36話 水族館③
イルカショーが終わると、その後はダブルデートとはならずに、彰と八重樫、本田と笠原のそれぞれで行動することになった。
「じゃあな、彰!また会社で!」
「おう!」
そういって、本田と笠原が先にイルカショーの観客席を立ち先へと進んでいった。
彰と八重樫も、少し間をあけてから、次に進んだ。
屋外から屋内へと戻っていくと、順路は地下へと続いていた。
階段を降りると、大海原が広がっていた。
まるで、海の中を散歩するような体験ができるようになっているこのトンネル型の水槽に、彰と八重樫は見入っていた。
全長22mにもおよぶこのトンネル型の水槽には、900尾もの魚たちが泳ぎ回っていると説明が書かれていた。
頭の上を泳ぐ魚たちを見上げながら、彰と八重樫は進んでいく。
「すごいわね~、なんか海の中にいるみたいね!」
「はい!そうですね!海の中ってほんとに神秘的ですよね!」
「ほんとにきれいね~」
「きれいですね~」
二人の手は自然と絡まり、気付いたときには、お互い強く握っていた。
トンネルを抜けると、薄暗い深海の魚のゾーンがあり、八重樫が少し怖がっているように見えたので、すぐにそこを抜けた。
そして、次に見えたのはクラゲのコーナーだった。
クラゲはライトアップされ、とても綺麗に演出されていた。
二人はクラゲに見とれて、その水槽の前にしばらく立ち尽くしていた。
その後は、サンゴ礁に群がる魚たち、アシカ、クマノミ、カワウソ、イルカやサメを順番に見て回った。
イルカは、先ほどは上からしか見ていなかったので、水中で泳ぐ姿を見て二人は再び興奮した。
一通り見て回り、最後にお土産屋があったので二人はそこへ入っていった。
店内をぶらぶらと歩き回っていると、とあるキーホルダーを見つけた。
それは、カワウソのキーホルダーだった。
「ねぇ彰!このカワウソのキーホルダーかわいくない?」
「確かにかわいいですね!でも僕はこっちのペンギン派ですね。」
「それもいいけどやっぱりカワウソの方がかわいい!」
「はいはい(笑)」
「それ買うんですか?」
「うん!よかったらおそろにしない?」
「えっー。」
「なによ?」
「いや~、おそろだと万が一誰かに見られたときに...」
「そっか~。じゃあ彰はペンギンにする?」
「はい、そうします。僕はアパートの鍵につけておきます!」
「私もそうするわ。」
二人はそれぞれキーホルダーを買って、アパートの鍵につけた。
・・・
水族館を出た時には、時刻は13:30になっていた。
さすがにおなかが減った二人は、品川にあるおしゃれな喫茶店で食事を済ませた。
食事を済ませた後、秋葉原へと向かった。
ゲーム会社勤務ということもあり、二人はそういったコンテンツが大好きなので、秋葉原で、アニメやゲームのグッズを見て回り楽しんだ。
いつの間にか、空は夕焼けに包まれていた。
二人はアパートへ帰ることにした。
電車に乗って帰る道中も会話は続いた。
「今日も楽しかったわ。ありがと。」
「こちらこそ。でもさすがに、本田と笠原ちゃんには驚きましたけどね。」
「それは私も驚いたわ。」
「また休日はどこか行きましょう!」
「そうね。」
会話が途切れ、少しの間無言が続いたが、それを八重樫は一言で切り裂いた。
「あ、あの、彰。」
「どうしたんですか?」
「もし、暇だったらでいいんだけど、私が晩ご飯作ってあげないこともないわよ。」
八重樫は、強がりながら彰を部屋へ誘おうとした。
「えっ、いいんですか?ちょうど、冷蔵庫の中なんもなくて。お願いします!」
「しょうがないわね。じゃあいいわよ。作ってあげるわ。」
うれしそうに八重樫は答えた。
二人は電車に30分ほど揺られ、見慣れた駅に到着した。
・・・
・・・
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