14話 眠った才能
オフィスに戻った二人は、それぞれのデスクに座る。
DMの返信を待ちながら仕事に励む彰。
時計の針は進み続けるが、返信は一向に来ない。
その日は返信が来ることなく退勤の時間を向かえた。
仕事を一通り済ませた彰は挨拶を済ませオフィスを出る。
同じアパートに住む八重樫も、彰と同じタイミングで退勤する。
「お疲れ山城君。さっき言ってた作家さんからの返信は来た?」
「お疲れ様です。まだなんですよね~」
「そっか~、早く返信来るといいわね。」
「そうですね。」
雑談をしていると、すぐに駅に着き改札をくぐったが、残念ながら電車の扉は彼らの目の前で閉まり、走り去って行った。
「あぁー、電車行っちゃいましたね...」
「そうね、まぁちょっとくらい待ちましょ。」
「急ですけど、八重樫さんってなんでゲーム制作の道を選んだんですか?」
「ほんとに急ね。私、昔からゲームが大好きだったのよ。そもそも、人と絡むのがあんまり得意じゃなくて、一人でゲームやってること多かったのよ。それで好きになったの。ゲームをしているときは、嫌なこと忘れて没頭できた。だからそんな風に、誰かを没頭させて、助けるは言い過ぎかもしれないけど、楽しんでもらえるものが作りたいって思うようになったの。」
「そうだったんですね。」
八重樫の過去話をしているとすぐに電車が来た。
電車に乗ってからいうもの、八重樫はスマホに目を向け、黙り込んでいる。
そのため、会話が生まれないまま、電車を降りることになった。
電車を降り、同じアパートへ歩いていく二人。
アパートへ着くと、昨日同様、エレベーターで別れを告げた。
「お疲れ様です。」
「お疲れ。また明日ね。」
そして二人は部屋に消えていく。
彰は部屋に入ると、晩飯の準備を始める。
冷蔵庫を開くと中には卵、青ネギ、ソーセージしか入っていなかった。
あとは冷凍庫にあるご飯だ。
「今日はチャーハン作るか...」
といって冷凍ご飯を電子レンジにかけ、フライパンを取り出す。
ご飯を解凍したところで、フライパンを加熱し、卵を落とし、そこにすぐに解凍したご飯を入れかき混ぜる。
そうしたら、切ったソーセージを入れ炒めていく。
次に塩こしょうを適量入れ、鍋肌に醤油を垂らす。
最後に青ネギを投入。
これで彰の特製チャーハンが完成。
お皿に盛り付け、スプーンで食べていく。
チャーハンを食べているとスマホから通知音が聞こえた。
返信を待つ彰はすぐにスマホを確認する。
画面を見るとみみっく先生からの返信であることがわかった。
すぐにロックを解除し、返信の内容を読む。
山城様:このたびはみみっくにオファーしていただきありがとうございます。とても言いにくいことではありますが、実は私の本名は高梨 渡と言いまして、KEPT社新卒3年目で、ついこの間まで作っていたゲームのシナリオを書かせていただいておりました。ネット小説は副業として細々と活動していた次第でございます。新作ゲームの制作に携われること、本当にうれしく思います。詳しいことは明日、会社でお話しできればと思います。よろしくお願いいたします。
と書いてある。
まさかすぎて、正直手が震えた。
そして、一つの疑問が同時に解消された。
それはDMを送ったときのことであった。
送信したタイミングで、後ろの席から通知音が聞こえたのであった。
この返信が来るまではただの偶然だとしか思っていなかったが、この事実を知った今、あの通知は偶然なんかではなく運命的なものだったということに気づいた。
一人興奮した様子でいる彰だが、ひとまず返信することにした。
みみっく様:このたびは、依頼を受けていただきありがとうございます。みみっく先生が高梨さんであったことには驚きを隠せません。詳しい話は明日オフィスでしましょう。よろしくお願いいたします。
その後、ベランダに出て煙草を吸った後に、シャワーを浴びた。
同じ会社に、これだけ才能に満ちあふれた若手が何人もいることがとてもうれしくなり、同時に今回の企画を絶対に成功させたいという思いがとても強くなった。
彰は興奮は覚めやらぬまま、ベッドに寝転がり眠った。
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