第5話 カメラマン ナリユキ
目覚めるといつも撮影に使っている部屋に居た。
カメラは卓上に置いてあり、撮影機材はバッグに入っている。
身体のどこも痛くないし外傷は無い。所持品や機材が盗られた形跡も無い。ベッド上で目が覚めたから、襲われて気絶していたわけではなさそう。
何故か、ここに居る理由を思い出せない——
ゴミ箱に空のペットボトルが三本捨てられている。僕は撮影前に必ず差し出す。誰かを撮影するためにここに来たことは状況からわかった。
カメラを確認しよう——僕は誰かを撮っている。
なんだこれ——僕の理想通りのライティング。
わかることは、僕の機材だけでは絶対にこの写真は撮れないということ。色々なメーカーの機材を色々な組み合わせで使ってきた。写真を見れば大体の構成を推測できる程度の知識と経験はある。
それでも、構成がさっぱりわからない。
途中までは僕の機材で撮っている。
変わっているのはここから——
写真には最大三人が写っている。空のペットボトルが三本あるから人数は問題ない。
スモークを使い、水撮影までしている。
アシスタントが数名要る。何人居たんだ? 何故ペットボトルが三本しか無い? ここで水を使っているのに何故か部屋はどこも濡れていない。
一番不思議なこと——僕は彼女たちを知らない。
今までに撮影した全ての人を覚えてる。僕は撮りたい人しか撮らない。だから、記憶に無いなんてあり得ない。
SNSで探せば何かわかるかも——
今日開催されたイベント『ワールドコスプレパーティ』で画像検索すると、すぐに見つかった。不思議なことに誰も彼女たちのIDを記載していない。
コメントによると彼女たちはSNSをしていないそう。だからIDの代わりに名前が記されている。
名前はリヤン、ナン、ナル。
これを機に、僕もSNSを始めようかな。
理由は覚えていないけれど辞めてしまったのだ。
アカウントを作成し、カメラに入っている写真を載せていく。写真は瞬く間に拡散され、あっという間にフォロワー数が増えていく。
昔繋がっていた有名なレイヤーが僕をフォローし拡散したことで、その速度は加速する。
僕に届くコメントの多くは
〝おかえり〟
SNSでの再会を歓迎された。
ただいま——
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