2話 煙草

依然、スマホはバイブレーションとともに鳴り続いている。

彰は意を決して電話に出た。

「もしも...」

「あんた今なにしてるの?」

八重樫美咲は俺の声にかぶせるように話しかけてくる。

「先週ミーティングで話していた企画書のことなんだけど、その後どう?

なんかいい案でた?」

彰は慌ててノートパソコンを開き、先週の会議の資料に目を通す。

「あぁ...ごめん、もうちょっと時間ほしい...」

「あらそう、明日までには用意しておいてよね。わかった?」

「は、はい...」

八重樫がそれだけ伝えるや否や、電話はすぐに切れた。

電話が切れた後、彰はもう一度すべての資料に目を通し、なにをしなければならないのか確認した。

「明日までにすることは...企画書の作成?!」

「やばい、時間がない。」

先ほどまでグダグダしていたこともあり、現在の時刻はすでに17:00を回っていた。

彰は慌ててPCのWordを開き、アイデアを練る。

・・・

・・・

一時間が経過したが、PCの画面に表示されているのは、「新作ゲーム企画書」という言葉だけであった。

「こりゃまずいな...」

考えても、考えても、アイデアは思い浮かばない。

すると彰は一旦席を立ち、煙草をくわえベランダへ出た。

「ふぅ~」

久しぶりに煙草を吹かす彰。

彰はいままでも、企画を考えるのに詰まった時にはいつも、ベランダで煙草を吸いながらリフレッシュをしていた。

「なんかねぇーかな?」

くわえた煙草がどんどん短くなるのを見ながら、3年前のあのときに刺されて、命が燃えていく感覚を思い出し、ふと一つのアイデアが思い浮かんだ。

「おいちょっと待てよ、俺が異世界で体験したことをそのままゲームにしたらいいんじゃないか?!」

思い立ったらすぐに行動するのが彰である。

すぐに煙草の火を消し、PCの前に座り、企画書を書き始める。

夢中になりながら、記憶をたどり、画面上にどんどん書き上げていく。

気づけば日付をまたぎ、深夜の1:00になっていた。

「やっと終わった...」

そして、企画書を書き終えた彰はベッドで倒れ込むように寝るのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る