31話 向日葵の咲くこの場所で
お互い気まずさを抱えたまま迎えてしまった月曜日。
彰は昨晩かなり早くに眠りについたことから、早朝に目を覚ました。
家にいてもすることもないので、早出出勤することにした。
身支度を済ませ玄関を出た。
そして、エレベーターに乗った。
するとそこには、八重樫がスマホの画面を眺めながら立っていた。
八重樫はスマホの画面から目を離さないため、まだ彰に気づいていない。
エレベーターが1階で止まると、八重樫は顔をあげた。
彰と、八重樫は顔を見合わせた。
二人は、挨拶だけ交わし、無言で歩き出した。
この静寂に耐えられなくなった八重樫が先に口を開いた。
「まだ出社時間まで時間あるから少しそこの公園で話さない?」
「あ...はい。」
二人は近くの公園のベンチに座った。
「山城君、その、なんというか土曜日のことはごめんなさい。」
「全然、むしろ僕の方が...」
「私は気にしてないわよ?」
「そうですか。」
少し沈黙が流れる。
そして八重樫は、涙目で彰に問いかけた。
「どうして昨日メッセージ返信してくれなかったの?私、山城君のことがほんとに心配で、送ったのにどうして?」
「い、いや、自分がしてしまったことが恥ずかしくて...」
「私がいいって言ったんだからいいじゃない?」
「すいません...」
「すいませんじゃないわよ。もう、山城君に嫌われて、話すら聞いてもらえないんじゃないかって本気で心配してたのよ。」
「すいません...でも、僕がしたことは最低なことですよ?昔好きだった女性と八重樫さんを勝手に重ねて、甘えて...」
「だから...いいって言ってるじゃない!!あのね、山城君。私はあんたのこと好きだわ。隣にいてくれると、いつも楽しくて、落ち着いて、1番自分らしくいれる。だからあんたのこともっと知りたいって思うし、これからはもっと一緒にいたいと思ってるの。」
顔を真っ赤にし、半泣きで、八重樫は本当の気持ちを彰にぶつけた。
すると、彰は深呼吸をして、話し始めた。
「八重樫さん、あの花火大会の帰り道、好きな人いないって言ったの覚えてますか?」
「えっ?あ、覚えてるわよ。」
「あれ実は違います。本当は好きな人います。でも、好きになるのが怖かったんです。」
「まぁそれは無理もないわね。」
「でも、昨日夢にエマが出てきて、背中を押してくれました。それで一歩踏み出そうって決心できました。」
「あら、そう。良かったわね。」
「僕... 八重樫さんのこと好きです。」
八重樫は彰の思いもよらなかった告白に、動揺しながら、涙を拭うために目を擦る。
「なんなのよ、あんたはほんとに... ほんとにずるいわよ... 自分勝手よ...」
「すいません。でも、この気持ちは伝えておきたくて...」
・・・
「ばか...」
すると、彰は立ち上がり、座っている八重樫を抱きしめた。
向日葵が空に向かって力強く咲くこの場所で、二人は結ばれた。
“あなただけを見つめる”。
向日葵の花言葉が似合う朝となった。
・・・
その後、二人は中睦まじげに会社へと歩みを進めたのであった。
・・・
・・・
・・・
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