第3話 結婚すれば1億円を進呈✨👩‍❤️‍💋‍👨✨💕

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【美少女の国 《エデン》からのおしらせです】





 若く健康的な男性のみな様へ……。

 耳寄りな情報です。



 この夏、《美少女の国》で結婚をされたカップルに1億円を進呈してします。




 奮って、ご応募ください。




【《美少女の国》より】……。







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 7月20日。

 長い夏休みが始まった。




 その朝、起きるとメールの着信音がした。




「ンうゥ……(ب_ب) なんだよ」

 寝ぼけまなこでスマホを開くと、とんでもないメールがあった。


 【美少女の国 《エデン》】からのお報せだ。



「な、なんだよ……?! これは!!」

 気になって読んでみると若く健康的な男性が【美少女の国】で結婚すれば1億円を貰えるというシロモノだった。




「ぬうゥ、1億円ゥ……!!

 なんだよッ!! このメールは!!」

 もちろん1億円が欲しいのは山々だけれども、いくら何でも怪しすぎるだろう。



 あきらかに詐欺メールの類いか。

 それとも如何いかがわしい新興宗教の勧誘なのか。



 ホームページへアクセスしろと指示がされている。

 


「うゥン……」バカバカしい。



 だいたい【美少女の国 《エデン》】ッて……。

 どこの国だよ。



 絶対に、怪しいだろう。






 

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 ボクの名前は浦島真太郎。



 断わるまでもなく御伽話しの浦島太郎とは何の関係もない。


 地味で陰キャな二十歳になる大学生だ。


 アイドルヲタで、御多分に漏れず彼女なしのチェリーボーイだ。


 両親は一昨年、立て続けに亡くなり、今はだ。

 


 そんなボクに【美少女の国】で結婚すれば1億円などと言っても、肝心の彼女がいないので仕方がない。

 諦めるほかはないだろう。





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 今日から長い夏休みだ。

 

 


 外は燦々と真夏の日差しが降り注いでいる。ギラギラと灼熱の太陽が眩しい。


 エアコンがなければ、熱中症で倒れそうだ。


 かすかだが、セミの声が聞こえてきた。

 



 朝からずっと寝転がってスマホゲームをやっているので運動不足だ。



 さすがに、少しは身体を動かさないと良くないだろう。


 散歩がてら近所のコンビニへでも行って昼の弁当でも買って来よう。



 だが玄関のドアを開けた瞬間、まとわりつくような熱気に包まれた。


「うッわァ〜……(☉。☉;)!!! マジかよ」

 思わず悲鳴を上げてしまった。



 軽く三十四、五度はありそうだ。昼過ぎには四十度近くまで上昇するらしい。

 狂ったような暑さだ。


 今日も間違いなく酷暑日だろう。

 強烈な日差しが肌を焦がしていく。



 セミの声がヤケに耳をわずらわせる。



「ッたくゥ……(>0<;)!! 正気の沙汰じゃないぜェ!!」

 このまま何も買わずに家へ引き返そうかと思ったが、せっかく外に出たので仕方がない。


 コンビニまでは行こう。




 出来るだけ日陰を歩こうとした。少し歩いただけで全身から汗が吹き出してくる。



 その時、不意にスマホの着信バイブを感じた。

『ブッブブゥーー……📳✨✨』

「ン……?! なんだよ。電話か」

 ボクは着信画面も確かめず、電話をつないだ。



「もしもし……(・o・;) !!」


『よォ、オレオレェ……!!』

 いきなりスマホのスピーカーから明るく馴れなれしい男性の声が聞こえてきた。

 

 

「なんだよ……。オレオレ詐欺じゃないんだから」

 ボクの知り合いで、こんなバカげた挨拶をするヤツは一人しかいない。


 電話の相手は幼馴染みで親友のジョーダンだ。



『よォ……、チン太郎! 暑ッちィ〜よ!!

 暇だから遊ぼーぜェ……!!』



「はァ……、遊ぼーぜッて、小学生か!!

 だいたいチン太郎ッて呼ぶな!!」

 コイツが名付けた所為せいでボクの小学校の時のあだ名は、ずっと『チン太郎』だ。カッコ悪くて仕方がない。



『なんでだよ。どうせチン太郎には、彼女もいないんだし暇つぶしにシコシコとソロ活動するしかねえェだろう……』



「うるさいなァ……(;ŏ﹏ŏ)!! ほっとけよ!

 ただでさえ暑いンだから。お前とバカ話しをしてられるか!!」

 ようやくコンビニが見えた。



『じゃ、暇つぶしに美少女の国で結婚して、1億円ゲットしよォぜェ……!!』

 コイツは、根っからのお調子者だ。



「お前なァ……、ポ○モンをゲットするのとワケが違うンだぞォ!!

