「ルーファス?なんでアイツが出てくるの?」



それがメイドさん達の噂話と、関係があるんだろうか?


アイツがメイドさんの間で一番人気が高いのは知ってたから…噂されても何らおかしくはないんだけどさ。

それとオレが避けられてるのとは、関係ないと思うんだけど…。







「や、それがさ~…」


「ジーナ!やっぱりダメだよ!」



言いにくそうにしながらも。口を開こうたするジーナの腕を、ロロが慌てて引っ張ると。


ジーナは不満そうに口を尖らせ、反論する。






「けど、セツにとっちゃ一大事じゃねーかよ。だって、あのルーファスが…」


ルーファスの名に、胸が熱くなるオレは。

次に語られた事実に驚愕し、言葉を失った。






「ルーファスが…─────メイドとデキてるなんてさ…!」


「え…?」


信じ難い内容に、目を丸くするオレは。

それを頭で反芻しながら…途端にモヤモヤとした感情に苛まれる。



え…ジーナは今、なんて?

ルーファスが、メイドさん……と?




 



「えっとねセツ!噂ではね、ルーファスがメイドさんと仲良さそうにしてたってだけでねっ…」


「仲良くって…抱き合ってたんだろ?アシュじゃあるまいし、ルーファスが普通するワケねぇだろ?」


ショックで立ち尽くすオレに気を遣い、ロロは弁解するけれど。嘘や隠し事が嫌いなジーナは、正直に聞いたままを伝えてくる。





「ちょ…ジーナってば、少しはセツの気持ちも考えてよ!」


「仕方ねーだろ!抱き合ってたのは事実みたいなんだし!」


「わわ…喧嘩しないでよ、ふたりともっ…」


オレを思って対立する仲良しコンビが、睨み合いを始めて。オレは慌てて間に割って入る。

まあ喧嘩ってほどじゃないから、すぐに治めてくれたけど…。







「まあ…その、なんだ…」


「きっと何かの間違いだよ…ね、セツ?」


「え…?あ、うん…。」


なんでルーファスがメイドさんと抱き合ってたら、オレに関係があるんだろって思ったけど…。


正直ショックなのは事実なわけで。

何故ショックなのかは、判らない…んだけども。

真面目なルーファスから上がった、初めての浮いた話…なだけあって。目撃者とか、噂の信憑性が強いもんだから否めない。




だってジーナが言うように。

アイツが理由もなしに女の子に触れるとか…まず無いだろ?

騎士だし紳士だし、アイツは絵に描いたような真面目クンなんだからさ。遊びだ冗談だってのは、絶対あり得ないもんね。



まあ、オレにはしょっちゅう不意討ちで触ってくるけど…。それはオレが男だから、女性ほどの抵抗がないんだと思うし。



じゃあ、なんで抱き合うなんてことに…って考えたら。頭の中が余計にこじれてきちゃって。


そうすればもう、オレの気分は…

沈む一方でしかなかった。

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