19話 ハートビート

部屋に帰った八重樫。


部屋に入った途端、彼女はようやくホッとすることができた。

はぁ、と一息おいて、今日一日を思い返す。


そんなことをしていると八重樫の顔周りは熱くなっていき、彼女の頭の中は山城彰に支配されていくのであった。


彰は私のことをどう思っているのか、なぜ私は出かける前から彰のアパートまで向かえに行ってしまったのか、カラオケに誘って良かったのか、あんなに強くビンタして嫌われちゃったんじゃないか、私は彰に何か期待しているのか、


そして、、、



「私は彰のことが好きなのか?」



頭の中がモヤモヤしたので、冷蔵庫の中に入っていた缶ビールを一本飲み干した。

そして、頭を冷やすために、ベランダに出る。


ベランダに出て、2つ下の階に住む彰が気になって目線を少し下に向ける。

頭を冷やすために外に出たはずだったのに。

下から煙草の煙がうっすらと流れていくのが八重樫の視界に写る。

彰のことから一旦離れるために外に出たはずだったのに...

結局彼女の脳内は、彰のことから離れることができなかった。


この心のざわめきは恋なのか。


彼女は自問自答を続けながら、シャワーを浴びた後に布団に包まりながらスマホをいじり続け、気づかないうちに寝落ちしたのであった。


朝、日曜日ということもあり、八重樫が目を覚ましたのは9:30だった。

スマホを手に持つと、通知が2件入っていることが目に入った。

通知の主は彰だった。


山城彰:昨日は焼き肉ごちそうさまでした!あと、カラオケも楽しかったです!

    八重樫さん歌めっちゃ上手だったんでまた聞きたいです!


山城彰:あと、カラオケでの件、本当にすいませんでした。少し調子に乗りすぎて

    しまいました。ビンタされたのはむしろ僕が悪いので全然気にしないでく

    ださい。気にくわないならもう一発でも二発でも殴ってください。


と、八重樫が寝落ちしたあとメッセージが送られてきていた。

八重樫は慌てて返事を返す。


八重樫:昨日はこちらこそありがとう。久しぶりに楽しかったわ。

    カラオケボックスでのことは全然気にしてないわ。少しびっくり

    しちゃって反射的にやっちゃったことなの。だから、山城君はそんな気に

    しなくていいわよ。むしろ、私こそごめんなさい。今度また都合が合う

    ときは私に付き合ってちょうだい。来週からはゲーム作りのほうも

    頑張っていきましょディレクターさん!(笑)


返信をした瞬間に既読がついた。

そして、秒速で返信が彰からの返信が返ってくる。


山城彰:あぁ~...よかったです(涙)。

    八重樫さん返信なかったから怒ってるのかと思ってました...(笑)。


八重樫:安心して。そんなことで私は怒らないわ(笑)。


彰からスタンプが送られ、メッセージでのやりとりは終わった。


「もう、バカ... ちょっとくらい気づいてくれればいいのに...」


八重樫は、ぽろっと独り言をこぼした。 


結局せっかくの休日は特になにをするでもなく、だらだらしていたら終わってしまったのであった。


・・・

・・・

・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る