第16話 動揺
なんとか打ち合わせは乗り切り、新しい仕事も獲得することになったが、打ち合わせ中もずっと先程のことを考えていて上の空だった。
「仁くん、大丈夫??」
葉山が気を遣ってくれる。俺は頷いた。
そ、そうだ、肝心の怜ちゃんに連絡しないと、、。
俺は携帯を出し、急いで怜とのトークルームを探した。
メッセージは全く来てなかった。
寝てる??いや、昨日、朝から仕事だと言ってたような気が、、。
俺は居ても立っても居られずに、電話をかけた。
プルルルル、、プルルルル、、プルルルル、、
発信音が鳴っている。
6回ほど鳴っても、反応はない。
なんで、、なんで出てくれないんだ、怜ちゃん。
俺が諦めようと切断のボタンを押そうとすると、中から「はい」と怜の声が聞こえた。
急いで携帯を耳に当てる。
「怜さん、、すいません、今朝の報道で…」
俺は相当上ずりながら言った。
「その話はしないでっ!!」
耳元で聞こえたのは、これまで聞いたことのない怜の大声だった。
俺はびっくりしてしまい、、何も言い返せない。
「ご、ごめんなさい、、すいません、本当に、、落ち着いたら、、連絡します」
怜は元気の無さそうにそう言うと、通話を切ってしまった。
れ、怜ちゃん、、、。
声でしか分からないかったが、相当動揺しているのを感じた。
本当に大変なことが起きてしまった。
俺のせいで、、怜ちゃんが今後、仕事に影響が出たらどうしよう、。
怜ちゃんが築き上げてきたもの、、俺が壊してしまった、、。
俺は新人の上裏方の仕事だが、怜はもう表舞台15年のベテランだ、、。
俺が、、、俺が、、怜ちゃんの未来をぶっ壊したんだ、、俺なんかよりも遥かに価値のある、。
全てに絶望し立ちくらみを起こし、その場に倒れそうになったが、葉山が受け止めてくれた。
「仁くん、今日はもう帰りな、俺が送ってあげる、車の鍵、ちょーだい」
葉山がそういうと、俺はポケットにあった車のキーを葉山に渡した。
「もういなくなったよ、あの人たち、ほら、行くよ」
俺はまともに歩くことすら出来ないくらい憔悴しきっていたので、それを見据えた葉山が俺の腕を引っ張って、事務所を出てそのまま車まで連れてってくれた。
車が動き出す。
「仁くんは、怜ちゃんの事本気なの?」
ハンドルを握りながら葉山が優しい口調で言った。
俺はゆっくり頷く。
「その気持ち、怜ちゃんに伝わってるよ、心配しなさんな」
葉山が言った。
葉山は結局俺の部屋の前まで送ってくれた。
俺は何も手につかず、寝室までよろよろと歩くと、そのまま眠りについてしまった。
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