10話 帰宅
・・・
店を出てお開きにすることになった、KEPT社のプロジェクトメンバーたち。
店の外で軽く雑談していると、電車の方面が同じ人同士で家まで帰るということになった。
そこで彰は新たなことを知ることとなる。
八重樫美咲は自分と同じ駅である神田に住んでいることが発覚した。
そして、神田に住んでいるのは彰と八重樫だけであるという事実も知ることとなる。
本田が、「じゃあ今日はお開きにしましょっか!」
といって、それぞれ駅に向かって歩いて行く。
彰と八重樫も並んで駅へ歩みを進める。
八重樫はかなり酔っていて、ふらふらしている。
歩き始め、二人きりになってから、終始無言が続いていたので彰から口を開く。
「八重樫さん大丈夫ですか?」
「山城く~っん、まっすぐあるけな~い(笑)」
「しっかりしてください、手貸しましょうか?」
すると八重樫は彰の手を握り、彼の右腕にでもたれかかった。
「山城く~ん、家まで送っていってくれないかしら?」
上目遣いで八重樫は彰に甘え出す。それはまたかわいい。
彰は頬を少し赤らめながら、
「いいっすよ。とりあえず電車乗りましょう。」
手を引っ張り、数分歩いて改札をくぐり、電車に乗った。
電車内ではさすがに恥ずかしかったので、八重樫の手をそっと離し、おとなしく座った。
有楽町から神田までは5分ほどしかかからないので、すぐに着いた。
「次は神田」というアナウンスが流れたので右に座る八重樫に目線を移すと八重樫は目を閉じて下を向いていた。
「八重樫さん、もう着きますよ。」
「...あぁもう着くのか。」
目をこすりながら八重樫はそう言う。
そして電車を降り、立て続けに、
「山城君、ちょっと近くの公園で休んでいかない?」
と尋ねてきたので彰は、
「あっ、僕は全然いいですよ。」
とだけ答え、公園に向かう。
公園に着くと二人はベンチに腰を掛ける。
「八重樫さん、ちょっとここで待っててください。」
「どこ行くの?」
彰は公園内の自販機に向かって走り、水を2本買って八重樫の元へ戻る。
「はい、これ。」
「ありがとう山城君。」
八重樫は先ほどよりは酔いが醒めつつあった。
「あ、あの...さっきのは、その...」
八重樫は顔を赤くしながら彰に話しかける。
「酔ってたからしょうがないっすよ。だから全然気にしてないっす。酔ってた八重樫さんちょっとかわいかったですよ。」
かわいかったですよなんて言ってしまったせいで、お互い顔が熱くなる。
「あっ、あの別にそういう意味じゃ...」
「あんた恥ずかしいこと言わないでよ...でもありがと...」
「とりあえずお互い水飲みましょう。」
それでどうにか八重樫を躱した。
なんなんだあの八重樫美咲という女は。
普段は気難しくて、近寄りがたいオーラーをプンプンに放っているくせに、酒呑んで酔っ払った時はあんなにデレデレして。
そのギャップにやられた彰は、自分の記憶の中では出会って初日なのにもかかわらず心の中で八重樫をかわいいと思うようになていた。
その後、彰と八重樫は会社でのことや、世間話を続けた。
きりが良くなったタイミングで彰が、
「八重樫さん、そろそろ家まで送りましょうか?」
「じゃあそうさせてもらうわ。」
「八重樫さんってどこらへんに住んでましたっけ?」
「あんた何言ってるの?」
「え?」
「私あんたと同じアパートの住人よ。なにとぼけたこと言ってるの?」
驚きすぎた彰は大きな声で、
「はーーーーー?!とぼけてるのはそっちじゃないっすか?」
と言ってしまう。
「いや、私が4階で、あんたが2階でしょ?」
とりあえずその場をやり過ごすために、
「あっ、そうでしたね...」
と答えておく。
ということで、アパートまで一緒に帰り、エレベーターに乗り、各自の階で降りそれぞれの部屋へ帰っていった。
・・・
・・・
「それにしても今日は怒濤の一日だったな...」
痴漢から始まり、八重樫さんが同じアパートに住んでいることを知り終わった一日。
今日あったことを彰はベッドの上に寝転がりながら回想し、そのまま目を閉じ眠りについた。
・・・
・・・
・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます