第3話

うるさい

なぜこんなにも私の世界はうるさいのかわからない。

いつもの事だがこの学校の食堂はどうして音が多いのだろうか

ただで食べれるのはいいがノイズが多いのは好きになれない。


目の前に置かれた食べ物を食べるだけだというのに、頭の悪い音が無駄に響き渡る。

別に興味もないからボリュームを下げて欲しいと思う。

ひしゃげた笑い声、学生特有のくだらない自慢話、面白くもない意味のない会話にリソースを割かれるその脳みそは早くなんとかして欲しい。


いつものようにイライラしてると

知っている顔が私の前の椅子に図々しくも座ってきた。

さっきの授業で隣に座っていた、このうるさい世界でまあまあ私の邪魔をしないやつ。

その前に座ってきた口が言った。


すこし痩せた?


いや、いつもと変わらないよ。


ふーん、気のせいか。


そっちはどう?いい絵描けてる?


まーったく。なんか最近乗り切らなくてねぇ。


まぁわかるけど、私は昨日いい絵が浮かんだから今は楽しいよ。


珍しい…あんた今顔、笑ってるよ?

なんか変なもんでも食べた?


うるさいよ、次余計な事言ったら殴るよ?


ああごめんってば、でもほんと珍しいからついね…

その絵見に行ってもいい?


まだダメ。完成は…してないと思うから。


わかったー、完成したら教えてねー


そう言って立ち上がり去っていった。

あいつは友達と呼べる部類にいると思う。

絵もくやしい事に「世界」がちゃんとあるやつだ。

たまに会うと喋りかけてくる、嫌いじゃない音だ。

しっかりとした中身のある音。

あまり無駄のない音。


すこし嫉妬するあいつの音。


まぁとりあえず目の前の餌を片付けよう。まぁまぁな味を平げ、食器を返すのに立ち上がる、携帯が震えた。


ノイズだらけの食堂をそそくさと出て行く。次の授業まであと20分くらい。

歩きながら携帯を取り出して確認すると、さっきのあいつから何か来ている。

開いた瞬間、心当たりがあるその一言に少し不安がよぎる。

何が不安なのか、所在がわからない黒い何かが頭のなかで踊り出す。

暗色の画材がわたしの心にじわじわと侵蝕していく。




香水なんか付けてたっけ?



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