第12話

 矢を放った。

 それは、天へ上り龍になった。

 その力は圧倒的で、空を凌駕する程の光量。


 でも、沼は哀しんでいた。

 子は親に逆らう。

 また、別の世界を見ている。


 龍は時に死ぬ。

 それは、腐る事のない肉体。

 肉体は誰にも知られず、そこに有り続ける。


 誰にも助けられずに。

 誰にも見られる事もなく。

 また、無い物として。


 自転車に乗った少年は笑った。

 そんな夢のような世界に踏み入る事が出来ると。


 風は野原を撫でた。

 雪が舞い、視界が濁る。

 ただ、有る事を主張する結晶達。


 そうかい。そうかい。

 辛かったね。

 陽は苦く笑う。


 そうかい。そうかい。

 で、何が言いたい?

 陰は清く笑う。


 そうかい。そうかい。

 そんな事は気にするな。

 風は軽く笑う。


 そうかい。そうかい。

 悲しかったね。

 水は白く笑う。


 そうかい。そうかい。

 笑う。


 そうかい。そうかい。

 笑う。


 そうかい。そうかい。

 笑う。


 私は薄く笑った。


 自分は自分で、守らないと。

 全てを疑って痛がって。


 怖い事から目を背け。

 生きていかなければいけない。


 ただ、寂しい。


 寂しい。


 寂しいんだ。

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生焼け海鵜 @gazou_umiu

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