34話 水族館①

約束の土曜日を迎えた。


彰と八重樫は10:00にアパートの玄関に集合することになっていた。

彰は支度を済ませ、10:00になる5分前には集合場所にいた。


10:00を過ぎても、八重樫は姿を現さない。

10分経っても八重樫が来ないので、彰は八重樫の部屋に行った。


「ピンポーン」


インターホンを鳴らすが返事がない。

少し心配になり、ドアを強めにノックする。


「八重樫さーん、大丈夫ですか?」


その声に応えるように、スマホがなった。


「もしもし。」

「もしもし、彰。ごめん、二度寝しちゃってまだ支度できてない...」

「そうだったんすね。全然大丈夫ですよ!」

「ほんとにごめん...」

「じゃあ僕自分の部屋で待ってるんで、準備できたら部屋まで来てください。」

「わかった。すぐ支度するね。」


電話が切れたので、彰は部屋に戻って待機している。


15分ほど経って、部屋のインターホンが鳴った。

ドアを開けるとそこには八重樫が立っていた。


「待たせてごめん、彰。」

「大丈夫ッすよ。行きましょうか!」

「うん...」


二人は京阪東北線に乗り、しながわ水族館の最寄り駅である大森駅に向かった。


電車の中で、隣り合わせに座っていると、彰は八重樫に目を向ける。

彰が思わずにやけてしまいそうになるくらい、私服の八重樫はかわいい。


いつものように会話していると、すぐに大森駅に到着した。


大森駅に着いた二人は、早速しながわ水族館へと歩みを進めた。


15分ほど歩くと、水族館が見えてきた。


水族館に着き、チケットを買うために列に並ぶ。


「次の方どうぞ~」

と呼ばれたので、二人は前に進んだ。


「いらっしゃいませ!本日は2名様ですか?」

「はい。」

「お二人様はお付き合いされてらっしゃるのですか?ただいまキャンペーンでカップル様専用価格でのチケット販売を行っております!」

「あら、そう。じゃあそのチケットいただくわ。」


八重樫は恥ずかしがる様子も見せずに、カップルチケットを要求した。


「では、お二人様で1800円になります。」

「はい。2000円でお願いします。」

「200円のおつりになります!楽しんでくださ~い!」


こうして二人はチケットを購入し、水族館へと入っていった。


薄暗くなっていく館内で二人は手を繋いだ。

チケットを買うときまで、すました顔をしていた八重樫が満面の笑みで彰を見つめる。


館内に入って、最初に目に入ってきたのは、東京湾に住む魚たちの展示だった。


そこのゾーンを抜けると、ペンギンが二人を出迎える。

ペタペタと歩くペンギンに、八重樫はメロメロになっていた。


しばらくペンギンを眺めたあと、次に進むと、そこにはアザラシゾーンが広がっていた。


かわいらしいアザラシが、のびのびと泳ぎ回っている姿もとてもかわいかった。


順路通りに進むと一度外に出て、イルカショーの行われるスタジアムに誘導された。


時刻は現在11:15。


次のイルカショーが11:30から行われるということで、二人は席に腰をかけ、時間まで待つことにした。


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