「…こんな感じかな。セツもやってみろよ。」


俺としては、セツが男役でダンスをリードするよりも。今みたく女役してる方がしっくりくると思うんだけど…。


あくまで男として学びたいらしい、セツに免じて。

今度は役を交代し、ダンスを促す。





「全然出来る気がしないんだけど…」


頑張るって意気込んでみせるセツは。

ひと呼吸置いた後、遠慮がちにもするりとオレの腰へと手を回してきた。







「ジーナって…い、意外とガッチリしてんのな~…」



身長は少し…ホント少しだけ。セツのが高いけど。

運動不足なセツに比べれば、そりゃあ雲泥の差だろうな。



セツは男のクセして肌は真っ白で。腰とか腕とかメッチャ細いし…。筋肉も殆ど付いてないから、どこ触ってもぷにぷにして柔らかいし。


顔だってどっちかってぇと女みたいだ。




こんなこと言ったら怒るだろうけど。

こうして見ると、男だとか全然っ気にならないから…なんでだろ?






「身長だって何気に伸びてきてるし──…ってまだオレの方が高いけどね!細く見えて、やっぱりガタイは格闘家なんだよなぁ…」


独り言みたく呟き出したセツは。

一応ダンスのリズムを稚拙に取りながらも、俺の体に触れてくる。






「セツなんてすぐ追い抜くぜ?」


「う~…否定出来ないから悔しいな~。」


今は成長途中だからな。

そのうちルーファスよりでっかくなってさ。

剣術でもなんでも、守護騎士の誰よりも強くなって、


そしたら────…






「胸板も硬いし、いいなぁ筋肉…憧れるなぁ…。」


んなコト言って、ちょっと体動かしただけで筋肉痛になっちまうクセに。



寧ろセツは、今のままで良いと思うんだけど。

その方が…触り心地良いし。

わざわざ鍛えなくても、いざとなったら俺が守ってやるんだから…って、







「ちょ…」


考え耽ってたら、セツの行為がエスカレートしてて。

ダンス中だってのに、無遠慮な手つきで体中をペタペタと触られる。






(オイオイ、ヤバイって…)


セツは天然っていうか…警戒心なさ過ぎるっつうか。

俺の気も知らないで…抱き付くように腕を回し、背中の方まで触ってくる。






「背中もお尻もムダな肉全然ないし。16でこの体とかさ、オレなんてずっともやしっ子なのに…」


ホント羨ましいな!って、拗ねるみたく言われても。

耳に息が掛かってくるから、堪らない。







(心臓、アチイ…)


俺だって年頃の男なんだぞ?


ただでさえ、こんな気持ち初めてで。

わけ解んなくて持て余してるってのに。


コイツとこんなくっついて、触られなんかしたらさ…







(ダメだって、ヤバイって…)



熱い、全身がまるで沸騰するみたいに────





「セツ…!」


「わわっ…」



耐えきれず、叫んだ瞬間。

セツの足が俺の足に絡まって、互いの体がグラリと揺れる。






「チッ…」


セツを意識する余り、油断してた。

俺としたことが────…けど咄嗟にセツの体を抱き締め、反転させて。

俺はセツを庇うようにして、背中から地面へと倒れていった。

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