「それは─────…面白い展開だねぇ。」


「アシュレイ殿、不謹慎ですよ。」


そこに偶然やって来たアシュレイとヴィンセント。

最年長アシュは分かり易く、こういった話題が好物なのか…なんとも楽しそうに食い付いてきて。


ヴィンセントに至っては、くだらないと言った風に溜め息を漏らした。






「あのルーファスがとはねぇ…。一体どうしたら、そうなるのか…」


口元を抑え、何か意図を含んだような苦笑をするアシュレイは。あり得ないでしょと、独り言のよう呟く。





「けど、他のメイドさんと執事さんが一緒に見たって…」


しかもだ。

ルーファスとメイドさんが抱き合った後、近くの部屋に入ってくのを、その2人が共に目撃してるって言うのだから…疑いようもないと思うんだけど。


…と、言いながらしゅんとするオレを見かねて。

ヴィンセントが珍しく口を開く。







「あのルーファスが、ですよ?貴方だって良くご存知でしょう?」


誠実さで言えば敵う相手がいないくらい、真っ直ぐな好青年。他人に厳しいヴィンセントがここまで他人を褒めるのは、なかなか無いだろう。


それだけ、彼らの信頼は厚いのだろうし。

だからこその説得力、なんだけれど…。






「…まあ、ここで議論しても真実は求められないだろうね。」


確かにアシュレイの言うとおり。

噂は噂でしかなく…答えは単純、アイツだけが知っているのだから。





「そう…ですね。が最善でしょうね。」


目配せするアシュレイに気付くヴィンセントもまた。

納得したよう、うんと頷く。






「だよな、正直こういう話題スッゲェ苦手だしな~。」



ジーナとロロもあっと声を上げ、ニッコリ笑顔を浮かべる。その視線は一様に、オレへと注がれていて────…







「じゃあ、セツ。後は君に任せたよ?」


「頑張ってね、セツ!」


「え、ちょ…まっ、」


「お互いのためにも、疑念は早めに払うが吉ですよ?」


「そそっ、ビシッと言ってやれよ!」


ここは全員で謎を解明する流れでしょと、目で訴えるけど。

アシュレイもヴィンセントも他人事だと言わんばかり。年少組でさえオレの肩をぽんっと叩き、あっさりと行ってしまう。


…と、その背中を恨めしげに目で追っていたら。

擦れ違い様に向こうからやって来たへと、アシュが何やら耳打ちをし始めて───…







「どうした、セツ?何やら話があるそうだが…」


「うう…」


お約束通り。

何も知らぬルーファスが…超爽快な笑顔と共に。

こっちへと近付いて来ちゃったじゃないか。



くっそう…してやられた…。

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