は、可哀想な目をしてこっちを見ている。

マジ勘弁して欲しい。


「まあいい。とりあえず、鑑定だな。」


俺は鑑定の指輪で調べてみる。


・SSR携帯マジックハウス

マジックカプセルに入ったマジックハウス。

展開させる時は、ボタンを押し地面に放る。携帯する場合は、玄関の扉横にあるボタンを押す。

隠蔽と結界が付与されており、半径10mまで効力がある。

全室冷暖房完備、4口マジックコンロオーブン付き、マジック冷蔵庫付き、風呂トイレ別

大商会会頭標準モデル



「ま、まあ・・・隠蔽と結界は付いてるみたいだ。半径10mが効果範囲だと。」


「中に入っていい?」


「好きにしろよ。」と俺が言うと、二人は嬉々として屋敷へと入って行く。

俺は考えた。そもそも初回無料とかなら分かるが、1日1回無料でこんな物が出るなんて絶対におかしい。

100歩譲ってビギナーズラックだったとしても、SSRは分かる。が、EX。エクストラが出るなんて有り得ない。

それに、ピンポイントで出た全10室以上ありそうな屋敷。


「もう、これは俺に対しての嫌がらせか挑戦としか思えん。」


俺がトイレに入ったのが6時45分。澤田も伊川も7時5分頃に家を出た。

澤田と伊川のタイムラグが、こっちの時間にして約二時間前後。

あっちの数秒がこっちの数時間になってる可能性が高い。


「もっと増えるんだろうな。」


俺は大きく溜息を吐くと、待たせているリズを連れて屋敷へと入って行く。



思った通り、屋敷は広がった。

玄関を入ると、広いピロティがあり、正面には二階へ上がる階段が。左側の通路を挟み左側がリビング。右側がトイレと風呂だ。風呂がめちゃくちゃ広い。

右側通路を挟み、左側がダイニングとキッチン。右側に応接間が二室だ。

二階は、左側の通路を挟み左右に三室ずつ。

右側の通路を挟み、左に三室、右に二室だ。

右側手前の部屋は、書斎と寝室になっているので、屋敷の主人が使う部屋なのだろう。

かなり広い寝室だった。


「東條君の部屋はここね。私は東條君の前の部屋貰ったから!」


と、伊川に部屋を決められていた。

その決められた部屋が、書斎付きの部屋だ。


「いや、広すぎるだろ。書斎なんて使わないし。」


「一応、この家の持ち主だし、東條君にはしっかりと体を休めて稼いで貰わないといけないからね。だから、一番いい部屋じゃないとダメだよ。」


ま、まあ・・・気を遣ってくれてんだろうな。


「そ、そうか?んじゃ、ここ使うわ。澤田は?」


「涼子ちゃんは、私の隣の部屋でゴロゴロしてるよ。」


「そ、そうか。10連引こうと思ったが、またにしよう。とりあえず俺は狩に行ってくる。」


そう言って俺はリズと共に狩に出かけた。

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