第15話 不穏な流れ
ーーーピピピッ、ピピピッ、ピピピッーーー
俺は耳元で鳴る爆音のアラームに叩き起こされた。
目を開け、何もない真っ白な天井をじっと見つめる。
昨日の出来事が、本当に起きた出来事なのか、、一晩経ってもまだ夢のような感覚は抜けなかった。
唇に手を当ててみる。
あの時の怜ちゃんの唇の感触がまだ残っているような感じがした。
昨日の出来事を思い出してぼーっとしていると、我に帰った。
やべ、、早く準備しなきゃ。
今日は朝から仕事の打ち合わせで事務所に行かなければならない、このふわふわした感じが抜けなくて仕事できるのかと思ったが、行かなければならないものは行かなければならない。
寝癖を治して、適当に作った朝食を食べて、急いで部屋を出た。
駐車場にある車に飛び乗った。
助手席をちらっと見てみる。
怜が昨日すやすや寝ている姿が見えるような気がする。
仕事だ、集中、集中、。
そう思い首を横に振り、事務所まで車を飛ばした。
道はいつも通り空いていたが、事務所周辺である異変に気づいた。
あれ、この車の列、どうしたんだろ、なんか事件?
長い車列は事務所の前まで繋がっていた。
事務所の近くの駐車場に車を停めると、携帯が鳴った。
相手は俺のアシスタントの葉山さんだった、普段のスケジュール管理をやってくれている事務所の人間だ。
「仁くん、顔隠して、急いで入り口まで来て!」
葉山の声は相当上ずっていた。
そう言われ、俺は車を出て、顔を手で隠して事務所の入り口に向かった。
どうやらテレビのカメラが4、5台あるような感じであった。
何、何、、誰??事件???
俺は報道陣の集団の前を足早に通り過ぎようとした時、どっかのレポーターに話しかけられた。
「宮下さん、、今朝の週刊誌で、宮島さんとの熱愛が報じられていますが、事実でしょうか??一言、お願いします」
男のレポーターが早口で言った。
え、ね、熱愛、、?ど、どうしてバレてるんだ、
「え、、いや、、わかりません」
俺はびっくりしてしまい、咄嗟にそう言ってしまった。
「ちゃんと写真まで出てるんですよ、どこに行かれたんですか?」
今度は別の女性記者に話しかけられた。
「い、いや、、知りません」
俺はそう言うしかなかった。
数多のフラッシュが焚かれる。
やばい、、誰か助けて、、、。
そう思ってると、中から葉山が出てきて、思いっきり腕を引っ張られた。
葉山が軽く報道陣をあしらってくれて、なんとか集団を抜け出すことができた。
「仁くん、大丈夫??」
葉山が言った。
俺が本当に何が起こったのか分からず、ただその場に立ち尽くしてしまった。
「今朝、もうこの記事が出てる、ネットも大騒ぎだよ、、これ本当にあの宮島怜ちゃん?」
葉山が問いただすと、俺は素直にゆっくり頷いた。
「すげーな、仁くん、、ってこんなこと言ってる場合じゃねえわ、とりあえずかなり話題になってるみたいだ、幸い、仁くんの好感度が元から高いから、あんまりファンの人も怒ってないみたいだけど、、」
俺は急いで携帯でニュースを見ると、エンタメの欄の最上部に、
『人気提供作家、元グローバルアイドルと熱愛か、、車中の甘いキス』
という見出しがどどーん、と出ていた。
恐る恐るリンクを開いてみると、中には昨日の怜との別れ際でのキスの写真や、車でイチャイチャしている写真がばっちりカメラに撮られていた。
俺の顔が一気に赤くなる。
穴があったら入りたいくらいだ。
「仁くん、本当に怜ちゃんと、、」
葉山がびっくりしたように俺を見た。
それを見た別のマネージャーが葉山の頭をぶっ叩いて、「やめなさい」と一喝した。
それにしても、昨日の今日でこんな記事が、、
一体どこにいたんだ、、カメラの気配も感じなかった。
怜ちゃんに熱中していたのが元凶だが、改めてマスコミの情報収集能力にも脱帽した。
「と、とりあえず、厳しいかもしれないけど切り替えて、仁くん。今日は大事なクライアントだから、韓国のアイドル事務所さんの人間が来るから、しっかり対応ね」
葉山はそう言ったが、俺の頭は真っ白だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます