21.『転移Lv.3』

会合が終わり、おれはバルトの家のあてがわれた部屋に籠った。


「ウィズに怒られちゃったな」


手を掴んでおれの手を刺したんだ。

当然だね。

こういうのをつい出来心でというのかね。




だが、おれはついに物体を遠くから引き寄せる使い方『転移・口寄せ』の使い方を解明した。




それはこれまでとは違った視点だった。




血を使う。



なぜか?


『転移』の基本。


①転移先のポイント設定、イメージ。

②転移対象の設定、魔力を注ぐ。

③転移の扉の設置。

④フォースフィールドの対象設定を行う。


問題はこの順序だ。


どこに転移するかの後、何を転移させるかを決める。

その後に空間を飛び越える転移の扉が開く。



つまり、遠い場所にある何かを転移させようとしても、その対象を設定する段階――魔力を注ぐという工程は、空間を飛び越えて行うことができないということだ。



要するに、離れた場所のものに魔力を注ごうにもまだ扉が開いてないので届かない。

③→②では転移できない。



順序の問題だ。


では転移対象の設定をどうするか。

離れた場所のものを転移の対象にする、すなわち魔力を注ぐにはどうすればいいのか。



魔力を転移させればいいのだ。



しかし、魔力に魔力を注いでもただ魔力が大きくなるだけで転移の対象として設定できない。


これらを解消したのが血だ。




そもそも、血には魔力が籠っている。

血に魔力を注ぎ転移しても、血の中の魔力はまだ消費されていない。


そして、転移の扉が開いている間、血の中の魔力を操り、新たな転移対象へ魔力を注ぐことができる。

その転移先を手元にすれば、目的の物が手に現れる。




つまり、二段階右折のようなものだ。




一回目、ごくわずかな魔力で血を転移させて、目的の物は血の魔力でこちらに転移させる。



「天才かよ、おれぇ‥‥‥。はぁ自分の才能が怖いよぉ」



体内を駆けまわる血は魔力をたくさん内包するが、何も毎回ウィズの手を借りる必要はない。


定期的に採血して霊薬や自然回復薬と同じようにストックすればいい。

それなら大量の魔力で巨大な質量の物でも引き寄せられる。




「ハァぁ‥‥‥天才過ぎるよ、おれ!!」




『転移・天地逆転』といい、『転移・口寄せ』といい、練習して完璧にマスターしないといけないな。





だが、おれは天才だった。


「お?」


『転移・天地逆転』は転移の扉の方向設定とフォースフィールドの向きの設定の組み合わせだ。

複雑そうだが、おれは迷わずできた。



ベッドからそのまま転移して立ち、後ろに倒れても転移で真っ直ぐ立ち、走った勢いで上方向にジャンプし、落ちても元の体勢に転移で戻った。


ナイフを投げた。

目の前に真っ直ぐ投げたが、転移でおれの後ろの的に命中した。


スムーズ。

とぉっても、スムゥーズ!!





もしかして‥‥‥!!


「ステータスオープン」


■壬生京志郎 16歳

■フラノ村:村人

■レベル:18

■スキル:『転移Lv.3』




スキルのレベルが上がってた!!!




『転移Lv.2』の時は魔力の調節をマスターしたときだった。


今度は何だろう。

色々やったからな。


フォースフィールドを理解し、防御と『部分転移』に応用した。

テレショックを使って『転移・榴弾』、『転移・徹甲弾』を習得。

転移の扉をコントロールして『転移・天地逆転』をマスター。

理解したことを全て応用し『転移・口寄せ』に血の魔力が必要だと突き止めた。



神様は言っていた。

理解、発想、創意工夫、それと使用回数がスキルのレベルに関係している。



「全部か」



効率化が起きると言っていたが、複雑な工程を流暢にできるようなった気がする。


転移の使用ケースに応じて適した使い方ができるようになった。




「次は、なんだっけ? 細かいことができるようになるだったか」


十分細かいこと出来るようになったと思うけどな。



いや、転移に必要な各工程、転移の扉、フォースフィールド、テレショックにはまだ応用の幅があるのかもしれない。



あるいは普通にやっている『転移』で深堀出来ることがまだあるのかも。


血の転移以外にも何を転移させるかで応用が利くこともあるし。





それと‥‥‥


「‥‥‥狩りはみんなで、だったよな」


他人との連携も課題があるだろう。


「まぁ、じっくりやろう‥‥‥」



おれはこの『転移』でこの村にどう役に立てるだろう。

家ができるまでずっとこうしていても申し訳ないし、バルトに何か仕事が無いか聞いてみるか。





「おい、キョウシロウ、いつまで籠ってる。晩飯だぞ」

「うわぁぁい、ごはんだー!!」


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