 なにが1億円ゲットだよ!!

 そんな美味うまい話しがあってたまるか!!」



『良いじゃん!! ついでにチン太郎の分も登録しておいてやるよ!!』



「だから、チン太郎じゃねえェよ!!

 真太郎だ!! ボクの名前は!!」

 


『ケッケケェ……、しっかし暑いよなァ。

 今、チン太郎の家の近くだから、すぐ行くよ』


「知るか!! ボクは駅前のコンビニに行くから。じゃァな!!」

 すぐに通話を切って、近くのコンビニへ駆け込んだ。

 これ以上、外に居たら暑くて倒れそうだ。



 ほんの少し駅前まで散歩をしただけで、汗だくになってしまった。



「ふぅ〜……」大きく息をついた。

 コンビニの店内は別世界のように涼しい。

 生き返るようだ。


 夏休み初日の昼間のコンビニの店内は、まだ客が少ない。


 赤い買い物カゴを持って弁当コーナーへ向かった。

 さっさと弁当を二つ三つとペットボトルのアイスコーヒーでも買って帰ろう。



 レジへ向かおうとすると、コンビニの自動ドアが開き、明るいチャイムが鳴った。


 同時に、馴れ馴れしく男性から声を掛けられた。


「よォ! 探したぞ!! チン太郎!!」

 大げさなジェスチャーを交えて挨拶をしてきた。幼馴染みのジョーダンだ。



「今度はお前がドロボー役な!!」

 慌ただしく近寄ってきて、パッチンと肩を叩いた。



「ンうゥ! あのな、小学生か。お前は!!

 ケードロじゃァあるまいしィ!!」

 イケメンだが、妙に軽薄な感じを受ける。


 ケードロと言うのは、ドロボー役の逃亡者を刑事役の追跡者が捕まえたら、逆の役をするゲームだ。 

 鬼ごっこの変形版と言って良いだろう。



 ジョーダンは相変わらず、賑やかで派手な格好をしている。茶髪で軽薄そうなイケメンだ。 



「暑いよォ!! チン太郎!! アイス買ってよォ!!」

 まるで小学生が甘えるように肩を組んできた。



「チン太郎じゃァねえェよ……!! 暑いから肩を組むな!!」

 何度、注意すれば良いんだ。



「よォチン太郎!! 頼むからアイス買ってくれよ!! オレ、一日にアイスを5個食わないと死んじゃう体質だろう!!」


「知るか!! どんな体質だ!!

 ふざけるなよ!!

 なんでボクがお前のアイスを買わなきゃならないんだよ!!」



「大丈夫だって!! 美少女の国で、結婚すれば1億円ゲット出来るしィ〜……!!

 そしたら利子つけて返すしィ〜!!」



「どんな取らぬ狸の皮算用だよ!!

 どんだけノー天気なんだよッ!!

 ポ○モンじゃァあるまいし! そう簡単に1億円がゲット出来るかァ!!」

 


「良いだろう!! 美少女の国に行って結婚するだけで1億円が手に入るんだぞ!!」



「結婚するだけッて……、お前なァ」  

 相手の彼女も居ないのに。まったく頭が痛い。

 


「どうせチン太郎は、自慢のポンコツ ドラゴンも使うことなく朽ち果てていくんだから!!」

 ジョーダンは、ケラケラ笑いながらボクの股間をギュッと握ってきた。



「バカか!! どこを握ってンだよ!!」

 なにが朽ち果てていくだ。バカにしやがって。



「ケッケケェ……、さっさと、ご自慢のポンコツ ドラゴンを使えよ!! チン太郎!!

 二十歳になっても童貞ボーイなんて、彼女にアピールする事じゃないだろ!!」



「うるさい!! ボクはチン太郎じゃないッて言ってンだろう!! ポンコツでもねェよ!! オレのは!!」

 まったく恥ずかしいヤツだ。童貞ハラスメントか。

 大声でボクをおとめるようなことを言って。



「……」店員や来店客らが、チラッと白い目で見ている。



「ッたくゥ……」ボクは舌打ちをし頭を抱えた。その時、何処に隠れていたのか。


 突然、少女のヤケに甲高い笑い声がした。



「ヘェ〜……、チン太郎ッて言うの!!

 キャッキャキャッ……!!(。◕‿◕。)!!」

 いきなり背後からディスられ、あざけるように笑われた。



「あのねェ、チン太郎なんて言うか!!

 真太郎だよ!! ボクは!!

 ふざけるなァーー!!」

 誰だか知らないが、振り返って相手も見ずに怒鳴りつけた。








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