「メイドと、部屋に…」


そこでルーファスは口元に手をやり、なにやら考え込んでしまい。そんな様子を見上げるオレは、なんだか落ち着かず…何故か泣きそうになってくる。







「まさか、思い当たる節でも…」


「や、そうじゃない。だが…」


何か引っ掛かるなと唸り、ルーファスは必死で記憶を辿り頭を抱えたが…







「ああ、そうか…」


「な、なに…?」


何か思い出したよう声を上げたルーファスは。

次にオレをじっと見つめ、バツが悪そうに眉を潜める。


気になって仕方ないオレは、すぐに問い質すんだけど。

その事実は、なんとも予想外なものだった。







「確かに、私は侍女と抱き合っていたかもしれない…」


「えっ…」


瞬間、ガーンっと頭に大打撃を受けるオレ。


まさか、ルーファスが女の子と…?

本人からの受け入れ難い告白に。鼻の奥がツキリとして痛くなる。






「しかし、あれを見られていたとはな…」


油断した、不覚だったと…スキャンダルを目撃された事を反省し出すルーファス。


コイツのそんな独り言に。

オレはバカみたく反応しては胸を詰まらせた。




だって、なんかやなんだもん…。

ルーファスはさ、オレの守護騎士だからさ。

オレだけの…なんて錯覚してたんだと思う。

ルーファスだって、そういう態度を示してただろ?



だから、突然メイドさんとデキてたなんて言われたらさ…。そりゃショックに決まってんじゃんね?


自分が思った以上に、ルーファスに対する独占欲があったことにも驚いたけど。何より、ルーファスがそれをオレに黙ってたってことだから…。







「…んで、言ってくんないんだよっ!」


「セツ…」


「オレはお前にとって、神子ってだけの存在だったのか!?」


悔しいのか苦しいのか…。

どちらも混在する感情に苛まれ、オレはつい声を荒げる。

一度剥き出したものは、止める事も出来ず。

恥ずかしげもなく涙となりて、ポロポロと…溢れ出してしまった。






「一体どうしたんだ、セツ…」


「オレはお前にとって神子でしかなくても!オレは、この世界で誰よりもっ、ルーのこと、ルーのことっ…」


信頼?友情?それとも─────…

言いながら判らなくなり、オレはそれ以上何も言えず泣きじゃくる始末。



何が何やら、狼狽えるルーファスはオレを落ち着かせようと試みるも…それは叶わず。


困り果てた末にコイツは。

ぐいとオレの肩を自身に抱き寄せ…その胸の中へと包み込むのだった。

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