第1話 男は呪われている
ここ、一之宮高校にはちょっとした有名人がいる。
有名人と言っても、この高校を卒業した俳優と言う訳ではなく、芸能事務所に所属し、アイドル活動をしている訳でもない。
彼は、世間一般から見ればただの一般人だろう。
だが、この学校の中では違う。
彼の事を知らないと言うなら、そいつはまだこの学校に来てから日が浅いと分かってしまうほどだ。
テストでの成績は、毎回上位には必ず名前が入っており、運動面に関して言えば、体育教師も一目置くほどの実力を持っていて、体力測定ではほぼ全てが平均より数値が上である。
2年生で一之宮高校の生徒会長にまで上り詰め、学校始まって以来の天才などと周囲の生徒たちは思っている。
どんな相手にも気さくに話せる性格からか、非常に人望も厚く、その証拠に沢山の生徒から推薦され、生徒会長の座へと座ることが出来たのだろう。
正に、成績・品行とも特にすぐれている優等生と言えるだろう。
彼は彼女がいなかったのもあり、女生徒達からも人気で非常にモテた。
校舎裏、校舎の屋上、下校時間ギリギリの空の教室、色々な場所で告白を受けていた。
だが、彼はその全てを断っていた。
断る理由としては、学業に専念したいや、今忙しくてそんな暇はないなどと言った理由を口実としていた。
理由を聞けば、いい意味で真面目な奴、悪い意味でつまらない奴などの印象だろう。
だが、今断った理由は全て本当の理由ではなかった。
確かに多忙な時間の中相手にするほどの時間が無いと思っているが、それ以上の問題が彼にその選択をさせていた。
その謎の現象は、決まって自分の近くに女性が来た時に起こり、最近になって更に酷くなっていった。
どのようなことが実際に現象として起こっているかと言うと、体のある一部が何かに締め付けられる様な痛みに襲われるのである。
男の生徒には特にはないが、女生徒に近づかれたり、すれ違い時に肩がぶつかったりすると、ぶつかってもいないのに謎の痛みが襲ってくる。
自分で調べて見たりするも、原因は分からず、このままこの痛みが続くようなら、何かしらの病気だったりするかもしれないので、病院に行こうと思っているが、痛む場所が場所なだけ今でも病院に行くか迷っている。
だが彼は、何故かそんなことでは解決しないと思ってしまう。
この原因不明の痛みをどうにかしなければ、彼に彼女などは到底作れはしないだろう。
……………………
…………
……
「……ダメだ。全然分からん。」
学校から帰宅し、自室のパソコンで調べていた。
調べてみて分かったことは、この特定の条件で発生する痛みは、どの病気の症状にも類似せず、もはやこれは呪いの類ではないかと思ってしまう。
もしこのまま、痛みが治らずいたら、俺はもしかしたらこのまま誰にも付き合えず、誰とも結婚できず、このまま歳を重ね、一人寂しく死んでいくとでも言うのか。
それは駄目だ。
俺にはささやかな夢がる。
いい大学へ行き、一流企業へ就職し、心から好きな相手と共に過ごし、最後は家族に看取られ死んでいく、という夢がある。
そのため毎日必死に勉学に励み、学校ではまだ一日も遅刻や早退などで学校を休んでいない。
学校の教師たちからの印象も高評価で、このままいけば志望の大学への推薦書も書いて貰えると聞いた。
この原因が解決されなければ、俺の今までの努力も無駄に終わってしまうだろう。
……だが、今悩んだところで俺にはどうすることも出来ないし、明日は学校は休みだから、余り行きたくはないが病院にでもこの機会に行くとしよう。
「……飲み物でも買いにコンビニでも行くか。」
そう言うと自室を出て、玄関に向かい、途中で母親からついでに菓子類を買って来てくれと頼まれ、玄関を出てコンビニへ向かった。
買い物を終え、買い物袋を手に持った家への帰り道、男は奇妙な物を見つけた。
見つけた場所は、家から来た道の歩道の隅にポツンと置いてあった。
何かに引き寄せられるように物へ近づき、その物を拾い上げる。
その物とは、両手に収まるほどの小さな箱だった。
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