第2話 おやすみなさい
「うぅ……つ、疲れたぁ………。」
某日夕方頃、自室のベッドに倒れ込むひとりの少女。夢衣である。
今日は体育の授業を受けており、心身共に疲れ果てていた。
もともと運動が苦手な夢衣にとって、体育の科目がある日はとても憂鬱な気分だった。
特に今日はマラソン大会に控えて通学路を使った長距離走の練習が行われており、夢衣は久しぶりに己の体力の全てを使い果たしてこの日を無事に終わらすことが出来たのだ。
………が、その代償は余りにも大きく、夢衣はその後の授業の内容がまるで頭に入らずに燃え尽きた状態のまま下校する事になったのだった。
家に着くなり目を回したようにフラフラと自室へ向かいベッドにダイブする夢衣。
幸い明日は日曜日。今日はもうこのまま寝てしまおう………。
そう考えながら床にソックスを脱ぎ捨てる夢衣。解放された素足に外気が触れてとても気持ちがいい。
「あ~涼しい……ふわぁ~……おやすみなさぁい………。」
すぐに眠りにつく夢衣。制服姿のまま深い無意識の中へと溶け込んでいくのであった。
※
男性たちは戸惑いを隠せなかった。
彼らはみんな赤の他人同士で面識など一切なかったにも拘わらず、大勢の男性があちこちに点在している。
そして、今男性たちは起伏の激しい柔らかい地面に立っていた。ここは一体何処なのだろうか?
ズゴゴゴォ………
「!?」
突然の震動と上空からの光に男性たちが驚く。彼らは現状が理解出来ない状態のまま、空から大きな何かが降りてくるのを眺めていた。
「う、うわああッ!!」
男性の上空から現れたそれは、普段から見慣れた馴染みのある物体であった。
人間の手である。
本来、そこまで驚くものではない。
問題はそのサイズだ。
空から降りてくる手は全長150メートルは優に超えており、それが地表めがけて近付いてきたのだ。
掌の影が男性たちのいる足場一帯を埋め尽くしていく。彼らは悲鳴を上げながら逃げようとしたが足場の柔らかさが足取りを鈍らせて思うように走ることが出来ない。
結局、男性たちは全員まとめて巨大な掌の下に消えてしまった。その圧倒的な重量によって粉々に磨り潰され、理不尽な死を迎えたのだった。
男性たちは、自分たちが夢衣の無意識からくる力によって1000分の1サイズに縮小され、夢衣のお腹の上に転送されていた事になど気付く暇も与えられなかった。
そして、夢衣が無意識にお腹をポリポリと掻いただけに過ぎないという事など知るよしもなかった。
※
一方、別の男性たちは気付いた時には真っ赤な大地に足を乗せていた。ブニブニと柔らかく、粘着性がある地面の上に立っていた。
ここは何処だと皆が騒ぎだしたその時。
ヒュゴウッ!!
半数以上の男性たちが真後ろにある2つの大きな洞窟に吸い込まれていった。
一瞬の出来事だった。残された男性たちはパニックに陥りその場から逃げ出そうとしたが、靴が地面にへばりついており身動きがとれないでいた。
「ひ、ひいぃぃぃッ!!」
ひとりの男性が悲鳴を上げる。皆が声の方を振り向くと、真っ赤な地面がパックリと開き、中から巨大な肉の塊が糸を引きながら姿を現した。
赤くぬらぬらとしたその塊はまるで生き物のように蠢き、男性たちの方に向かってゆっくりと近付いてくる。
男性たちは必死に足掻くが、既に地面に倒れてしまい全く身動きがとれない者が殆どだった。
健闘むなしく赤い化け物に付着して地面の底へと連れてゆかれる男性たち。彼らの悲鳴は赤い化け物が地中に戻り地面が閉じた瞬間には聞こえなくなってしまっていた。
「ぺろ……ん……美味しい…えへへ……。」
夢衣の唇の上に縮小転送された男性たちは訳も分からずに全滅していた。
半分は夢衣の呼吸による鼻腔からの吸い込みによって、もう半分は美味しい食べ物を食べる夢を見ていた夢衣の無意識の舌舐めずりによって口腔に引きずり込まれ、帰らぬ人となった。
夢衣は自分の鼻と口の中に2ミリサイズの男性たちが消えていった事など全く気付かず、幸せそうな笑みを浮かべてして眠っていた。
※
「……………ッ!!」
別の男性の一団。
彼らは夢衣の足付近に縮小転送されていた。
右足はつま先が上を向いており、左足は膝が折り曲げられ足の裏がシーツに密着していた。
男性たちは転送された瞬間から地獄を味わっていた。夢衣の足の臭いである。
マラソンの練習によって蒸れに蒸れた夢衣の素足は、凄まじい刺激臭を醸し出していた。
更に、1ミリにも満たない大きさの男性たちにとっては山の様な大きさの裸足から放たれる臭いは災厄以外の何物でもなく、広範囲に渡って少女の足の臭いが辺り一帯を満たしていた。
