16話 告白
ゲームの制作は順調な滑り出しを見せ、向かえた土曜日である。
そう。6/26(土)は八重樫と焼き肉に行く約束をしていた日だ。
学生時代まであまり冴えていなかった彰は女性と休日に二人で出かけることにあまり慣れていなかったので少し緊張していた。
今日はいつもより身支度に気合いが入る。特に八重樫のことが好きとかそういうわけではないが、張り切って髪の毛をセットしたり、私服を選ぶのに長い時間を割いた。迷いに迷った私服は、灰色の襟付きのシャツに黒いパンツを合わせた。
待ち合わせの時間が近づいたので、部屋の扉を開けた。
すると、八重樫がちょうどインターホンを押そうとするため、ドアの前に立っていたのである。八重樫は彰と目が合うと、すぐに顔を赤くし、慌てながら口を開いた。
「お、お、おはよ山城君... どうせ同じアパートに住んでるから向かえに来てやっただけよ。か、勘違いしないでよね。」
八重樫美咲はかなりテンパっている。
「おはようございます八重樫さん!僕も今日は楽しみにしてましたよ!」
と、満面の笑みで八重樫に答えた。
満面の笑みのつもりだったが、八重樫を少しかわいいと思ったことからその笑みはニヤニヤへと変わってしまった。
「まぁいいわ。ニヤニヤしてないで早く行くわよ。」
八重樫がいつもの調子を取り戻したところで、二人は焼き肉屋へ行った。
お店のチョイスは八重樫である。
店内に入ると、高級な雰囲気に彰の背筋は伸びきっていた。
店員さんに個室に案内され、二人は席に座った。
「八重樫さん、ここめっちゃ高そうですけどいいんですか?」
「ランチは割と安いのよここ。」
「そうなんですね。」
とりあえずメニューを開き注文するものを決める。
メニューを決め、店員を呼び注文する。
「私はハラミランチにするわ。飲み物はウーロン茶で。」
「僕も同じで。」
二人とも同じものを注文し、料理が提供されるまで待った。
八重樫を目の前にする彰だが、薄暗い店内で淡い照明に照らされる八重樫は私服を着ているということも相まって、とてつもなく美しく見えた。
「なにそんなにじろじろ見てるのよ?なんか顔についてる?」
「いえ、全然そんなことないですよ。八重樫さんって意外と綺麗だなって思って。」
「あんた失礼ね~(笑)。これでも学生時代はモテたのよ。」
「すいません。意外と、は余計でしたね。」
「それでよろしい。」
八重樫は普段は見せない笑顔で彰に微笑みかける。
注文した料理が届いたので、肉を食べながら会話が続く。
「八重樫さん、ここの肉めっちゃうまいっす!」
「そりゃそうよ。私が選んだ店だもの。」
「さすがっすね。ほんとに今日おごってもらってもいいんですか?」
「もちろん。そのつもりだわ。」
このあとも会話が続いていたが、あるタイミングで彰は八重樫のことを信用しきって、あることを彼女に打ち明けた。
「八重樫さん。一個聞いてもらいたい話があります。」
「どうしたのそんな改まって?」
「実は僕... この前まで、異世界に転生してたんです。」
沈黙が5秒ぐらい続いた後に、
「はぁぁぁぁーーーーー?!?!?!?!?!」
ととんでもないボリュームで八重樫は声を上げてしまった。
・・・
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