④
「あ、う、ルー…ファス…」
「ん?」
事情を知らぬルーファスは、挙動不審なオレにきょとんとするも。
内容が内容なだけに、オレは言葉を濁し俯く。
(なっ…なんでオレが聞かなきゃなんないの~!?)
オレ、関係ないじゃん…。
例えルーファスが、メイドさんと本当に抱き合ってて。それが恋仲だったとしてもさ。
オレは全然、関係ないじゃんか…。
「セツ?」
「ッ………」
急に表情を曇らせたオレを、ルーファスが心配そうにして覗き込む。ちらりと目だけで見上げたら…真っ直ぐ向けられる緑柱石の目とぶつかった。
つい頬を染めてしまうオレ。
「何かあったのか…?」
「あ、と…そのっ…」
確かに関係ないけど。
気になるのは事実で…ショックなのも然り。
なんでって言われても、よく解んないし…。
ただ、ルーファスが既に誰かのモノなんだって考えたら────…
「……っなのか?」
「ん?」
もごもごしながら、ルーファスを盗み見て。
このままじゃ埒があかないし、何より気持ちも晴れないからと。
オレは意を決し、重たい口を開らいた。
「私が…侍女、と…?」
今しがたみんなで議論していた問題を打ち明けると。
ルーファスはあり得ないとばかりに、即答で全否定する。
「けど、目撃者いるし…」
「私は今まで一度たりと、女性にそのような行為をした覚えはないが。」
断じて、と宣言するルーファス。
嘘を吐くヤツじゃないと解ってるからこそ、その言葉は何より説得力があった。
なら、目撃者の証言は一体なんだってんだ…?
ルーファスを見間違えるなんて事は、まずないだろ?
こんだけ目立つ美形なんてそうそういないだろうし。
相手の娘は、この屋敷のメイドさんなんだから、こちらも間違いないだろうし…。
「ルーファスがメイドさんと廊下で抱き合ってて。その後ふたりで近くの部屋の中に入っていったって…」
流れ的にいったら、“そういう”コトだと想像しちゃうしさ…。
にわかには信じ難いことだけど。
噂もここまではっきりしてると、どっちを信じたらいいのやら。
妙に悶々としてしまうオレは、考えれば考えるほど…平静ではいられなかった。
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