「や、はなせっ、てば…」


「セツ…とにかく落ち着いて話そう?」


あやすみたく、背中をぽんぽんとされて。

こんな状況に、不謹慎にもドキドキさせられる。


やっぱりルーファスの手は温かくて、優しいから。

何かの間違いじゃないかって、そう言い聞かせるけれど…。






「何か誤解もあるようだが…すまなかった。」


理由はどうあれ、オレを泣かせてしまったなと謝るルーファスに。誤解?とオレは疑問符を浮かべる。






「私が侍女と抱き合ってたのは、端から見れば事実だ。…が、それを侍女と言い切るには語弊がある。」


言いにくいのだが、とルーファスはオレを見て苦笑する。






「あの時、私が一緒にいたのは…」


「う、ん…」



次の言葉を前に、心臓が早鐘を打つ。






「私が抱き締めていたのは────…セツ、お前だ。」


「うん…………え?」


思いも依らぬ答えに、一度は頷くも。

あれ?…となりオレはパチパチと目を瞬く。






「だからは…セツが先日、侍女の格好をしていただろう?」


「…………ああっ!!」



ようやくたどり着いた真実に、オレは脱力してへたり込む。そこはすかさずルーファスに支えられ、なんとか堪えたけども。


…なんだ、そういうことか。

知ってみると、なんとも間の抜けた話じゃんか。

とほほ…。






「てことはさ、メイドさん達が噂してたのって…」


「噂?」


「うん。ルーファスがメイドさんとデキてるって…。それってオレとってこと、だったんだなってさ。」


「………!!」


安心した~と漏らすオレに、今度はルーファスが動揺しちゃって。

どうしたの?って見上げたら。

何故だか真っ赤になって、目を逸らされてしまった。








「私が……セツと、恋仲…」


「え、ルーファス…?」


かと思ったら、ジーッと見つめられちゃって。

やけに熱っぽい視線に、思わずこっちまで真っ赤にさせられちゃうから。


ちょ、またヘンな空気になってんだけど、どうしよう…。






「あ、と…ルーファスもいい迷惑だったみたいだな!そもそもジーナ達がオレに女装なんかさせるからさっ…」


まあ、オレだったから良かったけど。

ルーファスにとっては、女の子と抱き合うだとか、アシュレイみたいに日常的なわけじゃないんだし。

妙な噂なんてたったら、立場とか色々とヤバいだろ?


だから、早めに誤解を解いた方がいいよなって、甘い雰囲気を払拭しようとしたら…






「セツが相手ならば…」


「へ?」


「悪くない、な…」


「なっ…ば、」


なのにこの無自覚タラシときたら…

まんざらでもないように、さらっとそんなことを言うもんだから。


限界突破するオレの頭は、ぼふっと音をたて上気した。

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