おまえら、さっさと付き合っちゃえよ!
ミケ ユーリ
第1話 未来人との出会いと別れ
大阪にUSJが開園した2001年。
おれは小学校に入学した。
「今年からタイムトラベラーも一緒に学びます。このクラスには、2101年から
先生に紹介されると、ふたりはペコッと頭を下げた。
未来から来た同級生なんて、興味ある!
おれは休み時間になると、すぐさまふたりに話しかけた。
「おれ
「おれ2095年8月17日」
「あ! おれと同じ誕生日!」
「え? 本当?!」
「ちょうどおれが生まれた100年後の同じ日に生まれてるんだ! すごい!」
キャッキャキャッキャ盛り上がって、すぐにおれと輝は仲良くなった。
小学校に入学して、最初の授業は「時間」だ。
「未来でタイムトラベルが可能になり、現代にもタイムトラベラーがたくさん来ています。そこで学びの多様性を保障するため子供たちが各時代で学ぶように未来の法律が変わり、それに伴って現代の法律も改正されました」
先生が黒板に「みらい」「げんだい」と書いた。
「未来人も、生まれた時代から過去へは行けても未来には行けません。なぜなら、過去はすでに『ある』ものだけれど、未来は『ない』ものだからです。過去は現在の影響を受けません。今先生が赤いチョークを使っても白いチョークを使っても、授業が始まった時には黒板に何も書いていなかった事実は変わりません。でも、どのチョークを使ったかでそれを消す黒板消しが何色に汚れるのかは変わります。未来は今の影響を受けるのです」
「先生の話、むずかしかったね、賢坊」
「おれ呪文かと思った」
「いずれ理解できるようになればいいのよ、賢ちゃん」
「あ、消しゴム忘れてもうた。桜井くん、消しゴム貸してくれへん?」
輝と詩愛羅としゃべっていたら、となりの席の女の子が笑って言った。かわいい笑顔と方言に、胸がドキッとした。
「いいよ。ねえ君、大阪から来たの?」
「いんやあ。お父さんが転勤族っち、あちこちに行っとったい」
「へえ。君、なんて名前?」
「
「わあ、かわいい! もっといろいろ話してよ!」
おれが楽しくなって笑ったら、ゆきはもうれしそうに笑った。
ドラえもんの声優が総入れ替えされた2005年、俺はもうすぐ小学6年生になる。
俺と輝はずーっと同じクラスで、大親友になっていた。
「あ! ゆきは!」
教室に入ってきたゆきはを見つけて、勇気を出して声をかける。
今日こそ言おうと決めていた。
1年で同じクラスになってから、この5年生まで別々だった。6年生になったら、またクラス替えがある。
「どげんかしはったと?」
「ちょっと、こっちに来てくれる?」
ゆきはの手を引っ張って、階段を上がって誰もいないカギのかかったドアの前に連れて行く。
「俺、ゆきはが好きだ。ゆきはは俺のこと、どう思ってる?」
ゆきはのほっぺたが赤くなった。かわいい……。
「うちも、好いとうよ」
「ほんと?! 俺うれしいよ!」
ゆきはと手をつないで教室に戻ると、先生がいた。
「桜井くんと渡辺さんも、寄せ書き書いて」
「寄せ書き?」
「会田くんと星野さんがこの時代で授業を受けるのは5年生までなの」
「え?! なんで?! あと1年で卒業なのに」
「法律で決まってるの。5年ごとに違う時代で学びましょうって」
そんな……こんなに、仲良くなったのに……。
「なんで言ってくれなかったんだよ」
だーだー涙を流しながら輝に詰め寄る。俺の顔を見ると、輝も顔をぐしゃぐしゃにした。
「賢坊だったら、言えたのかよ」
……言えなかったかもしれない。お別れなんて、イヤだ。つらすぎる。
「もう会えないのかよー」
「分かんないよー」
わあああああ、と大声で泣きわめく俺たちの横で、詩愛羅とゆきはも静かに涙を流した。
「違う時代に生きてたって、俺たちは友達だ!」
「うん! どんなに時間が遠く離れてたって、俺たちは友達だー!」
4人で団子になって抱き合って、俺たちは思いっきり泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます