13話 シナリオライター
候補に挙げた作家さんに電話で連絡し、オファーしていく彰。
今のところ6戦6敗。
基本的にどの作家さんも、今連載している作品に追われているらしく、期間の決められたゲームのシナリオ制作をしている余裕がないとのことだった。
頭を悩ませながら、煙草をくわえながら喫煙室に入っていく。
彰は煙草を吸いながら必死に頭を回転させる。
いつもの如く、煙草を吸うと頭がとても冴える彰。
喫煙室で彼は一つの案を思いつく。
それは、ネットに異世界系の小説を投稿している有名な作家にお願いすることだった。これならいけると思った彰は気分よさげに喫煙室を出る。
そこでバッタリと八重樫と出会い、
「あんた気分良さそうね、人事も決まったのかしら?」
「はい!人事はほとんど決まって、シナリオライターも目星がつきました。」
「あらそう、じゃあその先生に書いてもらえるといいわね。」
「はい!」
会話をしていると、八重樫が自販機から缶コーヒーを取り出し、彰に下から投げて渡した。
「これ、この前助けてくれた分のお礼。これだけじゃ足りないから今度焼き肉でもおごらせて。」
「え、いいんすか?楽しみにしときます。」
そういって、二人はそれぞれのデスクに戻った。
・・・
・・・
彰は自分が過去に読んでいたネット小説の作家を片っ端から漁り、当時一番お気に入りだった作品の作家のTwitterを見つけ出した。
すぐさまDMを送り、オファーを送った。
みみっく様:株式会社KEPTの新作ゲームプロジェクトのディレクターをさせていただいております山城彰と申します。以前、みみっく様の作品を読ませていただいておりました。みみっく様の書くストーリーの展開、情景、心情の描写の描き方、その他諸々、感銘を受けたことは今でも忘れません。このたび、みみっく様に我が社で作る新作ゲームのシナリオを担当していただきたく、ご連絡させていただきました。もしよろしければ、こちらの電話番号にお電話していただけますと幸いです。
090-××××-○○○○。
「これで送信っと...」
DMを送り、あとは返事を待つだけとなった。
そんなこんなで昼休憩の時間が来たので、今日は外食に行くことにした。
本田も、松田さんも今日はなにかと忙しそうにしていたので一人で行こうとしたが、オフィスの入り口で、八重樫に誘われ、一緒に行くことにした。
オフィスから近いということもあり、入社当初からよく通っているそば屋に行くことにした。
店に入り、テーブル席に案内される二人。おいてあった2つのコップに水を注ぎ、1つは八重樫に渡す。
八重樫はメニューを見るのに必死になっているが、彰は天ぷらそば一択なので、メニューを見る必要がなかった。
「山城君は決まってるの?」
「はい、僕は天ぷらそばで。」
「えー、じゃあ私はとろろそばにするわ。」
店員をすぐに呼んで注文する。
「山城君はここよく来るの?」
「はい、入社してから割ときてました。」
「そうなのね。そういえば、人事のほうはどんな感じにしたの?」
唐突に八重樫から聞かれたので、スマホの中のメモに残していた情報を八重樫に見せた。
「私じゃこのメンバーを選ばなかったわ。全然悪くないと思うわ。むしろ、面白そうなメンバーになったわね。わくわくしてきた。山城君、期待してるわ。でも、プロデューサーほんとにあんたがやらなくていいの?」
「プロデューサーは八重樫さんに任せます。もちろん今回の企画は自分のものが採用されてますけど、僕にはまだ全体を見る力が足りないので。」
「あらそう、ならいいんだけど。いいもの作れるように頑張りましょう。」
「もちろんです!」
そうこう会話を続けていると、そばが二つテーブルに届いた。
「じゃあ食べましょう。」
「いただきます。」
二人は麺をすすり、そばを食べる。
そばを食べている最中は終始無言だった。
「あ~うまかったー」
「おいしかったわね。また行こうかしら。」
そばは安定していつも通りおいしかったようで、二人は満足していた。
会計を済ませ、会社に戻る道中、彰が口を開く。
「そういえば八重樫さん、さっき喫煙所から出てきたとき焼き肉おごってくれるって言ってましたよね?ほんとにいいんですか?」
「もちろんいいわよ。いつなら都合つくかしら?」
「僕はいつでも大丈夫ですよ。」
「なら6/26の土曜日の夜はどうかしら?」
「大丈夫です。その日行きましょう!」
二人は6/26に焼き肉に行く予定を立て、オフィス内に戻っていくのであった。
・・・
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