第13話

 見つけた!「隼人!」

隼人は驚いた顔でこちらを見た。

こんな時だが、俺はこいつのこんなに驚愕した顔を見たのは初めてだった。

「なんで戻ってきたんだよ!今すぐここから逃げろ。」

「隼人、お前と一緒なら逃げるよ。」

「俺は未来で待っているって言ったろ。」

「お前は俺を馬鹿だと思ってる?お前と何年ダチやってると思うよ。」

呆気にとられている隼人に、

「お前の嘘なんてバレバレなんだよ。俺の願いを叶えて何度もタイムリープを使った結果、政府に追われてる。

問題はここから、お前は責任を取って装置と一心中する気だろ。」

「何?マジで言ってる?俺が?そんなことする訳ない。ノーベル賞物だぞ。」


 俺には確信があった。

「いや、お前は死を選択するのだろう。

タイムリープで歴史に干渉することは出来ないと言ったよな?隼人。

お前が未来に行くことは歴史に干渉するはずだ。お前のタイムリープの発明が歴史に干渉しない訳ないだろ。

行き場を失ったお前は、一生同じ時の中に閉じ込められる。

そんな事にならないために、お前は自ら死を選ぶ、だろ?

否定するなら、俺も未来に連れてけよ。」


 隼人は床に崩れ落ち、頭を抱えた。俺は駆け寄っていた。

「隼人、お前をとても大事に思っている。二度と大切な人を失うのは嫌なんだ。俺と生きないか?」

隼人は驚いた顔で俺を見た。

「頼む、俺と一緒に生きてくれ。隼人のおかげで、俺は時の傍観者から降りる事ができそうなんだ。もう二度と傍観者へと戻りたくは無い。」


隼人が泣き崩れた、昔から感情を表に出さないヤツだった。いつも飄飄ひょうひょうとしていて、掴所がないと良く言われていた。しかし、俺にはだから、その姿に初めて隼人の本質に触れたような気がした。

「さぁ、隼人指示してくれ、お前の事だきっと別の方法も用意しているだろう?」


落ち着きを取り戻した隼人の行動は迅速だった。

隼人はタイムリープの装置を第三者の悪用から機密を守るために、防犯上の細工をしていた。

ウィルスがPCに送りこまれ、そのウィルスを駆除出来なかった場合、装置は自ら消滅を計るという作りになっていた。

隼人はPCにウィルスを送り込んだ。装置を熟知した隼人の用意したウィルスだ、結果は見えていた。

研究室を出た途端、その部屋はロックされ入れなくなった。

「啓介、逃げるぞ。外までは影響無いと思うが、この装置のある研究室は消失する。そして、跡形も無くなる。」

俺達逃げ遅れた人がいないか声を掛けながら研究所を後にした。

「火事だ!逃げろ!」

俺達は研究所から逃げ出した。

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