第5話 優雅すぎる朝

ーーーピピピピッ、ピピピピッーーー


今日という優雅な1日を始めるには少々荒めな起こし方ではあるが仕方ない、一人暮らしだし。


目を擦りながら、アラームを止めると、大きく伸びをした。


窓を開け、布団を畳み、顔を洗い、トースターに食パンを2枚雑にぶち込んだ。


その間に、今日着ていく服を考えなければならない。


無難に白シャツでいこう。下手に気合い入れるのもなんか違う。


シワシワのシャツにアイロンをかけている時、リビングから「チーンッ!!」と音がした。


リビングに直行し、トースターからパンを取り出し、皿も出さずにそのままかぶりついた。


朝食を秒で済ませると、歯ブラシを口に突っ込んで、アイロンをかけ終えると、かけたてホヤホヤの白シャツをハンガーにかけた。


ボトムスはどうしようか…。


慌ててリビングに戻り、テレビの電源を入れた。


「本日の最高気温は27度、最低気温は19度です、この季節にしてはかなり暖かい日になるでしょう」


テレビの中のお天気お姉さんが言った。


はぁ!?27度??、今日12月27日だぞ、終わってんな、地球。


と、心の中で盛大にツッコミを入れたが、俺1人が叫んだところで気温は下がらない。


暑いが、季節的に半ズボンはおかしい、よし無難にヨニクロコーデで決めよう。


服が決まると、携帯でメッセージアプリを開いた。


トークルームの相手は…そう。愛しの推し、宮島怜だ。


今日は前のテレビ収録で約束したゲーム配信の日だ。俺はてっきりオンラインでやるつもりであったが、配信のラグを怜が過剰に心配をしていたので、怜の家にお邪魔してやることになったのだ。


ゲーム配信なんて本業じゃないのに、ファンのためにここまでするなんて、、どこまでもプロだなと勝手に感心していた。


『10時頃に、来てください。場所は東京都豊島区池袋本町3-4-18、9階の904号室です、よろしくお願いいたします』


見た目は無機質なメッセージだが、推しが俺に個人チャットを送ってくるっていうだけで幸せだった。


現在、8時40分。自宅から怜の家までは多く見積もっても20分で着くが、絶対に遅れたくないので、もう出発することにした。


鏡の前で最後の身だしなみチェックを済ませると、

部屋に鍵をかけ、エレベーターで地下駐車場まで降りた。


愛車にエンジンをかけると、もう一度時間を確認した。8時43分。よし、行くぞ。


車を勢いよく発進させ、駐車場を出た。


道はさほど混んでいなく、9時過ぎには怜の家の近くの駐車場に着いてしまった。


早く着きすぎたな…。


もう着きました、近くで待ってます。って伝えるのが正解か、時間ピッタリで行くのが正解か。


と、車の中でボーッと考えていると、電話が鳴った。


ーー着信、宮島怜ーー


おお、怜ちゃんだ!慌てて、通話ボタンを押した。


「あ、おはようございます、怜です。宮下さん、今どこにいらっしゃいますか?」


電話口から怜の可愛らしい声が聞こえた。


「あ、今、怜さんの家の近くに車停めてます、。」


緊張すると声が空振りするので、腹から声を出した。


「あ、本当ですか、実はもう準備が済んだので、上がってください。宮下さんなら早く来てくださると思っていたので、、。」


怜が言った。


「あ、本当ですか?じゃあ今から伺いますね」


俺は電話を切ると、車を出て、怜のマンションに向かった。


30階くらいはあるのだろうか、高い建物だ。しかも池袋でこの駅近は、、。まあそりゃうそうだ、トップスターだからな。


自動ドアを抜け、インターホンの前に来た、904と押して、呼出した。


「はい、どうぞ〜」


スピーカーから怜の声が聞こえた。


もう一つの自動ドアが開く、中に入り、エレベーターで9階まで上がった。904、904、、。


あった、この部屋だ。


心臓がバックバクだ、どういう風の吹き回しか自分でもよくわからないが、今、推しの家のドアの前に立っている。


ふ〜〜。


大きく深呼吸をし、インターホンを鳴らした。


ーーーピーンポーンーーー


おお、ついに押してしまった。


「はぁーい」


中から怜の元気な声が聞こえた。


部屋の中の足音がだんだん大きくなってきた。俺の鼓動も比例して大きくなる。



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