8話 企画大会②
昼休憩が開け、彰の所属するプロジェクトチームは企画大会を再開する。
徐々に自分の順番が近づいてくる彰は少しずつ顔がこわばっていく。
というのも、彰は人前で話すことがあまり得意でない。
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そして、一人、また一人とプレゼンを終えていき、とうとう彰の番が回ってきた。
「じゃあ山城君、次だから準備してね」
八重樫にそう言われ慌てて席を立ち、プレゼンの準備をする。
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準備を終え、彰はメンバーに企画書を配布する。
「では、プレゼン始めさせてもらいます。」
口を開いた彰は企画書の内容をスライドに合わせ読んでいく。
「今回、僕が企画したゲームは、異世界転生アクションゲームです。このゲームのターゲット層は主に10代~20代の若者です。近年ライトノベル界で若者を中心に流行している異世界転生をテーマにゲームを作りたいと考えました。このゲームはオープンワールドで自由度が高い、一人称アクションゲームにしたいと思っており、その上で、シナリオにも注力し、ストーリーに基づいて、プレーヤーにゲームを進行してもらうゲームにしたいと思っています。1人称のゲームにすることで、プレーヤーには、自分自身が実際に異世界転生した気分を味わってもらいたいと考えました。また、ルートを2つから3つ用意し、プレーヤーの選択によって、ストーリーの結末が変わる、ノベルゲーの要素をアクションゲームに取り入れてみたいと思います。では、ゲームの詳細について、もう少し、深く話していきます。」
そう言うと、ゲームの細かい設定、キャラクター、操作性、使用できるキャラの技を事細かく解説していった。
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「使用できるキャラの技なのですが、基本はストーリーを進行することで獲得できるポイントで解放していける仕様になっています。また、ストーリーのなかで自然と覚えるような技も用意しておきます。例えば、この企画書に載っている例で言いますと、ライトニング・セイバーですね。これはストーリーを進行していくなかで、自然解放される技になります。」
使用できるキャラの技を紹介しているときだった。
八重樫が彰を見つめニヤニヤとし始めた。
彰は最初、八重樫がなぜそこまでニヤニヤしていたのかわからなかった。
だが、話を続けると、朝の出来事を思い出してきてしまった。
恥ずかしくなった彰はすぐさま技紹介を飛ばし、今回の企画プレゼンのまとめに入
り、1分も経たないうちにプレゼンを終了させた。
プレゼンが終わると、八重樫が
「お疲れ、山城君。とてもいい企画だったと思うわ。」
と彰に伝えた。
そして、「よし、じゃあ私が最後にやるわね。」
そう言ってプレゼンの準備を手際よく終わらせ、話し始めた。
八重樫の企画はやはり群を抜いてすごいと感じさせられるものであった。
テーマ、コンセプト、世界観、ストーリー、キャラクターのすべてがしっかりと定まっており、アイデアとしては、すでに商品化できるレベルのものであった。
八重樫は淡々とプレゼンを続け、持ち時間の30分をフルに使い企画書の細部まで説明していった。
企画書の完成度の高さ、八重樫のプレゼンがうまいこともあり、そしてなにより、このゲームを作ってプレイしてみたいと興奮を煽られたということもあり、30分のプレゼンは体感5分くらいに感じた。
八重樫のプレゼンの余韻に浸っていた彰だったが、八重樫はすぐに投票用紙を配り説明を始める。
「みんな、お疲れ様。これから少し投票について説明するわね。まず、この投票用紙には自分の名前を書かないで出して。名前を書くことで、後輩社員が先輩社員に気を遣って票を入れるっていうことをなくすためにそうするわ。自分の企画に対して票を入れることは今回は禁止させて。そして、この用紙には、今日聞いたプレゼンの1位と、2位をみんなに選んでほしいの。1位には3ポイント、2位には1ポイント入り、その合計ポイント数で今回のプロジェクトの企画を採用することにするわ。何か疑問はある?なければその投票用紙を記入して、この箱の中にいれてちょうだい。」
八重樫が話し終わると、メンバーは各々投票用紙を記入し、次々に箱の中へと入れていく。
彰については、1位八重樫、2位笠原と記入し箱へと紙を投じたのであった。
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