第2話 賢斗、中学1年生
兄ちゃんが第1回東京マラソンのランナーに当選したのにインフルエンザにかかって出場できなかった、2007年。
学校帰り、クラスで1番かわいい
「門倉、マジかわいい。超好みだわー」
「やだ、ジロジロ見ないでよ」
「なんで? こんなかわいいのに」
「もー、桜井って誰にでもそういうこと言ってそう」
「俺、ウソつけないんだよね。かわいい子にしかかわいいって言えない」
「も……もおー……」
マジに照れてポカポカ腕をたたいてくる。あー、かわいい。
「そんなことばっか言ってないで塾とか行ったら? 成績ヤバいんでしょ」
「そんなの関係ねえ! そんなの関係ねえ!」
立ち上がって渾身の流行りのギャグに、門倉が手を叩いて爆笑する。
「めっちゃキレッキレ」
「本家越えを目指してるからね」
「桜井ってそういうとこもモテる理由なんだろうなー」
「俺モテないよー。門倉が俺のことモテさせてー」
「もー、ウソばっかりー」
「ほんとだよ?」
座り直すついでに門倉にぴったりくっついてベンチに置かれた手を握る。
「え? ちょ……」
真っ赤になってあわてる門倉がマジかわいい。
「門倉。こっち向いて」
「え……」
俺も初めてだから緊張する。でも、これはチャンス!
ゆっくりと門倉に顔を寄せていく。門倉が目をつぶった。
「どこで落としたか見当くらいつかねえのかよ! すかしてるくせに抜けてんだから!
「分かってたら拾いに行ってるに決まってるでしょう。もうすぐ門限だから、
懐かしい声に、思わず門倉の存在を忘れて声の方に振り返った。
「輝! 詩愛羅! なんで?! なんで5年経ってないのにここにいるの?!」
「賢坊! 会いたかった!」
俺の姿を見た輝が走って来て抱きつく。俺も力いっぱい応えた。
「久しぶりね、賢ちゃん」
「おう! 久しぶり!」
「また法整備がされてさ、タイムトラベラーが過去を変えることはないって分かったから、自由に過去に行けるようになったんだ。で、真っ先に会いに来たぜ、親友!」
「よっしゃ! いいヤツ! おまえいいヤツ!」
「たださ、中学生は5時までに元の時代に戻らなきゃならないのに、詩愛羅がスマホ失くして戻れないんだよ」
「だから、輝は先に帰って失くしたことを私の親に報告しておいて」
「詩愛羅はどうするんだよ」
「探すわよ」
「暗くなったら俺ん家泊まるか?」
「えっ」
「そうね、もしも見つからなければ、お願いしようかしら」
うなずき合う俺と詩愛羅の間に割って入った輝が、詩愛羅の手に何か握らせた。
「詩愛羅が帰って自分で報告しろ!」
「えっ……輝!」
フッと、幻のように詩愛羅が消えた。
「うわ! びっくりした!」
「俺、ちょっと探して来るわ」
「詩愛羅のスマホ?」
「うん」
「ふうん。おまえらって、付き合ってんの?」
「ばっ……付き合ってねえよ! ただの幼なじみだ!」
「そ、そうか。そんなムキにならんでも」
気が付いたら門倉はいなくなってた。
俺もスマホを探してみるけど見つけられず、まだ探すからいい、と輝に誘いを断られてひとりで家に帰った。
翌朝、登校時に公園を通ると輝が立っていた。
「おはよ、輝!」
「……はよー……」
「もしかして徹夜で探してたの?」
「おかげで見つけた」
ニヤリと笑ってスマホを俺に手渡す。
「軽! 100年後のスマホってこんな軽いの?!」
「名前はスマホだけど、この時代のスマホとは全くの別物だよ。それがないとタイムトラベルできないんだ。もうすぐ詩愛羅が来ると思うから、それ渡しといて。俺適当に仮眠しとく」
「分かった」
輝と別れ、学校へ向かうと、
「賢ちゃん。輝見てない?」
と制服姿の詩愛羅に声を掛けられた。えらくド派手な制服だが、いつの時代の学校に通っているんだろう。
「これ、輝から」
「あ……輝は?」
「そこら辺で寝るって」
「そこら辺で? ありがとう、賢ちゃん」
あわてた様子で詩愛羅が走って行く。
あのふたり……本当にただの幼なじみか?
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