そして止めに距離である。男性たちは夢衣の素足の上や足指の間に集中して転送されていた。
ということは、足との距離はほぼゼロ距離と言ってもよい範囲。臭いの発生源の中心に集まっているということだった。
少女の足から醸し出される醜悪過ぎる臭い、1000倍以上を誇る圧倒的なサイズ差、そして臭いの発生源に直に触れているような距離。
これらの要素が絡み合う時、そこに運悪く現れた極小の男性たちにとってそこは死よりも辛い生き地獄となっていた。
普段は毎日欠かさずお風呂に入っている夢衣だが、今日たまたまお風呂に入らずに眠ってしまったおかげで、大勢のこびとたちがまさか自分の足の臭いでもがき苦しんでいるとは思いもしないだろう。
右の素足に転送された男性たちは殆どが足の指の間に集められ、一番臭いがキツい場所で苦しんでいた。既に半数以上の男性たちが、夢衣の足の臭いだけで呼吸困難に陥り死に絶えていた。
残りの男性たちは踵付近に集まり、高層ビルのような足の裏を眺めていた。余りにも人間離れした広大な足の裏を見て唖然とする男たち。
この足の持ち主は一体どれ程の大巨人なのだろうか。足だけでこの大きさなら、身体全体はへたな山よりも大きいのではないだろうか。
非日常的な光景に皆誰もが立ち尽くしていた。幸い足指からは離れていた為、なんとか呼吸は出来る濃度だった。
ズズ………!!
「うわあっ!」
地響きと共に突如として目の前の足が動き出した。何事かと上を見上げる男たち。その目には遥か頭上にある5本の足の指が、ゴリゴリと音を立てながら蠢いているのが映った。
そして、足の指の間にいた大勢の男性たちが巨大な足指たちによって揉みくちゃにされているのが見えた。中には悲鳴を上げながら落下していく者たちもいた。
悲惨な光景を見た踵付近の男たちは、一刻も早くその場から逃げようともがいていた。
ーーーその時。
ドスンッ!!
彼らは空高く飛び上がっていた。
右足がビクンと跳ね、踵がベッドを突いたのだ。
男たちは遥か下にあるフローリングに向かって自然落下を始める。彼らのか細い悲鳴は熟睡している夢衣の耳には全く聞こえていなかった。
一方、左足に転送された男性たちは既に全滅していた。
全員がつま先付近に送られており、各足指の爪の上や足指の間に集中していた。しかし間もなく巨大な左足がつま先の方に向かって滑り出したのだ。
爪の上にいた者たちは頭から落下し、足指の間にいた者たちは前進してくる足の指によって磨り潰されていった。
彼らは臭いに苦しむ間もなく、少女の足指にこびりつく赤いシミへと姿を変えていたのだった。
※
その後も夢衣の身体のあちこちで、無意識のうちに非情な殺戮が行われていった。
ある一団は、ゆっくりと閉じられる掌によってまとめて握り潰された。
ある一団は、夢衣の胸の乳首の上に送られ、無意識に勃起した乳首と下着の間に挟まれてミンチと化した。
ある一団は、夢衣の巨大なお尻によって細胞レベルまで磨り潰されていた。
既に数百、数千のこびとたちが夢衣の無意識による動きにより無惨に死んでいった。
しかし、ただ眠っているだけの夢衣にとっては全く関係のない出来事だった。
最後に送られてきた一団。
彼らは夢衣の陰部に転送されていた。
お風呂に入っていない蒸れ蒸れの股間は恐ろしい程の熱気と湿気に満ちており、少女特有の甘い、それでいて酸っぱい匂いが辺りを支配していた。
男性たちは突如訪れた過酷な環境に困惑していた。
間違いなく女性のアソコの匂い。しかしここは一体なんなのか。
皆が平常心を失っていた。
だがすぐに理解出来た。
何故なら足元の地面、つまり広大な大陰唇がパックリと口を開いたからだ。
男たちは情けない声を上げながら、暗い暗い肉壁のクレバスへと真っ逆さまに落ちていった。
彼らの悲鳴は膣内で大きくこだましたが、夢衣が目を覚ますことはなかった。
※
「ふあぁ~………よく寝た………。」
翌朝、目を覚まして大きく伸びをする夢衣。髪は乱れ、だらしなくよだれが垂れている。
しかし顔色は良好。どうやら疲れはとれたようだ。
「う~ん、スッキリした!お風呂入ってこようっと♪」
元気な足取りでお風呂場へ向かう夢衣。
その身体中に付いた大量の赤いシミと体内に収められた屍たちには一切気付くことなく、夢衣は日曜日を満喫することで頭がいっぱいだった。
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