第13話 色恋体験 後編

え、、なんか俺、悪いことした…??


と俺がびっくりしていると、


「SNS用に、写真を撮っておきたいので、お願いしてもいいですか?」


怜が携帯を差し出した。


なんだ、、そう言うことか。


初体験の渋滞で色んなことにに敏感になってしまっている俺は、些細なことでも気になってしまう。


「は、はい、わかりました」



俺はほっとして答えた。



怜が大きな富士山の前で手を山の形にして満面の笑みでポーズを取っている。



可愛すぎるよ、怜ちゃん、、。



俺はニヤニヤしながら目の前の天使をバッチリカメラに収めてあげた。



「ありがとうございます、バッチリです」



俺が撮った写真を見てそう言うと、行きましょう、と合図をした。


もう一度怜の手を取り、今度は恋人繋ぎとやらをしてみる。



怜も俺の手を強く握り返す。



すっかり手繋ぎにも慣れてきた。



快晴の中、大自然を2時間ほど2人で散歩し、車に戻った。



今の時刻は14時ごろだ。



今日は2人とも終日オフなので、お開きにしてはまだもったいない時間だ。



どうしようどうしよう、、なんか行くところないかな。



とりあえず聞いてみるか。



「怜さん、この後、行きたいところとかありますか?」



俺が言った。


怜は本当に何にも考えていなかったようで、ぼーっとした後に何か見つけたような顔をした。



「じゃ、じゃあ、仁さんのお家、お邪魔じゃなければ、行きたいです」



怜がニコニコしながら言った。



な、なにぃ、、俺の家だと??


別に特に見られて困るものもないけど。


まあ下手に遠出するよりましかな。よし、



「あ、全然いいですよ、狭いですけど」



俺はそう言うと、車を出した。



都心を目指して、東へ東へ、車を飛ばす。


怜は相変わらず外の景色を眺めていたが、走り出してから5分も経たずに、すやすやと寝てしまった。


俺はハンドルを握りながら、ちらちら助手席のお姫様を見る。



寝顔が美しすぎるんだが、、、。



この前、怜ちゃん家に行った時、リビングで居眠りしてた時とはまた違う表情をしている。どこか、この前より安らかに眠っている感じがした。


高速道路の出口をすぎ、料金所の渋滞にはまった。


眠くなってきたので、窓を開けてみる。


すると先程の暖かさが嘘のように、今は一月だぞ。と言わんばかりの寒い風が入ってくる。


急いで窓を閉める。


起きちゃったかな?と怜をちらっと見てみる。


まだスヤスヤ寝ている。しかし先程の散歩で体があったまったのか、上着を脱いでしまっていた。


このままだと風邪ひくな、上着を、、。


そう思い、上着を探そうとすると、前の車が動き出した。すかさず後を追う。



しかし、その後なかなか信号に引っかからない。



ようやく信号待ちに差し掛かると、後部座席に置いてあった怜のコートを肩からかけてかけてあげた。


怜は表情ひとつ変えずにスヤスヤ寝ている。


そんな怜を横目に、俺は自宅マンションまで車を走らせた。


しばらく走ると、俺のマンションの駐車場に着いた。



お姫様は起きる素振り一つ見せない。



なんか心開いてくれているみたいで、ぶっちゃけすげー嬉しいけど。



俺は寝ている怜の姿をみて、微笑んだ。



起こしちゃうのも悪いし、おぶって上がるかな。



俺は怜の膝元にあった小さなポーチを怜の肩に掛け、腕を取って、怜をおぶった。


足で車のドアを閉め、左腕で怜の全体重を支えながら、空いた右手でドアロックを済ませ、エレベーターホールに歩き出した。


怜は俺の肩に頭を乗せ、スヤスヤと寝息を立てて寝ている。



俺が一歩一歩歩くと、怜の胸が背中にヒットする。



駄目だ、変なこと考えるんじゃ無い、無事に、俺の部屋まで、。



俺はわかりやすく顔が火照る。



何も考えるな、無心で任務を遂行するんだ。



一歩一歩、ただ目的地を目指して歩く。



俺はなんとか眠り姫をエレベーターホールまで運び、上行きのボタンを押す。



エレベーターが下がってくる。



お願いお願い、誰も乗ってないでくれ。



怜は朝行く時、マスクと帽子をして軽く変装していたが、今は帽子もマスクもしていない。



俺はともかく怜ちゃんは顔が知られてるからな、、。



今のご時世、一般人でも携帯ひとつで、瞬く間に画像が全世界に拡散されてしまう。



絶対にバレちゃいけない、、。



エレベーターホールに緊張が走る。



ーーーピンポーン、一階ですーーー



エレベーターが来たようだ。



くっ…頼む、、。



しかし俺の願いは届かず、エレベーターのドアが半開きになる時に、中に人影が見えた。



や、やばい、、これまでか、、。



全身から汗が吹き出そうになる。






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