38話 長く短い夜②

「今晩私の部屋に泊まっていかない?」


突然の八重樫の誘いに戸惑う彰。


「えっ、でも...」


彰は今まで、女性の部屋に泊まったことはなかったのでどうするべきか必死に考えていた。


「だめかな...?」

「いや、全然!うれしいけどいいの?」

「私から誘ってるんだからいいに決まってるじゃない。これ以上私に恥をかかせないでちょうだい。」

「わかった。じゃあ、一旦部屋戻って、シャワー入って歯磨きして戻る。美咲もシャワーとか入っておいて。」

「りょーかい。はい。これ部屋の鍵。支度終わったら勝手に入ってきてくつろいでていいわよ。」


彰は八重樫から鍵を受け取り、自分の部屋へと戻っていった。


服を脱いで、シャワーを浴びようと風呂場へ行くと様々なことを妄想していた。


「まさか今日泊まることになるなんてな...」

「もしかして、八重樫さんと今晩(ニヤニヤ)」

「でも、あんまりグイグイいきすぎても嫌われそうだしな...」


期待に胸とち○こを膨らませながら、風呂場を出た。


その後、パジャマに着替え、歯磨きをし、八重樫の部屋へと戻ろうとした。

自分の部屋のドア前に立ったときに、ワンチャンあるかもしれないと、根拠もなく期待していた彰は、隠していたゴムをパジャマのポケットに入れ、八重樫の部屋へと戻っていった。


借りた鍵を使ってドアを開けた。


すると、彰の目にはバスタオル一枚の姿の八重樫が写った。


「あっ...」


あまりの突然のラッキーにぼーっと立っていると、


「ちょっとそんなにじろじろ見てないでよ変態!!早く目つぶって!!」

「は、はい!すいませーん!!ごちそうさまです!!」

「バカなこと言ってるんじゃないわよ、変態!!」


彰は苦し紛れに、言い訳を放った。


「でも美咲さんは大人だから、後輩の男の子にバスタオル一枚の姿を見られたくらいじゃなんとも思いませんよね?(笑)」


すると八重樫は、急に強がり、


「そ、そうね。後輩に嫌らしい目で見られたってなんとも思わないわ。」


と言った。


そうは言ったものの、八重樫はやはり恥ずかしかったのか、急いで着替えを取り、シャワールームへと戻っていった。


着替え終えた八重樫は、ドライヤーで髪を乾かしていた。

彰はその後ろに立ち、ドライヤーをもらって、八重樫の髪を乾かしてあげた。


「美咲の髪さらさらでいい匂いする。」

「やめてよ、恥ずかしい...」

「褒めてるんですよ。」

「ありがと。」


ある程度乾いたところで、


「あとは自分でやるわ。」

「りょうかい。」


ドライヤーを再び八重樫に戻し、彰はソファーに座った。

テレビをつけ、右下に表示される時刻を見ると、0:30と示していた。


八重樫が髪を乾かし終えると、


「ねぇ、最後にもう一戦だけやらない?」


とスマブラの再戦を求められた。


「しょうがないっすね。一戦だけですよ。」


負けず嫌いな二人は互いに本気のキャラを選択し戦った。


結果的には僅差で八重樫が勝った。

普段であれば悔しくて仕方がないはずの彰も、八重樫の笑顔を見ていると、悔しさもどこかへ吹き飛んだ。


「じゃあ寝ようか彰。」

「うん。僕はどこで寝れば?」

「えっ、もちろんこのベッドだけど?」

「じゃあ美咲は?」

「私もこのベッドだけど?なんか変?」

「い、いや、なんも変じゃない!」


そういって、八重樫は電気を消して先にベッドに寝転んだ。

その隣に彰も寝転がる。


二人は背中合わせで寝ている。

もう、互いの鼓動が聞こえてしまいそうなくらい緊張しているのが伝わった。


すると先に八重樫から彰の方を向き、話しかけた。


「ねぇ彰... ちょっとこっち向いてよ。」

「う、うん...」


そういって、彰は八重樫の方に身体を向けた。



その瞬間



彰は唇に、柔らかな感触を得た。

振り向いた瞬間、八重樫からキスされたのであった。


キスをしたことに恥ずかしくなった八重樫は、すぐに反対を向くが彰は後ろから八重樫を抱きしめた。


そして、耳元でささやいた。


「美咲、好きだよ。」


八重樫は再び彰の方を向き、抱き合いながらキスをした。


その後二人は抱き合い、幸せに包まれたまま眠った。


・・・

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