⑤
「メイドと、部屋に…」
そこでルーファスは口元に手をやり、なにやら考え込んでしまい。そんな様子を見上げるオレは、なんだか落ち着かず…何故か泣きそうになってくる。
「まさか、思い当たる節でも…」
「や、そうじゃない。だが…」
何か引っ掛かるなと唸り、ルーファスは必死で記憶を辿り頭を抱えたが…
「ああ、そうか…」
「な、なに…?」
何か思い出したよう声を上げたルーファスは。
次にオレをじっと見つめ、バツが悪そうに眉を潜める。
気になって仕方ないオレは、すぐに問い質すんだけど。
その事実は、なんとも予想外なものだった。
「確かに、私は侍女と抱き合っていたかもしれない…」
「えっ…」
瞬間、ガーンっと頭に大打撃を受けるオレ。
まさか、ルーファスが女の子と…?
本人からの受け入れ難い告白に。鼻の奥がツキリとして痛くなる。
「しかし、あれを見られていたとはな…」
油断した、不覚だったと…スキャンダルを目撃された事を反省し出すルーファス。
コイツのそんな独り言に。
オレはバカみたく反応しては胸を詰まらせた。
だって、なんかやなんだもん…。
ルーファスはさ、オレの守護騎士だからさ。
オレだけの…なんて錯覚してたんだと思う。
ルーファスだって、そういう態度を示してただろ?
だから、突然メイドさんとデキてたなんて言われたらさ…。そりゃショックに決まってんじゃんね?
自分が思った以上に、ルーファスに対する独占欲があったことにも驚いたけど。何より、ルーファスがそれをオレに黙ってたってことだから…。
「…んで、言ってくんないんだよっ!」
「セツ…」
「オレはお前にとって、神子ってだけの存在だったのか!?」
悔しいのか苦しいのか…。
どちらも混在する感情に苛まれ、オレはつい声を荒げる。
一度剥き出したものは、止める事も出来ず。
恥ずかしげもなく涙となりて、ポロポロと…溢れ出してしまった。
「一体どうしたんだ、セツ…」
「オレはお前にとって神子でしかなくても!オレは、この世界で誰よりもっ、ルーのこと、ルーのことっ…」
信頼?友情?それとも─────…
言いながら判らなくなり、オレはそれ以上何も言えず泣きじゃくる始末。
何が何やら、狼狽えるルーファスはオレを落ち着かせようと試みるも…それは叶わず。
困り果てた末にコイツは。
ぐいとオレの肩を自身に抱き寄せ…その胸の中へと包み込むのだった。
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