6話 企画大会①

9:50になった。

予定通り、八重樫はプロジェクトメンバーを集めプレゼンの順番を発表していく。

「えぇーと、時間になったから発表するわね。」

「1番、笠原ちゃん。」

「あら~、私1番最初か~」

「2番、本田君。」

「やばい、笠原ちゃんのあとだけは嫌だったのに...」

このように次々順番が発表されていくわけだが、彰の名前は未だ呼ばれない。

そろそろ最後に近づいてきていたがようやく名前が呼ばれる。

「8番、山城君。」

8番は最後から2番目である。

この時点で最後は八重樫ということが確定した。

「最後は、私っということで。」

「じゃあ順番は今発表したとおりで、10:00から始めるわね。」

「笠原ちゃんは準備して10:00からすぐに始められるようにしておいてね。」

「りょーかいです~」

のほほんとした声で笠原という女の子は答えた。

・・・

・・・

「10:00になったか始めるわね。笠原ちゃんよろしく。」

「はい~」

こうして会社の命運をかけた企画大会は笠原のプレゼンによって幕を開けた。

「では、始めさせていただきま~す。」

そう言うと笠原は全員に対し、印刷された企画書を配る。

その企画書に目を通すと、

:企画 探索+都市開発 in 月

笠原はこの企画について話し始める。

話を要約すると以下のようになる。

・主人公一行はロケットで月に行き、探索をするミッションを国から与えられる。

・月で植物が育っている場所を見つけ出し、月に生命が存在することを発見する。

・探索を続け、生存可能範囲を広げ、月で都市を開発していくゲーム。

・探索をしている際に、エイリアンのような地球外生命体と遭遇する。

・バトル要素あり。

・エイリアンの侵略を防ぎつつ、都市を開発することがこのゲームのミソ。

ざっくり言うとこのようなゲームであった。

彰は、企画の内容にはそこまで引き込まれなかったものの、そのプレゼンの中で使われていた絵がとても印象に残っていた。

彼女がプレゼン中に用いていた絵の背景、キャラのデザインはどことなく可能性に満ちあふれているものだと感じた。

こうして30分ほどの一人目のプレゼンが終わった。

次のプレゼンターである本田の方に目を向けるとポカンとした顔をしながらスクリーンを眺めたままだった。

本田 恭介きょうすけ、彼と彰は同期で入社し、いつも昼ご飯を一緒に食べていて、互いに仕事の愚痴を言い合えるほどの仲である。本田は根っからのいいやつではあるが、かなりのアホである。ただ、クリエイターとしての才能はピカイチで、今までのゲームではグラフィックを担当してきていた。彼が企画をするのは今回が初めてだ。そんな彼のプレゼンの順番が回ってきた。

「えーっと。じゃあ僕のプレゼン始めさせてもらいまーす。」

本田が笠原と同様に、企画書を配り話し始める。

本田の企画はやはりアホだった。

:企画 大好きなあの子のストーカーになろう!

・成人男性向けゲーム

・好きなヒロインに対してストーカー行為を行えるオープンワールドゲーム。

・痴漢もできます!!

このようなことを話し続ける本田。

今朝、彰と八重樫に何があったのか知らない本田は平然とした顔で話し続ける。

これ以上このアホに話し続けさせるのも気が引けると思ったので、止めさせようと思ったら、先に八重樫が本田のプレゼンを中断させた。

「あんたはやっぱりアホね。会社の命運がかかった企画でよくこんなもの持ってきたわね。もう続けなくていいわ。次に行くから次の人は準備して。」

本田は八重樫の逆鱗に触れてしまった。

本田はなぜ怒られたのかわからず、首をかしげていた。

その光景を見た彰は顔を手で隠し、「あいつやっちゃったな~」といった表情を浮かべる。

こうして次々にプレゼンが行われていき、12:00になったタイミングで昼休憩を挟むことになった。

・・・

・・・

・・・



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