第17話 一方通行

「宮島さんとはどういう関係ですか???」



「いつから関係があったのですか???」



うるさい、、人の恋愛に突っ込みやがって…



ーーーーーーー夢か、、。



時刻は午前4時、まだ外も暗い。



昨日は災難な1日だった、よく覚えていないが、そのまま寝てしまっていたようだ。



携帯を開いてみる。



メッセージアプリの通知が10件以上来ていた。



そのうち3件ほど、怜から来ていた。



びっくりして、トークルームを開いてみる。



『先ほどは、取り乱してしまってごめんなさい』


『私も報道の方に囲まれてしまって、家の前にずっと待たれていて、いろいろ気を揉んでしまい、何も関係ない仁さんに当たってしまいました』


『本当にごめんなさい、会って仁さんに謝りたいです、お返事待ってます』


と、一文を3分ごとに送ってきてあったので、相当考えながら打ち込んだのが伝わってきた。



俺に謝るって…謝るのは明らかに俺の方なのに…



これが、一般の人同士なら、何も取り上げられずに、自由恋愛できるって言うのに。



今、怜ちゃんに会って、俺は何をすればいいんだ、会うところを誰かに撮られてしまったら、怜の株がどんどん下がってしまう。それだけは嫌だ。



こんな俺を、ここまで幸せにしてくれた怜ちゃんにこれ以上迷惑かけるわけにはいかない。



俺は自分の存在が怜の生活に悪い影響しか与えていないと思っていた。本当は一緒に居たい、また2人でどこかに行きたい。



会いたい自分と会いたくない自分が戦争をしている。



結局、会いたくない自分が勝ってしまい、『もう俺には関わらない方がいいです、怜さんをこれ以上辛い思いさせるわけにはいかない』とメッセージを送った。



その日も、次の日も、また次の日も、俺が送ったメッセージに既読がつくだけで、返信の気配は無い。



怜はきっと怒っているだろう、大変な時に1人にされて、たまったもんじゃ無いだろう。でももう無理だ、俺には。



一緒にいるには、あまりにも住んでる世界が違いすぎる。



時間が解決してくれる、、時間が経てば、世間は記事のことなんてすっかり忘れ、平穏な日常を送る。



怜も、俺のことなんか嫌いになって、すぐ忘れてしまうだろう。怜ちゃんにはそれなりの彼氏さんがお似合いだ。



ーーーーテンテンテン、テロリンーーーー



携帯が鳴った。



着信、葉山和人



「もしもし」



俺は言った。



「仁くん、今から事務所来れる??ちょっと話したいことがある。あ、マスコミは誰1人いないよ、でも心配なら迎えにいくけど、どうする?」



葉山が言った。



「いや、1人で行くよ、ありがとう」



俺はそういうと、適当な荷物を持って家を出た。



特に急いでいるわけでもないが、どこからかカメラが俺の姿を撮っているのでは無いかと、疑心暗鬼になっていた。



急いで車に乗り込むと、事務所まで車を飛ばした。



事務所に近くに着いた。周りにそれらしき気配は無い。



駐車場に車を止めると、入り口に葉山が突っ立っていた。



「仁くん、大丈夫??」



葉山が言った。



「うん、もう大丈夫」



俺は言った。



「良かった、、今、事務所にお客さんが来てて、仁くんにも是非会ってほしいと思って呼んだんだ」



葉山はそういうと、奥の面談室の前に連れて行かれた。



「もう中で待っているから、ちゃんと挨拶して、俺は少し仕事済ませたら行くから」



葉山はそういうと、仕事場に消えた。



俺に訪問者??誰だろう。



軽くノックして、部屋に入る。



「失礼します、、宮下仁と申しま…」



俺は面談室の椅子に座っていた人物を見て言葉を失った。



そこには、目に涙を浮かべながら俺の方を見ている怜がいた。



「え、怜ちゃ…いや、、宮島…さん」



俺はどう接したらいいか分からず、黙り込んでしまった。



「座ってください」



怜が涙声で言った。



俺は何も言わずに怜に向かい合って椅子に座った。



重苦しい雰囲気が部屋に流れる。



怜はしばらく泣いていたが、意を決したように話し始めた。



「本当にごめんなさい、あの時強く当たってしまって、あの後、仁さんが嫌な思いしてないかすごい心配で、メッセージの返事を見た時に、もう私に会ってくれないと思って、、それで、、」



怜はそう言いかけると、また涙ぐんだ。



「いや、悪いのは俺の方です、、調子に乗ってしまって、、もう俺のことは忘れてください、、」



俺がそう言うと、怜は涙を拭いて、俺の方を見ている。



気まずい、、気まずすぎる、、早く逃げたい。



逃げよう。



意を決して、俺は言った。



「俺ばかり本気になってしまって、申し訳ない限りです、、もう、これっきりにしましょう、、今まで本当に幸せでした、、では、、」



俺はそう言い、その場に立ち、部屋から出ようとした。



すると、次の瞬間、何者かに左頬をものすごい勢いで引っ叩かれた。

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