33話 純情
いよいよ、プロト版の提出日である7/30を迎えた。
今日は少し社内はバタバタしていた。
彰と八重樫もその忙しさの渦の中にいた。
彰は高梨から、シナリオを受け取り、チェックしていく。
そして、気になったところを二人で微調整していく。
一方の八重樫は、グラフィックチーム、音響チームと掛け合い、プロト版用のキャラデザ、音楽を確認した。
今回のプロジェクトは会社が一体となって取り組むものなので、すでに承認が下りているようなものなので、プロト版に関してはそこまで心配はなかった。
午後になって、彰と八重樫は無事確認作業を済ませ、プロト版を提出した。
会社からの承認はすぐに下りて次はα版の作成に取り組むことになった。
作業が一段落ついた彰と八重樫は、二人きりの休憩室で話していた。
「とりあえず、一段落ね。」
「はい。よかったです。」
「でも、気は抜けないわよ。」
「もちろんです。こっからが大事っすね!」
「あ、あの、山城君...」
「どうしました?」
「う、いや、あの~。」
「なんすか~」
「あ、あした暇かしら?」
「はい!明日はなんも予定ないですよ!」
「え!ほんと!じゃあ、明日どっか行かない?」
「いいっすよ!どこ行きますか?」
「うーん、水族館?」
「いいですね!じゃあしながわ水族館行きません?」
「うん!そうしましょう!」
休憩時間に二人は次のデートの予定を立てたのであった。
その後、α版の作成に向け、スケジュール管理を二人で行い、各チームにスケジュールを伝えて回った。
・・・
それぞれが仕事に熱中しているうちに、日が暮れてきた。
今日は無事にプロト版を終わらせることができたので、八重樫はそれぞれのチームリーダーに早めに社員を帰らせて休ませるように指示をした。
それが終わると、八重樫は彰に声をかけ、一緒にオフィスを出た。
・・・
帰る道中、八重樫が酒を呑みたいというので、彰は八重樫に付き合って居酒屋に行くことにした。
「お疲れ山城君。」
「お疲れ様です。今日は呑みすぎないでくださいね。」
「わかってるわよ。とりあえずなに呑む?」
「じゃあビールで。」
「私もそうするわ。」
二人はビールを注文し、乾杯した。
そして、一気に飲み干し、もう一杯注文する。
「今日は呑みたい気分だったんですか?」
「うん、まぁね。最近ちょっと忙しかったからね。」
「そうですね。」
「ねぇ...公園で言ってくれたことってほんとだよね?」
「なんすか、もう酔っ払ったんですか?」
「まだ酔ってないわよ...」
「えっと...僕は八重樫さんのこと好きです...」
「ほんとに...?」
「はい...」
二人は顔を見つめ合っていたが、恥ずかしさのあまり顔をそらし、手元にあった酒を喉に流し込んでいく。
・・・
しばらく呑んでいると、八重樫はすぐに酔いはじめた。
そろそろやばいと察した彰は、次の酒を注文しようとする八重樫を止め、帰るようにうまく誘導した。
・・・
店を出た二人は、アパートへ帰っていく。
彰が、八重樫に肩を貸しながら駅に向かっていく。
「山城君、ありがと~。」
「いいですよ。」
酔った八重樫はいつもより積極的になり、彰の腕にしがみついた。
「山城君、これからは名前で呼んでもいい?」
「えっ、あ、いいですよ。」
「じゃあ、彰~。」
「はい、あきらです。」
「彰~、これから二人の時は美咲って呼んで~。」
「わかりましたよ、美咲さん。」
「だめ~、美咲がいい。」
「はいはい、美咲。」
彰は酔った八重樫に散々振り回されながら、彼女の部屋まで送り届け、自分の部屋に戻っていった。
「明日のデート楽しみだな...」
独り言をこぼし、ベッドに寝転んだ。
・・・
・・・
・・・
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