第5話

 拍手喝采の劇場に俺は居た。


 黒い影は立ち上がり、皆エンドロールに拍手を捧げている。

 また見たいと言わんばかりに、がむしゃらに。


 気づけば頭を抱えている。


 絶望を喰らい、また幸せに溺れる。


 噛み締めた味は、苦く甘く不味いし美味い。


 喉は飲み込まんばかりに嗚咽を繰り返す。


 喉を通る。無理やり押し込む。


 拍手が一層、強くなった。


 スクリーンにが俺が映っている。

 苦しみもがく、その姿は。


 口を抑える。


 手には赤黒い血と真っ赤な血が混在している。


 吐血?


 拍手は大きくなる。

 指笛を鳴らし、歓迎しているようにも見える。


 声が出ない。


 スクリーンの俺は立ち上がる。


 不気味な顔だ。


 どんどん黒く染まっていく。


 影の住民に化す自分。


 笑い声が聞こえた。

 女性の声だ。


 誘っているように、手を伸ばす。


 違う。


 違う違う違う。


 違う?



 女性は淡く光るリングを身に着け、ゆっくりと歩み寄る。


 一瞬、見えた。


 女性、光り輝く女性が黒い骸骨に。


 ようこそ、拍手喝采の未来へ。

 さよなら、楽しかった日々達。


 拍手と共に声がした。

 冷えた笑いだ。


 ようこそ、拍手喝采の未来へ。

 ようこそ、拍手喝采の未来へ。

 拍手喝采の未来へ。おいで。

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