15話 スタートライン

夜が明け、朝日が上る。

これは世の常であり本日も同様のことが繰り返される。

カーテンから漏れる光で、今朝は目を覚ました彰。

目覚まし時計は昨日壊してしまったので、スマホのアラームをかけていたが、今日は必要なかったようだ。

スマホの画面を見ると、6:50と表示されていた。

ゆっくりと起き上がり、支度をしていく。


支度を済ませ、いつも通りスマホでニュースを漁る。

特に大きなニュースはなかった。


せっかく早く起き、支度も済ませたことだったので今日は早出出勤することにした。


7:25に部屋を出て駅に向かう。

駅に向かう道中、見慣れた背中が視線に入る。

彰は小走りでその背中を追い、声を掛けた。

「おはようございます八重樫さん。」

「あら、おはよう、山城君。」

そこから二人は一緒に出勤する。

「今日は早出なのね山城君。」

「はい。今日は朝アラームが鳴る前に目が覚めたので。」

「あらそう。そういえば、シナリオライターの件...」

彰は八重樫が最後まで話し終わる前に話し始めた。

「そうなんですよ!!!聞いてくださいよ!」

「わ、わかったわ、少し落ち着いて...」

「昨日言ってた作家さんから返信が来たんですけど、その作家さん実は、うちの会社でシナリオライターやってる高梨君だったんですよ!」

「あら、それは驚いたわね。」

「はい、まさかでした。」

「でも、うちにとっては都合が良かったんじゃない?」

「というとどういうことですか?」

「その作家さんがうちの社員だったってことは、今回のゲームは全部うちの会社のメンバーだけで作ることができるってことよ。もし今回の企画が成功すれば、これはKEPT社にとってはいい宣伝機会になるにちがいないわ。」

「げっ、責任が...」

「なによあんた。ヘタレね。私が一緒にやる以上失敗は許さないわ。」

八重樫はやはり頼もしい。彰は徐々に八重樫を信頼していくようになった。

そうこう会話を続けているとあっという間にオフィスに到着した。

「それじゃ今日もお互い頑張りましょ。」

「そうですね。頑張りましょう。」

それぞれデスクに着き朝礼の始まる9:00まで各自の仕事に取り組む。


9:00になり、全体での朝礼が終わった後に、新作ゲームプロジェクトのメンバーで軽くミーティングを行った。


そして彰は昨日まで考えていたメンバーの人事を発表した。

その発表になにも思わないものもいれば、驚くものもいた。


「シナリオのところだが、そこは明日発表します。とりあえず、この前の企画大会の時の企画書をもう一度読んでその上で変更した方がいいと思われる点があれば企画書に直接書き込んで今日の退勤までに僕に渡してください。それでは解散、各自仕事に取り組んでください。」


「さてと... 高梨君、ちょっと僕と一緒に会議室に来てもらっていいかな?」

「は、はい。」

緊張した趣で高梨は返事し、二人は会議室へ入っていった。


「高梨君。いや、みみっく先生。このたびは新作ゲームの企画に興味を持ってくださりありがとうございます。」

「いや、山城さんやめてください~。普通に高梨でいいですよ。先生だなんておこがましいです。」

「そうか、じゃあ高梨君。とりあえず僕の書いた企画書を読んでもらってもいいかな?」

「はい、わかりました。」

高梨は彰の企画書に目を通し始める。

・・・

5分くらい経った後に高梨は口を開いた。

「なるほど。僕に依頼してくれた理由がなんとなくわかった気がします。」


高梨がネットに投稿していた小説は書籍化こそされていなかったものの、ネット小説界隈ではかなりの人気を誇っていた。知名度もあり、今回のゲームのテーマともマッチしている。今回の企画には最適であると彰は思っている。その旨を伝えた上で、依頼を受けてもらえるのか高梨に彰は問う。


「異世界系は得意なジャンルでもありますし、僕でいいなら是非やらしてもらいたいと思います。」と、高梨は快く引き受けてくれた。


「ありがとう高梨君。一応僕も企画している身だから、シナリオに関しては二人で一緒にいいもの作り上げて行こう。」

「はい。頑張りましょう。これからよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく。」


高梨が彰のオファーを快諾し、会議室から出た。


とりあえず、シナリオライターが決まったことを八重樫だけに伝えに行った。


これでようやく彰の(自伝)異世界転生ゲームの制作が一歩を踏み出したのであった。


・・・

・・・

・・・




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