第3話 掃除上手

仕分けした洗濯物を放り込み、ボタンを押す。




ーヴヴヴッ、ガコンッ!キュィィィィンー




こ、こんな音、するもんだったっけ…




まあいい、次は掃除だ。




と、その時、左足に何か重みを感じた。




気になって見てみると、愛犬のミミが俺の左足首をがっちりホールドしていた。



今から一週間前ぐらいのこと。怜の祖母が急に亡くなってしまった。その祖母が可愛がっていた犬がミミだ。家主を失ったミミを正義感の強い怜は放っておくことができず、うちで飼うことにした。あいにくペットOKな住居だし。



俺はもともと動物は得意ではなかったが、ミミはすぐに懐いてくれたので、俺も警戒心を早めに解くことができた。



よしよし、ミミ、掃除するから、お家に入りなさい。



俺はミミを抱えてミミのお家に入れてあげた。



よし、今度こそ、掃除やるか。



まずはリビングダイニングの部屋の上の方に溜まった汚れから、ハンディモップで埃を取る。下に落ちた埃は、丁寧にモップ掛けを行い、部屋中の埃を纏った汚いモップのシートはそのままゴミ箱にポイだ。




新しいシートを取り付け、今度は廊下のモップ掛けだ。人の手が届きにくそうなところも丁寧に、、と。




次は寝室と、怜ちゃんの衣装部屋、そして元々はただの物置だった俺の仕事部屋の掃除だ。まあ俺の部屋は後で適当にやっておこう。




まずは寝室。シーツと布団カバーを外し、洗濯機にぶち込む。先程洗濯機は回したばっかりじゃないか?いや、心配無用。なんとうちには洗濯機が謎に2台あるからな。




怜ちゃんがこの家に越してきた時に、怜ちゃんは自分で洗濯機を頼んだのだが、それとは別に実家の母親が怜が買っていないと勘違いし、洗濯機を新居に送ってきてしまったので、2台になってしまった、というわけだ。


会社だけではなく家庭にも「ホウレンソウ」は必要だということが身にしみてわかるエピソードだ。



2台目の洗濯機にシーツと枕カバー等をぶち込み、スタートボタンを押す。




寝室に戻り、今度はカーテンレールの上、本棚の上など、埃が溜まりやすいところを中心に、ハンディモップで綺麗に埃をとる。それにしてもこのカーテン本当に可愛い。怜ちゃんはセンスの塊なんだろうな、、。




床面を綺麗にしようとモップと掃除機をかけていると、洗面所から洗濯終了のブザーが鳴った。




埃が舞い上がらないように洗面所にゆっくりと向かい、バスケットに洗濯物をぶち込み、モップ掛け済みのリビングフロアで洗濯物を引き伸ばす。怜ちゃんには気にすんなとは言われたが、やはり異性の洗濯物を扱うのは神経使うぜ…。




伸ばして、ハンガーにかけたものをベランダに持っていく。風で飛ばないように、ハンガーの上にハサミで留めておく。




そうこうしていると、またもや洗面所から終了の合図が聞こえてきた。




洗濯機から先ほどぶち込んだシーツと枕カバーを取り出し、その場で豪快にシワを伸ばし、ベランダに直行する。




ここで物干し竿に洗濯物をひっかけたい所ではあるが、、うん、わかってる。物干し竿についている汚れが洗濯物についちゃうからな。ここは落ち着いて濡れ雑巾で軽く汚れを取ってから、、洗濯物を掛ける。




最後はトイレの掃除だ。これが1番大事だ。




『トイレ掃除は運気を呼び込む』




そんな印象的な見出しを本やテレビやネット広告やら、何度見たことだろう。人は繰り返し見たものは覚えるように出来ている。




当然、トイレ掃除のやり方はリサーチ済みだ。




まずは、今までと同じように部屋上部の汚れをハンディモップでとる。そのあと床面のゴミを掃除機で吸っておく。



次は洗面台の掃除だ。このマンションはなぜかわからないがとにかくトイレがデカい。大の大人が3人は寝れるくらいのスペースがある。当然便器だけがその広大な敷地を占有しているわけではなく、洗面所とは別に洗面台がトイレ内に設置されている。




この洗面台ももちろんピカピカに掃除しなければならない。特に鏡や蛇口のノズルなどは、水垢が付着するととても目立つ。




普通に日常生活を営んでいると、当然洗面台も汚くなるものだ。うちの洗面台も例外ではない。しっかり水垢汚れがついてしまっている。




日頃のネットサーフィンで得た情報を選別し、吟味に吟味を重ねて選んだ最強お掃除アイテムがこれ、「炭酸水の炭酸抜いたヤツ」だ。これが水垢汚れに1番効く。




鏡とノズル全体に例の液体を入れた霧吹きでシュッシュッと液体をまぶし、布巾で丁寧に拭き取る。




ほら見たことか。めちゃくちゃ綺麗になった。




あとはトイレ掃除用の良い匂いがする布巾で便座と床を拭いて流した後に、ブラシで便器の中を掃除して終わりだ。




これでひと段落……。いやあともう少しの我慢だ。

家の床を気持ちよく歩くためには、もう一仕事しなければならない。




物置から最強アイテムである蒸気が出るモップを取り出して、今まで掃除したところを丁寧に、丁寧に、、丁寧に拭き取っていく。




ふう、、やっと終わった。あとはモップのシートを洗って完全に終了だ。




一息つき、汚れたシートを洗面所に持っていって手洗いする。




手洗いを終え、ひとつその場で伸びをすると、リビングから不気味な音が聞こえてきた。何か液体のようなものが床にはねる音だ。




い、嫌な予感しかしない。




恐る恐るリビングに向かうと、予感は的中してしまった。



ミミが自分のお家を飛び出し、部屋のど真ん中で盛大にお小水をかましているではないか。



おおおおおおい、、、ミミちゃん、、そこはトイレじゃないでしょ、、、。ああ…せっかく掃除したのに。



犬に人間の言語は通じないので、また掃除しなければならない。ミミのお小水を終えると、またお家に戻し、急いで雑巾を取りに洗面所に向かった。




すると、今度は携帯が鳴った。










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