「あ、う、ルー…ファス…」


「ん?」


事情を知らぬルーファスは、挙動不審なオレにきょとんとするも。

内容が内容なだけに、オレは言葉を濁し俯く。





(なっ…なんでオレが聞かなきゃなんないの~!?)


オレ、関係ないじゃん…。

例えルーファスが、メイドさんと本当に抱き合ってて。それが恋仲だったとしてもさ。


オレは全然、関係ないじゃんか…。






「セツ?」


「ッ………」


急に表情を曇らせたオレを、ルーファスが心配そうにして覗き込む。ちらりと目だけで見上げたら…真っ直ぐ向けられる緑柱石の目とぶつかった。


つい頬を染めてしまうオレ。






「何かあったのか…?」


「あ、と…そのっ…」


確かに関係ないけど。

気になるのは事実で…ショックなのも然り。

なんでって言われても、よく解んないし…。


ただ、ルーファスが既に誰かのモノなんだって考えたら────…





「……っなのか?」


「ん?」


もごもごしながら、ルーファスを盗み見て。

このままじゃ埒があかないし、何より気持ちも晴れないからと。


オレは意を決し、重たい口を開らいた。









「私が…侍女、と…?」


今しがたみんなで議論していた問題を打ち明けると。

ルーファスはあり得ないとばかりに、即答で全否定する。






「けど、目撃者いるし…」


「私は今まで一度たりと、女性にそのような行為をした覚えはないが。」


断じて、と宣言するルーファス。

嘘を吐くヤツじゃないと解ってるからこそ、その言葉は何より説得力があった。




なら、目撃者の証言は一体なんだってんだ…?

ルーファスを見間違えるなんて事は、まずないだろ?


こんだけ目立つ美形なんてそうそういないだろうし。

相手の娘は、この屋敷のメイドさんなんだから、こちらも間違いないだろうし…。






「ルーファスがメイドさんと廊下で抱き合ってて。その後ふたりで近くの部屋の中に入っていったって…」


流れ的にいったら、“そういう”コトだと想像しちゃうしさ…。


にわかには信じ難いことだけど。

噂もここまではっきりしてると、どっちを信じたらいいのやら。

妙に悶々としてしまうオレは、考えれば考えるほど…平静ではいられなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る