25話 曇りのち晴れ③
朝になって、目を覚ます彰。
部屋の換気をするために、カーテンを開けた。
今日は快晴だ。
天気に気分が左右されがちな彰は、空に浮かぶお天道様を眺め、八重樫との関係に希望を見いだせそうな気がした。
そんな期待をしつつ、彰は出社した。
・・・
・・・
八重樫はというと、彰に合わせる顔がないと思い、会社に行くのを渋っている。
憂鬱な気持ちを抱えつつも、昨日、自分のミスで迷惑をかけてしまったことを思い出し、重い足を動かした。
八重樫が出社すると、彰はすでにデスクで仕事に取り組んでいた。
仕事をしていて、話しづらい雰囲気だったので、挨拶だけして席に着いた。
昨日のことを謝りたいと思っていてもうまく言葉にできない。
そして、そのタイミングがわからない。
頭の中でそう思っていると、時間だけが無慈悲に過ぎ去っていく。
気づいた時にはもう赤い太陽が窓の外に写っていた。
今日のうちに謝っておかないと、もう彰との関係が修復できなくなる。
早く伝えなきゃ。八重樫はそう思い、タイミングを図る。
もう、彰が退勤するタイミングしかない。と八重樫は覚悟を決めた。
八重樫は自分の仕事を終えたあとも、仕事をするフリをし続け、彰が退勤するタイミングまで待った。
彰がノートPCを鞄に入れたタイミングで、八重樫も荷物を片付けた。
そして、オフィスを出る彰の後を追うように、八重樫もオフィスを後にした。
オフィスを出て少し経ったところで、彰に追いつき、話しかけることができた。
「お、おつかれ...」
「お疲れ様です。どうしたんですか?」
「い、いや、えっと、その... 昨日は悪かったわね...」
「全然大丈夫ですよ!もう大丈夫ですか?」
「もう大丈夫、迷惑かけて申し訳なかったわ。」
「八重樫さん今日このあとあいてますか?」
「まぁなにもないわ。」
「じゃあ今から呑み行きましょう!」
「いいわ。行きましょう。」
二人は電車に乗り、恒例の呑み屋に入った。
席に着き二人は始めにビールを頼む。
ビールがテーブルに届き、乾杯し、ゴクゴクと喉に流し込んでいく。
すぐにジョッキ1杯を飲み干し、ビールをおかわりする。
その後、おつまみを注文しながら、飲み続け、会話は弾んでいくのであった。
4~5杯呑んだところで、八重樫は酔っ払ってきた。
酔っ払った八重樫は彰に唐突にこのような質問をぶつけた。
「山城君。あんた笠原ちゃんに手出してるでしょ?」
「えっ、そんなことしてないですよ?」
「あんた隠してることあるでしょ~?」
「なんもないですって...」
「もう、いいわ、私この前あんたと笠原ちゃんが一緒にいるところ見たわよ。しかも腕なんか組んじゃって。」
「あぁ、あれは色々あったんですよ。」
「なによいろいろって?」
「笠原ちゃんが帰宅途中、誰かにつけられてるって気がして、僕に電話してきたんですよ。だから、笠原ちゃんの家まで送ってあげただけですよ?」
八重樫はその話を聞いてオフィスの窓に写った夕日のように顔を赤らめ、
「えぇ、、、じゃああんたたち付き合ってたとかそういうわけじゃ、、、」
「だから全然そんなことないって言ったじゃないですか?」
ここに来てようやく自分が勝手に勘違いして、拗ねていたことに気づいてしまった。
八重樫は顔を伏せ、恥ずかしさを隠した。
その後もう1杯ずつ酒を呑み、帰ることにした。
帰り道の途中、八重樫が彰に、
「ちょっと公園寄ってもいいかしら?」
と尋ね、彰は快く承諾した。
以前の打ち上げ以来に神田駅の近くの公園に来た。
薄暗い公園の中で、八重樫は先にベンチに座る。
彰はなぜかわからないがベンチに腰をかけず、八重樫の正面に立っている。
少し、雑談をしたところで、八重樫は正面に立っている彰に対して、
「あの、、山城君。昨日断っちゃったけど、やっぱり私も花火大会行きたい。」
と、上目遣いで唐突に言った。
彰は少し照れながら、
「いいっすよ。一緒に行きましょう。」
と伝えた。
八重樫はうれしそうな表情を浮かべ彰に微笑んだ。
そして二人はアパートまで一緒に歩き、それぞれの部屋へと帰っていくのであった。
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