第4話 楽屋での出来事
楽屋に戻ると、初めてのテレビ収録が終わったことでホッとはしていたが、本当にあんなこと言ってよかったのだろうか。と先程の発言を反省した。
いや、反省する必要はない、テレビ的に盛り上がったわけだし、悪口を言ったわけではない。だから大丈夫だ。
とは思いつつも、やはり気になってはいた俺は、共演の挨拶も兼ねて、怜の楽屋を訪れることにした。
しかしどこが楽屋かわからない。自力で見つけ出すほかなかった。
楽屋のフロアは14階、15階だ。
よし、まずは15階から探すぞ。まずは隣からだ。
そうと決まると、そ〜っと部屋を出て、周りの目を気にしつつ移動した。
隣の部屋の楽屋前だ。名札をちらりと見る。
『宮島 怜 様』
なに!?!?まさかの隣だと!!??
びっくりしたが、早めに見つかって良かった。よし、行くぞ、、。
そう思いノックをしようとすると、
「宮下、、さん?」
後ろから女性の声が聞こえた。
推しの楽屋の扉をノックするという俺にとっては人生の一大イベントに全神経を集中させていたので、誰の声だか分からなかった。
「は、はいっ、?」
びっくりして振り返ると、そこには怜がいた。
「うあ、あ、怜ちゃ…いや、宮島さん…」
俺の体温が上がる。
「わたしに何か?ありますか?」
怜が不思議そうな顔でこちらを見る。
くそぅ、その真顔でも充分悩殺されるんだよオタクはぁ。
「いや、あの、ちょっと謝りたいことがありまし…て」
俺は消え入りそうな声で言った。
「何のことでしょうか?まあ、とりあえず楽屋入ってください、そこで話聞きますから」
怜はニコッとしてこちらを見る。
「いや、そ、それは失礼なので…」
「全然構いませんよ、どうぞどうぞ」
怜が扉を開けると、俺も恐る恐る怜の楽屋に入った。
「普通に座ってくださって大丈夫ですよ」
言われるがままに椅子にちょこんと座った。
ーーー推しと同じ部屋、、そして2人きりーーー
俺の脳はショート寸前だった。こんなことが起きるなんて思っても見なかった。
「それで、話とは何でしょうか??」
「はえ!?」
怜に話しかけられ、ようやく通常運転を取り戻した。
ここでもじもじしてるわけにはいかん。しっかり男らしく、行くぞ。
「あの、先程は突然変な事を言ってしまって、すみませんでした!!」
俺は頭をペコッと下げながら言った。
「え、いや、全然変な事じゃないですよ、すごい嬉しかったです」
怜はニコニコしながら答えた。
え?嬉しかった??怜ちゃん何言ってるの?なにこれ、、夢か。夢ならば覚めないでくれ。
「わざわざ伝えに来てくれてありがとうございます、今日の収録楽しかったです、また共演させていただく時はよろしくお願いします」
怜がペコッと頭を下げた。
やばい、この至福の時間は終わりか、、このシーン見られたら、全世界の怜オタクになぶり殺されるに違いない。いや、でも、ここで終わらせるわけには、なんか、きっかけ、きっかk…
「もう大丈夫ですよ、わざわざありがとうございました」
怜がこちらを見て言った。
「あ、あの、今度よかったら…」
デートしてください??何馬鹿なこと言ってんだ、相手は全世界にファンがいる元アイドル、俺は裏方で目立たない草食男子だ、ていうかそもそも女子とデートした回数なんて五本の指で足りるくらいだ。
「今度?」
怜が不思議そうな顔でこちらを見てくる。
なんか言わなきゃ、なんか…
「今度、一緒に…ゲーム、、しませんか?」
終わった。なんで今日初めて会ったばかりの草食男子とゲームしなきゃいけないんだよ。
俺は怜がかなりのゲーム好きで実況動画とかをやっているのを知っていたので、これしかない!と思って試しに言ってみたが、今よくよく考えると意味不明すぎる。
「ゲーム、良いですよ、じゃあ私からもお願いなんですけど、一緒に配信出てもらえませんか?」
ええ、一緒に配信??怜ちゃんと??同じ画面の中に怜ちゃんと2人きりで収まるの??やばすぎる。
「もちろん、やらせてください!」
俺は顔を真っ赤にしながら言った。
「じゃあ予定合わせたいので、連絡先教えてもらっても、、良いですか?」
怜が携帯をいじりながら言った。
「あ、はい」
俺も携帯を出した。
無事に連絡先を交換すると、軽く挨拶を済ませて怜の楽屋をあとにした。
自分の楽屋に戻っても、ほんの10分前の出来事の内容が濃すぎて、ぼーっとしていた。
あぁ、明日、どっかで死ぬんだろうな俺。
とは言いつつも、嬉しさが込み上げてきて、部屋の中で盛大にガッツポーズをかました。
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