第4話 お忍び
ぐぬぬぬぬ、、今度は誰だ??
若干ため息をついて携帯を取りに行き、画面を見ると、怜からだった。
わかりやすくテンションが上がってしまう。
「もしもし、どうした?」
「仕事終わった〜、今日午後空いてる?」
今日の午後か…。幸い何もない。
「うん、空いてるよ」
「良かったあ、一緒に行きたいところがあるの」
な、、、なぬ、、一緒に行きたいところだと!?
どこだ、、どこだ、、いや、とりあえず迎えに行こう。
電話を切った。
怜ちゃんからのお誘い……。嬉しいがすぎるぞ。
俺はお小水つきの雑巾を持っている手を突き上げて、誰もいない部屋の中でガッツポーズをした。
★★★
今日の彼女の仕事は、女性専門誌「pure」の表紙の撮影だ。
撮影は、pureの発行元である大手出版社「大鳳堂」の本社ビル内で行われる。
俺はソワソワしながら車をビルの地下駐車場に停めた。
しかし、薄暗い巨大な地下駐車場では、怜が自分を見つけるのは難しそうだ。
『……上で待つかな』
そう思い、車を出て、エントランスまで階段を上っていった。
エントランスに出てみる。物凄い造りだ。
まるで一流ホテルのような内装だ。
俺は座っても良さそうな場所を探し、腰掛けた。
彼女にメッセージを入れる。
「一階、エントランスの端の椅子に座ってる」
すると、すぐ既読がついて、返事が来た。
「今下りるね」
3分ほど待っていると、遠目に女性2人組が見えた。
2人組が俺の方に近づいてくる。
1人は怜のようだが、もう1人は全く知らない。
身長は170後半はあるだろうか。顔も小さく抜群のルックスだが、下手に気取ってない雰囲気がとても好印象を持てる。
いやいや、何勝手に評価してんだ、俺。
2人が接近してきたので、立ち上がって笑顔で迎えた。
「仁くん、お待たせ、こちら、マネージャーの
「あぁ、彼氏さんね、こんにちは、怜のマネージャーしてます、内野真依です。よろしく」
怜の紹介を中断させ、真依はそう言いながら、手を差し出してきた。
俺もとっさに手を差し出した。
「じゃあ、私はこれで、怜、またスケジュール送るね」
「ありがとう、真依ちゃん」
真依はそう言うと、手を振りながら、奥の方に消えていった。
「お待たせしました」
怜がペコっと頭を下げた。
「いや、待ってないよ、じゃ、行こう」
俺がそう言うと、怜がニコっとした。
ここで世間一般のカップルであれば手を繋いでいくのだろうが、ここは芸能関係者が多数出入りする事故多発地帯である。迂闊にカップルアピールすると、週刊誌のカメラが黙っちゃいない。いや、もうバレてるからいいのだが、なんとなく見せびらかすのは性に合わない。でもカップルぽくないのも良くないのか、、とりあえず並んで歩く…ぞ。
動作一つ一つにとても緊張してしまう。まあこういう性格だからある程度我慢して付き合ってきたが、女の子の扱いが上手い男には心の底から嫉妬してしまう。
そう考えていると、あっという間に駐車場の車の前に着いた。
2人で乗り込む。
怜は車に乗り込むと早々にカーナビをいじり始めた。
「目的地まで、8.9キロ、到着時刻は、13時14分、です」
カーナビがそう喋ると、怜はこっちを向いてニコニコしながら、「お願いします」と言いペコっと頭を下げた。
今日の彼女はいつもと違い、とても積極的だ、なんかすごい嬉しい。
どこに行くのだろうとドキドキしながら車を出した。
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