第4話
笑う笑う笑う。
明日が無いと言うのに。
笑う笑う笑う。
絶望を知ってしまったと言うのに。
笑う笑う笑う。
死んでしまうというのに。
俺は、強く手を握った。
「また、会おうね。天国でも地獄でも。何時間だって、何年だって。待ってるから」
時として、数時間前。
デートをしていた。
光が見えた。
二つの大きな光だ。
それは、音と共にやってくる。
ここは、何処だ?
ベットに彼女が寝転んでいる。
脳を損傷していると、医者は言った。
時間も無いと言う。
彼女の手は温かい。
でも、その動きは前の彼女とはまるで別物であった。
俺を守ってくれた存在は、もうとろ火に成っている。
そうだ。
俺は。
「ねぇ、ぼっくん? 私、目が見えないんだ。で、でも真っ白の視界の中にぼっくんが居るんだ。一緒に手を繋いで笑ってる」
「音も聞こえないんだ。でも、ぼっくんの寝息だけが響いて、ただただ安心するんだ。私幸せだね」
「幸せ者だ。私。この時が永遠に続けばいいのに」
彼女は喋り続けた。
錯乱した意識の中で。
幸せだと。
幸せだと。
何度も何度も呟いて。
幸せ?
「幸せなんだ。私」
「ぼっくん?」
俺は、頬を撫でた。
肌に沿って、首元まで。
「幸せなのか? 雪」
「うん! 幸せ」
「あ、ぼっくんどこ行っちゃうの? うん、、、分かった。また、会おうね。一人でも天国でも地獄でも。何時間だって、何年だって。待ってるから。絶対、会いに来てね。私は幸せ者だから」
俺は、手を握った。
汽笛が鳴った。
汽車は歩みを進めた。
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